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異世界転移、人材ドラフト会議の内情

「しかし……また地球から呼び出すのか?」


 真っ暗な部屋でローブを着た男の声が響く、その声音はどこか非難をしているようだ。


「確かに私たちが放棄した世界ですが別世界への順応力には目を見張るものがあります、異端者への攻撃には最適かと」


 同じくローブを着た女性の声が響く、諦めにも近い声だった。


 円卓を囲む尾男女の集団は議論を交わしている。

 自分の管理する世界にバグが発生した場合、それを修正するために別の世界から所謂「勇者」を送り込むためだ。


 この円卓には不文律として「存在を超えた者」が世界に直接手を出してはならない、という決まりがある。


「またニホンからか? あいつらの適応力どうなってるんだ……」


 別の男が呆れたようにこぼす。


「適当に力を与えれば勝手に害をなす種を倒してしまうのでベストな選択肢だと思われます」


 先ほどの女性がそう言うと議論は冷ややかに場を閉じた。


「ではニホンより一人呼び出す、職務を投げ出した奴の管轄する世界から呼び出すのは我々の沽券に関わるので他言無用だ、解散」


 議長らしき男がそう言うと全員の姿が薄れて消えていった。


 ――その後の神世界


「ふぁーあ……なんで『神』のお仕事を投げ捨てた奴の置き土産に助けられてるんでしょうねえ……」


 金髪の女神はうんざり気味にそう言う。


「しーっ! 声が大きい! まあなんだ、私たちが強力に管轄していると信仰心が転移を嫌がるからな、放棄世界の信仰心の薄さは正直ありがたいよ、送り込まれる世界なんてロクな状態じゃ無いからな……ちょっと能力に下駄を履かせるだけで喜々として言ってくれる人材はなかなかいないからな」


 神は基本的に世界の保守管理を請け負う、大抵の奴は真面目にやってるのでそれは良い世界であることが多い。

 普通なら「魔族の攻撃で滅びかけ」のような世界にわざわざ転移してくれというのは非常に面倒な交渉になる。


 下手に自分たちの姿を見せれば他の神に鞍替えしてそっちで頑張ってくれる便利な人材はなかなかいない。


 そんな中、『地球』は担当の管理者かみが放棄した世界だ。

 放棄した本人曰く『あいつら信仰心もクソも無いのにわらわら増えて管理ばっか面倒くさい』らしい。


 神が見放した世界が神々に便利な人材をストックしているというのはなんとも皮肉な話だ。


 便利なことに「ニホン」は神の祝福でちょっと力をわけると後は自分で魔王その他の厄介者の排除に行ってくれるのでありがたい。


 どうやら「ニホン」には前任者が神託を与えて「げえむ」とやらを作らせたらしい。

 それが神々のデファクトスタンダードな平均的世界を模しているので非常に話が早い。


「げえむみたいな世界に行けるよ」などという怪しさ最高の勧誘でもホイホイ乗って世界の正常化に協力する。


 そんなわけで自分の管理世界に異常事態が起きた場合適当に一人連れて行って対処させている。


 さっきの会議も表向き「極秘」となっているが神々の間では暗黙の常識として秘匿も形骸化している。


 だったら神が直接関与すればいいではないか、現地人に力をわければいいではないか?

 お説ごもっとも、一つの世界に数億から数十億が平均で居る世界に一人超越的な力を与えたらどうなるか?

 以前ニホンに頼りすぎではないかということで現地人に力を与えたことがある、実験的な者だったが力を与えられた者は「自分は神の代行者だ」と名乗りを上げ暴虐の限りを尽くした。


 神が人間を大事にしていないとはいえ自分の管轄を荒れさせるのは好き好んでやることではない。

 そして誰が気づいたのかは全く不明だが地球では薄れつつある信仰心が世界を広げるのに一役買っている。

 なんだかんだで第一任者というフロンティア精神をそのせいで強くもっているらしく別の世界でも文明レベルの説明をしなくてもはいはいと頷いてくれるので神々もすっかり頼りきりだ。


 そうして今日もニホンから異世界へ送る人材を決めるくじ引きが始まっている。

 私は異世界に安易に行ってくれる当人に少しの呆れとそこそこの同情を覚えながら自分の担当世界の監視業務に戻るのだった。

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