5-7 実際水戸光圀はかなり荒くれものだったり
『サードステージ:イバラギ・牛久大仏』
とにかくいよいよ三面だ。だけどヒロはそこまで来てボソッとつぶやいた。
「さあ、ここが鬼門だ。子供の頃の俺たちは三面のボスを倒す事が出来ずに毎回ゲームオーバーになったからな」
「ふむ、デスが今は違います。ワタシがいますから!」
『ナマダブ!』
ナビ子ちゃんはお坊さんを操り魔法で竜巻を起こして侍の敵を撃破していく。その甲高い声が実に頼もしかった。
このステージは侍や忍者といった比較的まともな敵ばかりでツッコむ箇所が少なくちょっと寂しい。僕はひときわ強そうな鬼面の武者を見つけ、ひたすら手裏剣を投げて遠隔攻撃をし画面の外に押し出した。
『ゴゴゴゴゴザゴゴゴザゴザル!』
連打連打、ひたすら連打。ハメ技は重戦車タイプの敵には効果抜群で鬼面の武者は何も出来ずにやられてしまう。
「ありゃ、中ボスなのに画面の外で倒しちまった。ベルトスクロールのあるあるだけど」
「四人でかかれば楽勝デス!」
そんなこんなで昔の僕たちの壁だった三面のボスが現れた。そいつは水戸黄門を凶悪にした感じのデザインで、一見するといい年をしてまだ不良をやっているチーマーのようにも見える。
『YO、YO、YO! トチギのあんちゃん、イバラキ特産の納豆でも食ってくか?』
『黙れ。大体お前のとこは納豆の消費量がそうでもないだろう。一位二位三位は全部東北でむしろトチギのほうがイバラギよりも上じゃないか』
『お前今何つった』
『納豆が……』
『違う。イバラ『ギ』と言ったな! イバラ『キ』だ! あと最初のステージ紹介でも間違えてたじゃねぇか! それは最大の侮辱だ殺してやるー!』
何だか理不尽な展開だけど、僕らは即座におじいさんを囲み集団でボコボコにし始めた。転倒してもひたすら足蹴りをして。
「何だかお年寄りをボコボコにするのって絵面的によくないね」
「それが戦いだ」
ヒロは割り切ってひたすらボタンをポチポチして攻撃をした。血も涙もないその攻撃により、かつては乗り越えられなかった三面のボスに僕らはいとも容易く勝利してしまったのだった。
『ふう、ふう、ふう……お前は今まで戦った中で、最強の敵だった』
『お前もな……ああ、どうしてだろう。負けたのにとても清々しい気分だ。超絶ハッスルしてきたよ』
「このおじいさんはマゾなのかな」
一方的にボコられたのになんて素敵な笑顔をしているんだ。ゲームでは実際の戦いとイベントが一致しない事はよくあるけどさ。
「ヒロは将来こうなるんだろうなあ」
「年をとってもマゾのまま、素敵じゃねぇか」
「素敵なんデスか?」
唯一ヒロはおじいさんに感情移入をし女性陣はほんのり引いている。いや、別に性癖は個人の自由だからいいけどね?
『なあ、ウツノミヤ。俺はやり直せるかな』
『ああ、いつだってやり直せる。俺はいつか、お前の国で作った納豆で餃子を作ってみたい』
『そうだな、その時は俺のネバネバ汁を存分に堪能させてやるZE!』
「え、下ネタ?」
「違う、友情だ」
僕の言葉をヒロはすぐに訂正する。何だかよくわからない友情(?)が芽生えたところで次はラストステージだ。