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戦闘嫌いの女魔王。私が魔王とか無理ゲーなんですけど……  作者: ぽん太
第一章~戦闘嫌いの魔王誕生編~
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質問いいですか

 空気が重い。先ほどまで私に向いていた怒りの感情が嘘のように消えている。みんな、困惑の表情を浮かべており、大の大人が大勢ざわざわとしている。


「あの……ラシウス様? これはいったいどういう事なのでしょうか? 大事な話があるからと言われ集めさせられたのですが…… それがイヴ様を次期魔王にするとは、なにをお考えなんですか?」


 貴族の一人がおじい様に問いかける。周りからも「そうだ、そうだ!」と声が上がる。


「お考えも何も……その言葉通りの意味なんだがな。俺の後継にイヴを指名した。それだけだ。そろそろ次期魔王を選ばなければいけない時期だったからな」

「いやいや、ラシウス様? 後継者であればフェルド様が居るではありませんか! あの人ほど優秀な人はいないと思いますが?」

「それに……恐れながらイヴ様は学校にも行っていないご様子。ここ数年は家に引きこもっているとも聞きます。人とのコミュニケーションも苦手で、あまり良い噂も聞かないのですが……ラシウス様の決定やお孫様をバカにしているつもりは全くないのですが、そう思っている人間が少なからず居る中では難しいのでは?」

「そうですなぁ。魔王とは畏怖と尊敬の象徴でなければなりませんからな! それに戦闘ができない魔王など……」


 おうおう、この貴族たちは随分と言いたい放題だな~、おい。絶対、兄さん支持派だよ。まぁ、私自身もそう思うから否定できないけどさ~! 学校に行ってもいないコミュ障で戦闘嫌いに魔王なんて務まるはずないんだから。


 おじい様は何を考えて私に命令なんてしてるの? 全然意味が分からないんだけど……


「お前たち意見も分からんではない。魔王は畏怖と恐怖の存在。人間や他種族を圧倒できる存在でなければいけない。そして、お主たち貴族としては、フェルドを次期魔王に押したいのも知っておる。フェルド自身、皆に認められようと努力してきたのも知っている。だが、それでも儂はこの意見を変えるつもりはない」


 おじい様は、貴族の人たちにそう言うと幹部の人たちのほうを向いて問う。


「お前たちは、儂の意見に対して何かあるか? もし反対意見があるなら言ってくれて構わんぞ」


 その問いに幹部の人たちは少し顔を見合わせると、一拍開け、返事をした。どうやら、四人いるうちの一人が代表して聞くみたいだ。よく見るとかなりの美人さんだ。落ち着いた雰囲気もあるし、この人が参謀的な人なのかな?


「それでは、一つだけ」

「ラージュか。一つでいいのか? 聞きたいことがあるなら答えてやるぞ?」

「いえ、ラシウス様が決めたことを覆すことはないので。決めたことに対してではなく、イヴ様が魔王をするにあたってのことを少しお伺いしたいですね。イヴ様が魔王を就任するにあたり、幹部の見直しや人材の確保、イヴ様の学業や戦闘面についてなどを教えていただきたく思います」


 いやいやいやいや、何をやる体で話を進めてるのさ! あんた幹部なんだからもう少し頑張って否定しなさいよ! まだ、あの貴族連中のほうが言いたい放題だったわよ! ガラスのハートには少し辛かったわ……ぐすんっ。


 そんなことより、他の幹部連中がラージュって人が言ったこと以上を聞こうとしてないんだけど……そういうスタンスなの? 魔王様のいう事はぜったーいみたいな。いや違うか。さっきのラージュって人が決めたことは覆さないって言ってたし、長年の勘で諦めたんだろう。


「さすがは、ラージュだな。魔王として命じた以上、イヴを魔王にするという事は決定事項だ。しかし、貴族の言うことや、幹部であるお前たちの心配はもっともだからのう。なので、イヴの魔王就任まで半年を設ける。その期間中は、イヴには学校にも行ってもらうし城にも毎日通ってもらう。いくら急に魔王交代といってもある程度の知識を持ってもらわなけらばならないからな」

「なるほど……たしかに魔王となるものが無知では困りますからね。それで、学校に行かせることとここに通わせることは分かりました。が、しかし人材の確保や我々幹部の見直し、戦闘嫌いについてはどうなさるおつもりで?」


