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戦闘嫌いの女魔王。私が魔王とか無理ゲーなんですけど……  作者: ぽん太
第一章~戦闘嫌いの魔王誕生編~
9/16

自己紹介は簡潔に

「皆さん、おはようございます」


 セシリー先生が教室に入る。私はとりあえず紹介されるまでは教室の外で待機しておこうかなぁ。特別クラスだって言う話だから、職員室とか他の教室と隔離されてるのかと思ってたけど、そんなこともなかったなぁ。案外そこまで変な感じというか、厄介者扱いされてるわけでもないのかな?


 開いている扉からセシリー先生の声が聞こえてくる。


「今日は皆さんに新しいクラスメイトを紹介したいと思います。はい、ラリー君。……うん、それはセクハラに当たるからやめようね。フィーリアさんは窓の外ばっか見てないで、もう少し興味持ってくださいね。はぁぁ、もう皆さん! せっかく新しいお友達ができるんですから仲良くしましょうよ! …… …… …… いい加減にしないと…… うん、先生聞き分け良い子は好きですよ」


 え……いったい何をしたの? なんか騒いだり、興味なかったりしてた子たちがシーンって黙った感じしたんだけど!? てか、一瞬ものすごい寒気がしたんだけど……


「あれ? イヴさん?」

「へ? ……ど、どうしました?」

「もう! 先生、さっきから呼んでましたよ? 呼んでも返事しないからどうしたのかと心配しましたよ~」

「ご、ごめんなさい。ちょっと考え事をしてて……」


 考え事をしてたら、いつの間にか呼ばれてたみたいだ。セシリー先生の顔が目の前にあって驚いた。


「それならいいんですが……ボブさんにも頼まれましたし、何よりあたしはイヴさんの先生ですからね。なにかあったらすぐに頼ってくださいね」


 セシリー先生はそう言うと、お茶目にウインクをした。なんか、さっきまでとキャラが違う気がするんだけど……


 私の困惑顔に気が付いたのか、先生は笑いながら話してくれる。


「あはは、ごめんね。職員室では出来る限り目立たないようにしてるの。やっぱここに居る先生や生徒の一部?というか大半は人間や他種族に対して悪印象しかないのよ。魔王様を含む数名の人たちはそんなこともないんだけどね。だから、このクラスでだけはちゃんと自分で居ようと思ってね。ここに居る子たちも、そういう子たちばっかだからイヴさんも普通にしてくれて構わないからね。さて、それじゃあ皆に会いましょうか」


 セシリー先生は未だに困惑状態の私の手を取り教室に入っていく。引っ張られながら教室に入ると、なぜか額から汗をだらだらとかきながらぷるぷるとしているクラスメイトになる人たちが居た。


「はい、皆さん静かに待てていたみたいで先生嬉しいです! じゃあ、イヴさん自己紹介をお願いします」

「は、はい」


 うわぁ、このままスタートするんだ。とりあえず先生、を怒らせるのやめとこ。


「えっと、イヴ、です。よろしくお願いします」

「え!? それだけですか?」

「ダメですか?」

「もう少し何か伝えることあるでしょ!? おじい様が魔王様だとか、次期魔王に選ばれましたとか、人見知りが激しいですとか!」

「じゃあ、それで」


 と言ったあたりで、ふと周りを見るとポカンとしているクラスメイトたち。てか、人少なっ! え……一二三四……十人しか居ないじゃん。もう少し多いと思ってたのに、予想外に少なかった。


「もう、わかりました。イヴさんはあそこの空いてる席に座ってください」


 セシリー先生は窓際の奥の席を指さして言った。ラッキー! 一番後ろだしこれなら寝てもバレないんじゃ……前の席は薄い青色の髪が特徴の眼鏡をかけた女の子だ。たぶんだけど、あの子人魚族かな? エルフの耳とは違って少しだけ小さい。だけど私たちよりは長い。


 私は先生に言われた通り自分の席に移動して座る。その間もクラスメイトからの視線をものすごく感じてたけど、なんか一人だけから他の人とは違う質の視線を感じた。


「それじゃあ、早速授業を始めますね」


 セシリー先生がそう言うと、一番前の席に座っている背の低い女生徒が号令をかける。あれはドワーフかな?


「起立。礼。着席」


 懐かしいなぁ。五年生ぶりの授業だ。よし、寝よう。そう思い机に教科書を立て、寝ようと顔を下げた瞬間、チョークが顔の横を飛んできた!? 危ない!?


 顔を勢いよくあげ前を見ると、チョークをくるくると指の上で回しながらニコッと笑っているセシリー先生の姿が。


「ふふ、まさか。初日の、しかも最初の授業で寝ようとするなんて思わなかったわ~。……次、寝ようとしたら……分かってるよね?」


 そう言ってチョークを人差し指で弾く。さっきよりスピードが上がったチョークがいつの間にか後ろの壁に当たって砕けていた。


「ご、ごめんなさい……」

「よろしい。では授業を始めます」


 うん、ほんとセシリー先生を怒らせるのやめよう。あれが頭に当たったら消し飛んじゃうよ。とりあえず、真面目に授業受けよ。


 ****


 昼休み。


 私は机に突っ伏していた。あれから四時限までの授業を受けた。まさかセシリー先生がずっと受け持つとは思わなかったし……おかげで寝れずじまい。しかも、授業が終わるたびにクラスメイトが話しかけてくるから、コミュ障の私には辛すぎる。そんなにおじい様のこととか幹部の人たちの事聞きたかったのかなぁ?


