4-26 現実世界への帰還・図書館
――御門善弘の視点から――
「ふぁあ」
目を覚ました俺は自分が図書館の床で寝そべっている事に気が付いた。バスで寝ていたのに何故ここに、と一瞬思ったがこちらの世界に帰還したのだとすぐに理解する。
「むにゃむにゃ……そこだあ、ナガタロックだ~」
「どんな夢を見てるんですか」
最初に向こうの世界に迷い込んだ時同様、うみちゃんもそばで寝転がっていて幸せそうによだれを垂らしブルージャスティスを応援しながら熟睡している。起こすのは可哀想だが、職員の人に見つかっても面倒だし身体を揺さぶる事にした。
「いやーん、ロメロ・スペシャルをしないで~」
「獣神サ○ダーライガーのアレですね」
先生は夢の中でとてもお楽しみなようだ。どんな技なのかは説明するのは面倒なのでネットで調べてくれ。時々バラエティーでも披露してるからたくさんあるだろう。だけどあの技ってかけられた側はちょっと楽しそうだよな。
「内○、こんにゃろうめー、げしげし」
「内○哲也にストンピングをしているんですか。そんな事もありましたねぇ」
レッドシューズな審判になり切ったうみちゃんは足をバタバタして俺に攻撃を加える。そこまで痛くはなくむしろ気持ちが良かった。
……ところで俺の周りにはやたらとプロレスが好きな奴が多い気がするが気のせいだろうか。俺も含めて名前もなんとなくプロレスラーっぽい奴らばかりだし。この世界を創った神様がプロレス好きだったのかねぇ。
「むにゃ? あれ、キャ○テン・ニュージャパンはどこ行ったの?」
「とっくの昔に引退してますよ。今はウィキによれば地元に帰って後進の育成をしているとか何とかだそうです。というかそんな豪華な顔ぶれの中に何であんなレスラー崩れが混ざっているんですか。まああいつが空気を読めないのはいつもの事ですけど」
ともかく俺はどうにかうみちゃんを起こす。彼女は周囲の様子を眺めて不思議そうに首をかしげてしまった。
「あれ、ここはどこですか? さっきまで後○園ホールの最前列の席にいたはずなのに。隣にいたいつも何か食べているおじさんはー?」
「せめてバスで寝ていたって言ってください。俺達はこっちの世界に戻ってきたみたいです。多分つるぎと光姫も戻って来ているので一旦家に帰ったら合流しましょう」
「ふぁ~い」
うみちゃんは寝ぼけながら返事をする。ちゃんと家に帰られるか不安ではあったが俺は面倒事に巻き込まれる前にさっさと図書館から出る事にしたのだった。
俺はスマホを操作し早速つるぎに連絡する。しばらくコール音が鳴ったあと彼女は応答した。
「起きたか」
『ああ、こっちも戻ってさっき起きたばかりだ。光姫もな。んで、うみちゃんは?』
「ああ、もちろん無事だ」
『そっか、よかったよかった。大丈夫だとは思っていたけど』
つるぎは先生の無事を確認して安心したらしい。善は急げ、俺は散乱した荷物を片付けながら早速ある提案をした。
「身支度を整えたらすぐに作戦会議をしよう。今回は大収穫だったからな」
『ああ、場所はあたしの家でいいか?』
「わかった。ほら、うみちゃんしっかりして」
「ふにゃー」
うみちゃんは二度寝をしようとしたので俺は強引に彼女を抱えて起こす。何だか子供の面倒を見ているみたいだなあ、と思いながらも俺は心を躍らせ図書館を出たのだった。
ナビ子に古文書を解読してもらったおかげでみのりをこの世界に連れ戻すという計画は大きく前進した。やる事はたくさんあるのだから。