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Attack Section〜レーシング物語〜  作者: 秋雨前線
チュートリアル編
5/11

4

「あ、シューズはここから選んで履いてね。サイズは合わせてあるわ。」


 玄関まで行くと、さっきは無かったはずの靴がシューズラックに置いてあった。この辺りはまさにゲームって感じだ。

 問題は……何種類かあるのはわかるのだが、俺には全くその辺の知識がないので違いがわからないというところだな。解説なんかがあればありがたいんだけど。


「ん〜……とりあえずこれで。」


 わからないものを考えて選んでも仕方ないので、適当に端っこにあるやつを選んで手に取った。すると、半透明のウィンドウが表示された。


【『エルナイン・レーシングブーツ』を装備します。よろしいですか? はい いいえ】


「はい……と。」


 恐らくメーカー名だろうエルナイン?がどんなメーカーかは知らないが、たぶんどれを選んでも俺は知らないメーカーばかりだろう。とにかく今は先に進めばいい。


 『はい』を選択すると俺の足元が光り、ログイン時に最初から履いていたスリッパが消え、さっき置かれていたシューズが現れていた。


「おっと、こんな感じなんだな。」


「ええ、いちいち紐を結んだり緩めたりしないで靴を変えられるようになってるの。ちなみに、服も今は無地の白いT-シャツに短パンだけど、外に出れば勝手にレーシングスーツに変わるわよ。……()()()これも真っ白の無地だけどね。」


「へ〜、やっぱりその辺は流石バーチャルだなぁ。」


 リアルなところはリアルに、簡略化するところはとことん簡略化しているみたいだ。


「さ、そろそろチュートリアルに行くわよ。」
















「ようこそ、チュートリアルへ。」


 セラに連れられて玄関を出ると、かなり横に大きな建物があった。そしてその1階部分、つまり俺の目の前には1台の車が停まっているはずのガレージがあった。


「……ここは?」


 後ろを見てみれば、かなり大きなトレーラーが鎮座していた。そして、そこには俺が出てきたであろう出入り口がある。


「ここはパドックエリアという場所よ。ホームの玄関からサーキットに出れば、ここに出てくることになるわ。多少コースごとに違うけどね。今回の場合は富士スピードウェイよ。ホームに戻るときは今出てきたそのドアから戻れるわ。オンラインだとここで他のプレイヤーと交流したりもできるわね。ただ、今回はスルーしてコースに行くわよ。」


「あれ?ガレージに車あるんじゃないのか?」


 たしかに見てみると、ガレージ内は空っぽであるはずの車の影はどこにもなかった。


「ええ、チュートリアルだからもうコースに移動してあるのよ。ガレージからピットアウトするところから始めると、目的のことやるまでとんでもない時間がかかるかもしれないのよね。まぁ、別にガレージからでも時間かけない方法がない訳ではないのだけどね。」


「なるほど。」


 と、いうわけでガレージはスルーしてコースに出ていくことになった。ガレージの中には1メートル弱ほどの大きな金属製の入れ物や、謎のグラフが表示されたパソコンがあったりして興味はひかれたが、セラがどんどん進んでいくのでとりあえずついていくことにした。


 ガレージを出た先にある壁(セラ曰く、ピットウォールと言うらしい)を乗り越え、コースに出ると1台の車が止まっていた。


「さて、まずはこの車で発進からのフルブレーキングを練習してもらうわ。まあ、練習といっても1回でもやれば次にいけるけどね。」


「……曲がったりはしないのか?」


「それは次の段階ね。まずはブレーキが踏めないとお話にならないっていうものだからね。ブレーキを踏めて、ブレーキを使わずに曲がれて、初めてブレーキを使いながら曲がるのよ。」


「ブレーキを踏むことから始めるのに、ブレーキを使わないで曲がるってどういうことだ?」


 ブレーキで止まれなければ走れないのは理解できる。ただ、ブレーキを使わないってのはどういうことなんだろうか。まさか減速無しで曲がる……とは思えないが。


「ブレーキを使わないって言っても、減速しない訳じゃないわよ?しっかり減速して、コーナー侵入前にブレーキを離してゆっくり曲がるのがブレーキ無しで曲がるってことなの。」


「なら、ブレーキを使う曲がり方は?曲がりながらブレーキで減速したら遅いんじゃないのか?」


「ブレーキを使う曲がり方は、減速したあとでブレーキを離しきらないで、少しだけ残すようにしながら曲がり始めるのよ。あ、曲がり始めることを【ターンイン】って言うわ。このターンインでブレーキを少しだけ残すと、フロントタイヤに荷重がかかってグリップ力が増すの。これはまだ難しいから、詳しくはもう少し後での方がいいわ。」


「へー、まあ今はまだ気にしなくていいってことはなんとなくはわかったよ。それじゃ、とりあえずやろうか。」


「あら?お手本はいらない?」


「うーん……まぁ、まっすぐ走って止まるくらいなら大丈夫かな。」


「了解よ。」


 ブレーキを踏むくらいなら難しいことでも何でもないはずなんだけどな。ちなみに、俺は一応自動車運転免許を持っている。今までブレーキで困ったことは無いといっていい。


「今回の車はトヤタ製のマークVよ。ここからスタートして200メートル先にある停車ゾーン内に止まれることが目標ね。ギア操作はオートマチック、所謂AT(オートマ)よ。」


「りょーかい。じゃあ、さっそくやってもいいかな?」


「ええ、いいわよ。乗るとヘルメットが自動的に現れるけど、びっくりしないようにね。」


 車に乗り込むと、セラの言う通りヘルメットが自動的に現れて頭を覆った。運転席に座った感じだとまだ普通の車だ。


「あ、そうそう。加速はアクセル全開でよろしくね。じゃないと、このチュートリアルの意味があんまりないから。スタートでのタイヤの空転はトラクションコントロールで制御されるから安心してね。あと、エンジンをかけるとカウントダウンが始まるから、それに合わせてスタートしてね。」


 シートベルトを締めたり、シートポジションを合わせたりしていると、セラが助手席に乗り込んできた。


「アクセル全開ね。了解。ところで、なんでセラが隣に?」


「隣にいればすぐにアドバイスできるからね。あ、私がここにいるのはチュートリアルと一部モードだけだから安心してね。」


「わかった。」


 そういうことなら気にしなくていいだろう。エンジンスタートボタンを押してエンジンをかけると、カウントダウンが始まった。




 ここでアクセルを少し開けてみる。システム的にブレーキが掛けられているのかエンジン回転数が上がるだけで、発進はしなかった。



スタート


 スタートに合わせて、アクセルをめいっぱい踏む。ブレーキが解除されたのか車が加速を始めた。


「……!?」


 普段の生活ではまず感じない加速感に一瞬怯んだが、アクセルは踏む。


 50キロ……60キロ……70キロ……速度はどんどん上がっていく。


 速度が90キロを超えたころ、指定の範囲が近づいてきた。


 ブレーキを強めに踏み込んで減速をかけ……車は停止範囲でしっかり止まった。

今回登場しているチュートリアルは、富士スピードウェイという実在コースになります。コースの形状等気になる方は検索していただければすぐにわかると思います。

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