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バリヤ 9  作者: 縁ゆうこ
第2章
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エピローグ


 ここはSINGYOUJIホテルが持っている、プライベートビーチ。

 本日ここは、貸し切りになっていた。


 静かに打ち寄せる波に、初めは驚いて怖々(こわごわ)だった月羽とステラとララも、大胆に入って行くナズナに触発されて、今では大はしゃぎだ。

「うーむ、いつ見ても水着は良いもんだねえ」

 鼻の下を伸ばして彼女たちを見る直正に、ポカンポカンと鉄拳が飛ぶ。

「いってえー、何するんだよ」

 見るとそこには、怖い顔で腕を組む丁央、遼太朗、琥珀がいる。

「イヤらしい目で見るんじゃない!」

 代表して言う丁央に、直正も負けてはいない。

「うるせえ、これは男のサガだよ!」

「なにを!」

 睨み合う2人の間をスッと何かが横切る。

 それはビーチボールだった。

「直正、取ってくれ」

 反対側を向いた直正の目が、またハートになる。

「こっちですわ」

「おねがーい」

 それはハリス隊の美女たちだ。

「パールちゃん、花音ちゃん。おわ、ゾーイとティビーもすてきー。はい! 喜んで!」

 異例の早さで、直正はビーボールを手にそちらへ駈けていった。


「まったく」

 こちらも腕組みしながら現れた綴が言う。

「すまないな」

 代わりに謝る綴を手で制して、遼太朗が隣に立つ。

「これが海か」

「本当に、見渡す限りでしょう」

 またその横に来た琥珀が言う。

「ああ。連れてきてくれてありがとう、礼を言うよ」

「どういたしまして」

 何故かえらそうに答える丁央に、遼太朗は苦笑いだ。

「お前じゃないだろう」

 波打ち際で何やら真剣に語り合っていた泰斗と鈴丸もやって来る。

「ふうー、あまりの違いに目が回りそう」

「それは、あっちに行ったときの俺も同じだったよ」


「何だか気持ちいいね」

「うん、癒される」

「海というのは、そういう所なんだ」

「癒やしの場、か」

 うーんと伸びをした丁央が、やたらと楽しそうな直正を見て、「あいつだけ楽しんでる!」と、ちょっかいをかけるべく走り出す。

「あ、ずるい丁央、僕も!」

「俺も!」

 泰斗と鈴丸があとを追っていく。

 顔を見合わせていた残りの3人も、仕方ないかと言うように肩をすくめて、ゆっくりと彼らのあとを歩き出した。




 次元の扉は閉じ、塩の水たまりもなくなった。

 だが、移動したトライアングル星座は、そのままの位置で輝いている。

「トライアングル星座は、ここが本来の位置だったようじゃの。争いばかりを繰り返すジャック国の輩に愛想をつかして、あんなに遠くへ離れていたのじゃろうな」

 ラバラはそんな風に分析した。


 ステラとララは、ルエラとしばしの再会を喜び合っていたが、

「すぐに帰らなきゃならないのよねー」

 と、軽く言うルエラに、また涙目になっている。

「もう、泣かないの。ネイバーシティは行かないって約束したけど、ここはそうじゃないから、しょっちゅう来てあ・げ・る」

「「ホントですか?!」」

 喜ぶ2人とは対照的に、ラバラはため息など落としていた。


 あれからナズナは、クルスとの交際を承諾したが、クイーンシティへ来るわけには行かないと言った。どうなるのかとハラハラしていた皆は、考えに考えたクルスがネイバーシティへ行くと決めたとき、おおいに喜んだものだ。

 しかも。

「すばらしい後継者が来て下さりましたな。この爺も、そろそろ引退かと考えておりましたので」

 クルスは、SINGYOUJIホテルの新たなバリヤとしてMR.スミスのあとを受け継ぐ事になった。ただし、何年間かMR.スミスの元でバトラーの修行をせねばならない。

 ただ、面接を行ったMR.スミスが、その場で太鼓判を押しそうになったのは、彼だけの秘密だ。


 そしてなんと、入れ替わりと言ってはなんだが、琥珀はクイーンシティに留まることに決めていた。

 言うまでもなく「一角獣の研究と保護のため」だが、もう一つ理由があった。

「実は」

 と、ララを生涯の伴侶とすると宣言したのだ!

 皆の驚きはハンパじゃなかったが、それを過ぎると、やはり大騒ぎのお祭り騒ぎだ。

「ええー?! いつの間に! ずりいー」

 と、ひとり直正などはダダをこねまくっていたが。


 その直正と綴は、やはりネイバーシティに帰る事にしている。

 ソラ・カンパニーで、まだまだやりたい事が山積みだから。


 鈴丸は?

 最後まで決めかねていた鈴丸も、やはりネイバーシティに帰ると言う。

「でも!」

 と、泰斗の手を取って言う。

「いつでも来ていいよね!」

 嬉しそうに笑った泰斗が頷いて、

「もちろん」

 と答えを返すと、鈴丸はホッとしたように満面の笑みで答える。

「良かったあー」

「いつでも来いよ!」

「待ってますよ」

 トニー&時田は言うまでもなく。

「イツでも、コイ」

 R-4までもが言ってくれたので、鈴丸は大感激だった。



 今後はふたつの次元を行ったり来たりは自由自在。

 と言う訳にはいかない。

 通り抜ける人を選ぶのは、次元の扉自身。

 その前に頭ガチガチで融通の利かない、バリヤがいる。


 2つの世界は、つながりあってはいるが、互いに干渉が過ぎてはならない。

 彼らは深いところでそれがなんとなくわかるのだ。

 だから。

 次元の扉のことはほとんど知られていないくらいがちょうど良いのだ。




 クイーンシティとネイバーシティ。

 若者たちは、それぞれの場所で、また未来を作っていく。





ここまでお読み頂き、ありがとうございました。

「バリヤ 9」完了いたしました。

今回は、原点に返って? 次元の扉が取り持つ世界の、若者たちのお話しです。

私たちが知ってる世界って、本当はどこまでなんでしょう。もし次元の扉があったら、あなたはどんな世界に行ってみたいですか?

それにしても、クイーンシティ側からは誰でも通り放題のようですね、次元の扉(笑)

また彼らはいつかここに来てくれるかも知れません。その時はどうぞ遊びにいらして下さいね。

それではまた。

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