”笑”店街
一人暮らしの私が買い物で利用する場は「商店街」だ。アーチの屋根が架かったこの商店街は私が生まれるより前に誕生しかなり繁盛したらしいが、今ではシャッターで閉じられているお店がほとんどだ。大学入学当初の寂しさを紛らすために、コミュニケーションを取りやすそうなこの場を選んで以来、買い物はここでしかしていない。
”肉屋の佐藤”・”魚屋の鈴木”・”本屋の田中”・”アパレル高橋”などなど
この商店街の店名はなぜかよく聞く名字の店名が多いことに加えて、何より人の癖が強い。
ここは”商店街”ではなく、”笑店街”と佐藤のおばちゃんが言っている。
「おばちゃん、コロッケ2つと卵焼き1つください。」
「はいよ、たまには料理しなさいよ。あんたは。」
「えー、めんどくさいよ〜。」
いつもの会話して、晩御飯のおかずを手に入れた私は”田中”へ向かった。
本屋に入ると目的の”就活用コーナー”へ
そこには、
「面接攻略方法」
「適職を見つける方法」
「新入社員がするべきこと」などが並べられている。
とりあえず何冊かを手に取りレジへ向かった。
仕事をすることがゲンの言うヒーローになることであるのであれば、
「”ヒーローになる方法”って名前にしたほうが売れると思うけどな。田中さん。」
「そんな胡散臭い本を買う人はいないやろ。はい、3,500円。」
「結構高いんですね。」
「当たり前やろ。攻略方法やで。良い結果期待してるで。フフフ。」
「フフフって、ボチボチがんばります。。。」
憂鬱だ。今日まではゆっくりしていいよねと自分に甘い私が出てきている。
本屋を出ると、大きなポスターが目に入った。
「こんなの貼られていたかな?」
書かれていた内容は、
”空き家を利用しませんか?”
「これ何???高橋のおじちゃん!」
”田中”の向かいには”高橋”がある。
「あーこれね、この近所もかなり衰退してきてね。新しい移住者を増やすために活動してるみたいよ。」
「ふ〜ん。衰退ね。私も何かできるかな。おじちゃん。」
「セイちゃんが芸能人にでもなってこの商店街で育ちましたって言ってくださいな。」
「なれるならお笑い芸人かな。考えてとくね。」
”空き家”
大学で”建築”を専攻しているからか、何かがひっかかる自分がいる。
さて家で休むとしよう。
まずはこの自分に甘い所を治す必要がありそうだ。