4-22 縁結びの白兎
しばらくしてからヒロとうみちゃんがバスに戻って適当にのんびりしていた。けれどつるぎちゃんがバスに戻った時あれ、と彼女は怪訝そうな顔になってしまった。
「ありゃ、光姫は? 皆と一緒じゃなかったんだ」
「え、はい、まだ戻って来ていませんが」
ナビ子ちゃんは戸惑いつつそう答える。ここは終末の世界、不審者はいないけれど危険な野生動物や得体のしれない化け物はそこかしこにいる。それらと対峙した時きっと光姫ちゃんは無力だろう。
ヒロは頭をボリボリと掻いて、ため息をつきこう言った。
「しゃあねえなあ。手分けして探すか」
「ええ、心配ですし」
「そうだな」
「うん」
「はいデス」
僕たちもその意見に同意して光姫ちゃんの捜索が始まった。多分大丈夫だろうけど、心配だし早く見つけよう。
そんなわけで僕はヒロとペアを組み、一緒に周囲の探索を開始する。
「光姫の野郎、どこで油を売っているんだか」
「うん、危険な目に遭ってないといいけど。猛獣に襲われるとか」
「そうだなー」
行方不明になってしまった光姫ちゃんを探してさあ大冒険、と行きたかったけど、残念ながら彼女は古民家エリアであっさり見つかってしまった。
「もふもふー、おーよちよち!」
デレデレになった彼女は白いウサギを全力でもみくちゃにして過剰なまでに可愛がっていた。ウサギもウサギで嫌がる事なく、気持ちよさそうに全身でその愛を受け止めているらしい。
「こいつはなかなかの猛獣だなあ。可愛すぎて逃げられない」
「あはは、それはどっちの事なのかな?」
「ナ!?」
光姫ちゃんは温かい目で眺めていた僕たちに気が付き慌ててウサギを離して立ち上がる。あまり人に見られたくない光景を見られて、彼女はひどく赤面していた。
「おい、いつから見ていタ」
「ついさっき」
「そ、そうか、ならまだいい。今見た事は忘れるんダ。話したら命はないと思え」
「へいへい」
光姫ちゃんは天敵のヒロには特に念押しをする。別にもふもふするくらいいいと思うけどなあ。
「でも珍しいね、野生の白いウサギだなんて」
「ん? ウサギなんてそこら辺にいるダロ」
「白いウサギはペット用に品種改良された奴で野生ではあんまりいないんだ。冬の時期には白く生え変わるらしいけど、この時期で白って事は元々白いタイプなんだね」
ウサギは見事に白い毛皮で目も赤いアルビノ種だ。昔の人はこういうのを神様の使いとしてありがたがったらしいけど。
「ね、僕ももふっていい?」
「まあいいケド」
僕もウサギに近付き優しく抱き寄せると、ウサギはとても人懐っこく簡単になでなでする事が出来た。
でも本当にもふもふしてるよ。ああ、いつまでも触っていたい、癒されるなあ。
「みのり、すげぇだらしない顔してるぞ。けど俺もちょっともふらせてくれ」
そんな僕らを見てうずうずしたヒロもにじり寄ってくる。だけど彼が近付いた途端ウサギはすぐに僕の腕から飛び出て逃げ出してしまった。
「あ、逃げちゃった。残念」
「ちぇー」
「ヒロ、てめぇが嫌らしい目で見るから危険を察知したんダナ。そんな性欲を滾らせた顔を見れば動物でも逃げだすサ」
「はは、さっきのお前よりはマシだ」
「あん? 殺すゾ」
遊び相手のいなくなったヒロは早速光姫ちゃんとじゃれあった。なんだかんだで二人は仲がいいのだろう。
「うーん、もっとウサギさんと遊びたかったんだけどなあ。けど仕方ないか。光姫ちゃんを見つけるっていう目的は達成出来たしとっととバスに戻ろうか」
「そうだな」
「ん」
そして僕らはその場から移動しバスに戻る。ともあれ光姫ちゃんが危険な目に遭っていなくてよかったよ。