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なろう転生  作者: ネオウニ丼
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10人目

「あー、つまんな」


俺以外誰もいない自室で、何気なく呟く。原因はスマホに映るネット小説にある。単純に内容が面白くなく、思わずつぶやいてしまったのだ。


俺の名前は赤谷タクマ。20歳。どこにでもいるテンプレ大学2年生。付け加えて自己紹介するとしたら、ネット小説愛好家だ。特にハマってるのは小説家になろうというサイトに投稿されている小説、いわゆる『なろう小説』を読むのが最近の俺の流行である。今日も今日とて、大学から帰ってきた俺は暇つぶしにベッドで横になりながらなろう小説を読み漁っていた。


「どれもこれも、似たようなやつばかりで面白くねぇなぁ」


独り言をつぶやきながら、小説家になろうのランキングにあがっている小説を流し見していくが、どれも以前見たことあるような内容で面白みにかける。ランキングの小説に飽きたら今度は検索してマイナー小説を探す。その中で本当に、たまに面白いのがあるときがあるが、たいていはエタッてる。つまり、打ち切りになってしまっている。


小説家になろうに限らず、俺はたくさんの小説を読んできた。しかし、自分を最大限に楽しませてくれる小説に未だ出会えていない。正直、不満足で、退屈であった。


今日も面白い小説は見つからないか、とがっかりしながらスマホの画面をスライドしていると、ある小説が目についた。


ゴッドオリジン。


長ったらしいタイトルではない。普通のタイトル。あらすじには『これは、神を決めるための戦い』という一文のみ。ジャンルはハイファンタジー。最終更新日は約5年前。pt0。感想0。レビュー0。投稿話数1話。どうみてもてきとうに投稿してみて、エタってるパターンの埋もれた底辺小説である。


こんな小説誰も読まないだろ。と、俺はそう思いながらもなんとなく、その小説ゴッドオリジンのアクセス解析を見てみる。総PV数10。つまり、自分も合わせて10人しか読んでない。the底辺小説である。


ここまでくると逆に内容が気になるな。そう思った俺はゴッドオリジンの1話『10人目』というタイトルにタッチした。すると、ゴッドオリジンの1話の文章がスマホの画面にすぐに映し出された。


これは選ばれし10人が殺し合い、1人の神を決めるための物語である。

舞台は異世界『ユリアス』。魔法ありしファンタジーの世界。選ばれし10人には特殊な能力、4人の守護者、聖武器が与えられる。これらを駆使し、戦い、最後に生き残った一人が神に選ばれるのである。


「ふーん、ちょっと面白そうじゃん」


ゴッドオリジン冒頭の文章を読んでほんの少しだけこの小説に興味を持つ。冒頭以降の文章にはその世界の国や種族、地方など世界観の説明が長々と書かれている。それらをなんとなく流し読みしながら下へスライドしていく。そして、とうとう小説の終わりが見えてきた。


さて、最後に選ばれし10人を紹介する。


青山レイ

緑ヶ丘イノ

黃久一モリスケ

白魔シン

紫川エミ

黒門寺オウタロウ

エリシア・オレンジルト

灰柳マサタカ

茶村マイカ


そして、赤谷タクマ。


「.....は?」


俺は最後の人物名を見て思わず目を疑った。赤谷タクマ。俺の名前である。なんだこれ。小説に登場する人物が自分と同姓同名とかどんな偶然、奇跡だよと、俺は苦笑しなから最後の1文を見た。


10人目がとうとう現れた。これより、神を決める戦いを始める。


最後の1文を読み終えた瞬間。突然、俺は胸が苦しくなった。


「な、んだ、これ.....!?」


突然なことに俺はパニックになる。呼吸ができない。胸が痛い。視界が霞む。わけがわからない。苦しい苦しい苦しい。誰か助けて.....!!


もがき苦しみながら俺はスマホで助けを呼ぼうとするが、手がもう動かない。絶望しながら俺はスマホの画面を見た。そこには、先程まで書かれていなかった1文が追加されていた。


転生するときが来た。次はあちらで会おう。赤谷タクマ。


目の前が暗くなる。バカバカしくて信じられないことに、俺はなろう小説を読んで死んでしまったのだった。


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