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4-27 祖父母の襲来

 俺は自転車を走らせ自宅に戻る。しかし家の扉を開け俺はある事に気が付いた。


「っ」


 玄関には見知らぬ靴が二足並んでいる。片方は黒光りする革靴でもう片方は有名ブランドの上品な代物だ。どちらも着飾る事を忘れた庶民的な生活をしている我が家とは縁遠い靴である。


「ヒロ!」

「ああ、母さん、ただいま」


 扉の音に気が付きすぐに駆け寄ってきた母さんはやはり心配そうな表情で俺の名前を呼んだ。心なしかいつも以上に疲れているように見える。


「またあなたは連絡もしないで……」

「ごめん、すぐに出かけるから」

「あ、ちょっと!」


 俺は母さんを無視して自室に不要な荷物を置き、手早く必要なものを詰め込む。もう少しマンガの主人公の家族みたいに無関心でいてくれればいいんだけど。これではいちいち心が痛んで仕方がない。


 それに急いで外に出ないと。さっきの靴はおそらく……。


「善弘!」

「うげ」


 けれど予想通り俺の天敵が現れ怒鳴ってくる。彼はかなり不愉快そうな目で俺を睨みつけ、そこに親愛の情は一切感じられなかった。


 彼の名は御門善治郎(ぜんじろう)。言うまでもなく俺の祖父である。祖父母と折り合いの悪い俺は正直彼の事を苦手としていた。


「ようやく帰ってきおったか」


 遅れてばあちゃんもぬっと奥から不機嫌そうな顔を出す。天敵が二人も現れ俺はすぐにでもここから立ち去りたかった。


「な、なんでじいちゃんがここに? それにばあちゃんも」

「神在の暴動で家が放火されて全焼しての。しばらくこの家に住む事になったんじゃ」

「ああ、そう」


 それならば仕方がない。あの騒乱では多くの人が職や住む家を失い路頭に迷ったのだからそれくらいは親族としてしなければならないだろう。


 しかし俺が不在の間母さんがこの二人を相手にしていた事を考えるとその心労は想像に難くない。疲れたような表情の原因の八割くらいはこのジジババのせいだろう。残りの二割は俺だろうけどさ……。


「それよりも聞いたぞ、お前最近ろくに家に帰っとらんそうじゃな。学校にも行かず何しとるんじゃ」

「ま、まあ、うん」


 ばあちゃんも話に割り込み喧嘩腰でそう詰問する。だが常識で考えれば高校生なのに家に帰っていない俺のほうが悪いのだし、事情が事情だから上手い具合に言い返せないのが辛いところではある。


「こっちにも事情があるんだよ。そ、それじゃあな、じいちゃん、ばあちゃん」

「おいコラ待たんか!」


 俺はギスギスした空気に耐え切れず、じいちゃんの罵声を無視してその場から逃走する。


 厄介事を押し付けてしまった母さんには悪いが、みのりを助けるために俺はこんな奴らに構っている暇はないのだ。

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