 たしかにそうだ。学校には行きたくないし、ここにだって通いたくなんかない。何を勝手なことを言ってるんだと抗議したい。魔王の命令だろうと無視をしたい!と強く強く思ってはいる。無理なのは分かってますけどね!へっ。しかし、それをしなくちゃならなく、どうしても行ったとしてもコミュ障な私が人材なんか集められるはずがない!友達一人も居ないのに……ぐすんっ……あぁ、目から汗が。


「ふむ、そこなんだがな。人材の確保は一朝一夕で出来るものではないだろうな。この件に関しては、イヴが魔王になってからイヴ自身に頑張ってもらうとしか言いようがない。幹部の件についても同様だな。初めの頃は、お前たちについてもらおうと思っている。そのあとは、イヴが新たに連れてくるのか、それともお前たちを落として儂から奪うかだな」

「そう、ですか。それでは最後の戦闘については?」

「ふむ……戦闘についてなのだがな、儂の個人的な意見としてはこのままで構わんと思っている」


 おじい様の意見に反対だった人たちは、そのその言葉でさらにヒートアップしていった。口々に「そんな魔王はごめんだ!」や「魔王が戦闘嫌いなどおかしい」、「そもそも魔族としてすら危うい感情ではないのか!?」などと散々な言われようだ。私がね。


「では聞くが、この数百年、人間や他種族と多く争ってきて完勝している我が国であるが発展はしているのか? 戦争に明け暮れて技術や街の発展、国を栄えさせるといったことではその種族たちに負けておるのだ。今の世で必要なのは、きっとイヴのような固定概念にとらわれず柔軟な発想を出来る魔王だと儂は思ったのだ」

「ラシウス様……」


 おじい様の発言に皆が考えるように俯く。中には、納得できない人も居るみたいだが言ってること自体は分かるらしく苦虫をかみつぶした表情をしている。


「彼らは日々進化し続けておる。大昔、異世界召喚という魔法を確立してからというもの彼らの進化は良そうも出来ない領域になっている。それに比べて儂ら魔族は何も変わろうとしなかった。儂もそういったことに疎かったこともあって中々出来ずにいた。しかし、我が孫であるイヴは魔族としての常識に囚われず、種族ではなく個を個として見ている。これからの世は、そういった者たちで作っていくほうがいいと思うのだよ」


 そう言うと、続けて「もしかしたら人間や、他の種族の者たちと友好を結ぶ日が来るやもしれんからのう」と言って笑った。


 この爺さん、いったい何年先のことまで見てるんだ? いくらなんでも魔族と他の種族が友好関係なんて……この前だって戦争してきたばっかなのに……


 それに私のこと絶対に誤解してるよぉぉぉ。私がそんなこと考えてるわけないじゃん! ただ、他種族だからって言うのが嫌いなだけだし、柔軟なわけじゃない。むしろ、こういう捻くれた考え方しかできないし……


「ラシウス様のお考えや、おっしゃりたいことは分かりました。しかし、万が一他種族が攻めてこないとは限りません。それに武力で勝てないとなると魔王の座を奪われることになるやもしれませんよ?」


 ラージュさんがそう言って私に殺気を向ける。さっきまで受けてたのが何なんだってくらいの重さだ。その殺気に、軽く後ずさりしてしまった。


 やばいって、ほんとに! 何が知的そうな美人お姉さまだよ! 誰だよ、そんな適当なこと言ったの!! って私でした。てへっ。


「へぇ、かなり本気で当てたのに案外余裕そうねぇ~。って、そうでもないのか。足をぷるぷるさせちゃって可愛いわねぇ~」

「は、はは……」


 いやいや、笑い事じゃないから! 余裕でもないし! 怖いわっ! 超ぉぉぉぉぉ怖い!!!! 乙女なのにしちゃいけない顔しちゃってるよ! 絶対に!


「ラージュ……あまりイジメてやるな。申し訳ありません、我が主。そして、イヴお嬢様」


 そう言って幹部の一人であろう、青い瞳をした長身の男性が頭を下げてきた。


「ハイドか。よいよい、儂の孫はそこまで弱くはないからな。ラージュもよいな?」

「はい。イヴ様も申し訳ありませんね~」

「い、いえ……」

「これ以上質問はないな……それでは、かい—————————」

「ま、待っていただけないでしょうか!」


 解散と言いかけた、その時、誰かが声を上げた。皆がその声を上げた主に視線を向ける。視線の先……そこに居たのは、数多の視線を浴びて顔を強張らせている兄さんだった。

読んでいただきありがとうございます。

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