表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Attack Section〜レーシング物語〜  作者: 秋雨前線
チュートリアル編
2/11

1

 ある日、独り暮らしの大学生の俺の家になんだか大きい箱がうちに届いた。50センチ四方程はあるだろうか。そんな箱で届けられたわけだが、俺にこんなものを頼んだ覚えがあるかと言われれば、そんなものはない。全く持って迷惑極まりないものだ。

 ただ、宛名は確かに俺、小泉(こいずみ) 哲也(てつや)宛だった。


「誰だよ……いきなりこんなデカブツを送ってくるのは。」


 そんなことをぼやきつつ依頼表を見てみたら、差出人名の欄に書いてあるのは、とても見覚えがある名前だった。


 ご依頼主 小泉 和也(かずなり)


 ……見覚えがありすぎる。この名前は、俺の父さんだ。


「こんなでかい物送ってくるなら、せめて一言教えてくれればいいのに。」


 とりあえず箱を開けてみよう。


 カッター厳禁とか書いてある癖にしっかりガムテープ固定されているので、テープを剥がすのに少し手間取った。うぅ……爪が……。


「んで、何送ってきたんだよ……。こんなでかい箱に入れるものってなんだ??」


 開けて最初に出てきたのは大量の緩衝材だった。いわゆる()()()()だ。ひとつひとつ潰すのもあり、いっぺんにまとめて潰すのもありという便利グッズ。日々のストレス発散に!


 ……それはおいておこう。


 大量のプチプチをひっぱり出して、お次に顔を見せたのは手紙だった。中は後で読むとしよう。

 そして、最後に出てきたのが、プチプチでぐるぐる巻にされた塊だった。


「何これ……??」


 ぐるぐる巻の塊を解いてみると、中身は箱だった。側面には『Anschluss(アンシュラス)』という商品名らしき名前が書かれていた。……ただし、手書きで。


「Anschluss?って言うとどっかで聞いた気がするな。あれか、最近発売されたとかいう新型VRゲーム機だっけ。」


 最近よくテレビCMなんかで見るやつかな。たしか、所謂フルダイブ型と呼ばれるタイプのVRゲーム機で、今までのVR機器と比べて内部での解像度が良いとか言ってた気がする。


 ところで、なんで箱に書いてある『Anschluss』の文字が手書きなんだろうか。これ、絶対最初に入ってた箱じゃないよね?もともと入ってた箱どこいったし。しかも、開けてみてわかった事だが、段ボール箱の中身の6割はプチプチで、残りの4割が『Anschluss』の文字が書いてある箱だった。なんでそんなに緩衝材入れてんだ……うちの父さんは……。


「突っ込みどころ多すぎだろ……。はぁ、まぁいいや。んで、さっきの手紙手紙っと。」


 さぁ、読んでみよう。


『久しぶりだな。元気か?二十歳になったお祝いにVRゲーム機を送っておいたぞ。なんだっけか。若者に人気?とかなんとか店で言ってたな。まぁ、詳しいことはとりあえず取説でも見てくれ。ソフトはAttack(アタック) Section(セクション)VRをインストールしておいた。人気のレースゲームらしいぞ。父さんにはよくわからん世界だが、まぁ楽しんでくれたら嬉しい。あぁ、箱は最初に開けて見たときにうっかり壊しちまったから、別の箱にしたけど、ちゃんと新品だからな?それじゃ。

p.s. たまには帰ってこいよ?』


 どうやら二十歳のお祝いらしい。あんまりゲームはする方じゃないんだけど、せっかく送ってもらったことだしやってみることにしよう。やる事もなくだらけているよりかは有意義になるかもしれない。


 てか、箱を壊すとか、どんな開け方したんだ父さんは……。


「まぁ、いいや。Attack Sectionがどんなゲームなのかは知らないけど……あ、レース系って書いてあったか。とりあえず、やってみれば分かるだろ。そうと決まれば、取説取説っと。」


 箱を開けてみると、ゴーグルのようなものと何本かのケーブル。それに取り扱い説明書らしき冊子が入っていた。とりあえず本体のゴーグルとケーブルは取り出して、説明書を読むことにしよう。


「えーと?最初はセッティングかな?使い方は…………っと。お、ここか。えーと?まずは……電源ケーブル……これか。これを本体と接続して。……よし、んでもって次がLANケーブルを接続してっと。」


 そのあとあーだこーだといろいろとやって、準備は完了したらしい。あとは機械が自動でセットアップをしてくれるんだとか。














 というわけで、ごろごろしたり取説を読んだりAttack Sectionの事を調べたりして待っていた。調べてわかったのが、Attack Sectionは2ヶ月前に発売されたアンシュラス専用のフルダイブ型VRレーシングゲームで、発売元は新規参入の【grow up(グローアップ)】というもともとはAIを開発していた企業だそうだ。新規参入でそこまで有名ではなかったが、車に関することはもちろん、AIのクオリティもとても高く、口コミで一気に人気に火がついたらしい。割とマイナーなジャンルながらアンシュラスの主力ゲームだそうだ。

 気になったのは、レーシングゲームとはいいつつ、実際はリアルさを追求したシミュレーションゲームに近いらしいことだ。例の高機能AIも搭載で、現実に近いレース体験ができるとか。他にもいろいろと機能も内部にあるらしく、一応簡易的な生活もできる……らしい。


 そんなこんなで約30分。ゴーグルからピーっと音がなった。ようやくセットアップが終わったみたいだ。


「お?終わったかな。そしたら次は……こいつを被って、ゲーム名言えばいいのか。」


 ゴーグルを被ってからベッドに横になりゲーム起動。


「Attack Section 起動。」


 音声コマンドに反応してAnschlussが起動。一瞬の間のあと、浮遊感がやってきた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