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30歳から始める大阪府警  作者: 畑山 寮
2/2

②過去。

いまから1年前、俺はビルメンテナンスの会社にいた。

大学を中退し、知り合いに誘われこの会社に入った。もう6年くらいになる。

のらりくらり続けているうちに、友人達は結婚していった。


気づけば29歳、年収280万円、独身。


このまま、老いていくのかと思うとゾッとした。


転職しようにも30歳手前で、ビルメンテナンスの仕事しかやったことがなく、他の業種にチャレンジする勇気はなかった。


なら、いっそこのまま...


などと考えているうち、もう全てがどうでも良くなってくる。


そんな話をスーパー銭湯の露天風呂で中学時代の友人の(たいら)に話していると、


「じゃあ、公務員試験でも受ければー?」


「いやいや、公務員なんて無理やわ、そんなん」

星を眺めながらぼんやりと答える。


「そう?朝宮は勉強もできるし、運動神経もいいしいけると思うけどなぁ。」


「俺いくつやと思ってんのよ、もう今年で30よ?」

鼻で笑う俺。


「最初から無理やって思い込んでたらなんも始まらんくない?」

「うちの試験、今度あるからダメ元で受けてみろよ」


「うちの試験って、大阪府警のか?!」

頭に乗っけていた、タオルが落ちた。


そう、平は大卒で大阪府警に入り今年で7年目の地域課員だ。


「そもそも30歳でも試験受けれんの?」


「ああ、受けれるで。筆記試験の後、体力試験と面接がある。合格すれば警察官や」

平はのぼせたようだ。

休憩所の椅子に向かう。


「そかそか。チャレンジするのもありかもなぁ」

そう言いながら、俺は少し考えていた。


昔から、学校の成績は下から数えたほうが早かった。定期テストでの順位は悪かったが実力テストでは上位にいた。

やれば出来るのに、やらない人間だった。


どうせ、地頭は俺の方が良いと、他人をどこか見下していた。


大学も勉強するのが面倒で指定校推薦であまり頭の良くない大学に入った。

周りの人間をしょうもないやつらだと、関わる価値も無いと考えていた。


大学生活は楽しいはずもなく、辞めてしまった。


いまではすべてを後悔していた。


出来るのにやらない人間に価値はないのだと気付いた。


その結果が、いまの自分だと。


「よし。じゃあダメ元で受けてみるかー」

「とりあえず、パンフレットくれよ」



なんとなくそう言った一言が、人生を変えていった。

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