「おーい、イーヴさん! なにをそんな疲れた顔してるん? そんな顔してると可愛い顔が台無しだぜ~」

「ラリー……やめなって。あんたなんかに話しかけられて、イヴさんが可哀想。あんたは、そこのごみ箱とでもしゃべってなさいよ。ごめんね、イヴさん。このバカは放っておいてね」

「だ、大丈夫。気にしてないから」


 休み時間のたびに絡んでくるのが、このラリー・ダウエル。人間の男の子で、言葉からも出てるようにチャラい。茶髪のパーマで耳にピアスを付けている。制服の改造までしている。それだけ聞くとイケメンの部類だが言動が屑すぎる。セクハラ発言連発で女子から何度白い眼を向けられているか。


 そのラリーを制御しているのがマリユスという魔人の女の子。赤い髪を後ろで縛りポニーテールのようにしている。けっこう毒舌というか、言いたいことを言えるタイプみたい。魔人の中でも数少ない淫魔族サキュバスらしく、無駄にエロイ。


 そして、この騒ぎにも動じないのが私の前の席のルリーカ。予想通り人魚族マーメイドの子でおとなしい性格。あまり人と話すことが得意じゃないみたいで、黙々と本を読んでいる。


 他のクラスメイトとも自己紹介をして、少し話したりはした。ただ、私の席と対角線上に居る金髪の女の子とは話せていない。マリユスに聞いたところ、ターニャっていう魔人で貴族の娘らしい。すごい視線を向けられてるんだけど話しかけてくる様子はない。


 そんな風にクラスメイト達とぎこちなく話していると、連絡用の通信機が鳴った。必要になるとおじい様がお母さんに渡していたらしく今朝、渡された。


 通信機を出ると、聞き覚えのある女の人の声が聞こえてきた。


「もしもし。イヴ様ですか? 突然すみません。セリカです。急で申し訳ないんですけど、今からお城のほうに来れますか? ラシウス様がお呼びです」

「わ、分かりました。今、学校なので先生に伝えてから向かいます」

「そうですか。分かりました。本当に急でごめんなさい。それではまたあとで」


 そう言うとセリカさんは通信を切った。


 急な連絡で驚いたけど、なんとなく予想していたこともあり、それほど面倒だという気持ちもわかなかった。やばいなぁ、引きこもり至上主義で居たいのに身体がもう、この事態に慣れ始めてる。はぁぁ、だから嫌なんだよなぁ。すぐ出来るようになっちゃうから……


 憂鬱になる気持ちを隠しながら、驚いているクラスメイトに事情を説明して教室を出る。教室を出ると、セシリー先生が職員室からこちらに向かって歩いてるのが見えたので、おじい様からの連絡が来たことを伝える。先生に二つ返事で許してもらい、また明日とだけ伝え廊下を歩く。玄関に向かう途中でボブにも連絡しておいたので、少し校門前で待っていたら馬車で迎えに来てくれた。


「イヴお嬢様、お疲れさまでした。どうでしたか? 久しぶりの学校は」


 馬車の扉を開け、鞄を受け取りながらボブが聞いてくる。私は馬車に乗り込みながら


「うん。まあまかな。すごい嫌って感じにはならなかったけど疲れた」

「そうですか。それなら良かったです。イヴお嬢様は何も考えず素直な気持ちで居てくれれば、きっと理解してくれる人が増えますから。焦らず無理せず楽しく通ってくれたら嬉しいです」


 ボブはそれだけ言うと、扉を閉めて馬車を走らせる。


 馬車で走ること数分。昨日も来た、魔王城へと着いた。馬車から降りると、門の所で待ってくれていたセリカさんがこちらに気づき駆け寄ってきた。


「イヴ様! 急でごめんなさい! どうしても呼べとラシウス様が言ってきかなくて……」

「いえ、大丈夫です。なんとなく予想は出来ていたので」

「それなら良かったです。そてじゃ、早速行きましょう!」

「はい。ボブも来て」


 私がそう言うとボブは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。


「は? いやいや、イヴお嬢様? なにを言ってるんですか? 自分なんかが、このお城に入るなんて……」

「そういうの、どうでもいいから。いいから来て。専属なんだから。セリカさん、いいですよね?」

「へ? え、えぇ大丈夫ですよ。えっと……ボブさん? セリカと言います。ラシウス様の秘書をしてる者です。どうぞよろしくお願いしますね」


 セリカさんの挨拶にボブは固まってしまった。おじい様の秘書って聞いて驚いてるみたい。この程度で驚いてたら、私の専属なんてできないんだけどなぁ。


 そう思いつつ、私がボブの足を思い切り踏む。すると、痛みで緊張から解けたようなので、軽く挨拶させると、私たちは城に入ることにした。

読んでいただきありがとうございます。

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