第二話 テンプレを踏めばいいんじゃろ?
どうも!ろくみっつです!!
楽しんでいってくださ!!!!
ギン!ギン!という音と、「奴らを殺せ!!!」なんていう物騒な怒号が飛び交う。
ここは、戦場。世紀を分ける、重要な世界史の一ページ……。
なんていうことはなく、ただの道端だ。現実から目を背けながらふざけたモノローグを語ってみたが、そうしているうちにも目の前に剣が迫ってくる。
それをいなし、剣を弾き飛ばして相手の胴に拳をめり込ませる。気絶させてから吐く言葉は、こういう時にふさわしい、あの言葉だ。
「なんでこうなった……」
俺の言葉は空虚に響き、誰にも聞こえることはなかった。
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事の起こりは大体一週間前。人と魔族の戦争に参加し、ぶっ倒れた俺にメノスがこう問いかけてきたあたりから始まるのだろう。
「クロガネよ。ダンジョン、というものを知っているか?」
俺は、この言葉を聞いたときにテンプレ再登場!なんて少し思ってしまったことに後悔している。
ダンジョンとは。メノス曰く、この世界に存在する自然の魔力溜りか、魔物や人が故意に作った様々な場所の事を差すらしい。
曰く、塔のように上へ上へと昇っていくようなダンジョンや、逆に地下迷宮と呼ばれる下へ下へと降りていくモノもある。
曰く、規模の大小あるが、大体は階層を経れば経るほど出てくる魔物は強くなり、そこで得られる宝物も価値の高いものになっていく。
曰く、冒険者と呼ばれる魔物退治のエキスパートたちは腕試しとして日夜そのダンジョンに突撃をかまし生きるか死ぬかの戦いを繰り広げている。
曰く、そのダンジョンと呼ばれるモノには階層主__ボスと呼ばれる魔物が居て、ソレを倒すことにより、冒険者は様々な力を付けていくらしい。
という、俺の知っているダンジョンとあまり大差のないモノがこの世界にもあるのだという。
メノスはがなぜ俺にこのダンジョンなるものの存在を知っているかを聞いてきたかというと、俺の早く強くなりたいという気持ちを汲み取ってくれたからだ。
元々は年単位でみっちりかっちりギッチリと鍛えるという話だったのだが、俺が早く強くなる理由ができてしまい、悠長にしてはいられなくなったからだ。
ダンジョンは、協力な魔物や様々なトラップなどにより、ハイリスクで危険な場所ではあるが、その分ボスを討伐できたときには見合った装備や力を獲得できるハイリターンな場所でもあるらしい。
メノスは俺をそのダンジョンに送り出すことで、より早く確実にレベルアップをさせたいのだろう。
もちろん、行ってみないか?というメノスの誘いに俺は二つ返事で乗ったのだ。
だが、ここで発生した問題があった。
なんと、ダンジョンという代物は魔界には存在していないというのだ。
なんでも、魔界がちょっとした荒野みたいな自然環境になったときに、魔力溜りがほぼすべて消えてしまい、なかなか集まりにくい環境に変化したらしく、人工的に作ろうにも魔界特有の鉱物に魔力が吸われていくせいで作りたくても作れない状況らしい。
そのため、人間の領地に足を運ばないといけないのだが、メノス以下魔族のヒトたちは、その肌の色を隠すことができないために魔界から外に出れば速攻で発見され、即座に攻撃が飛んでくるらしい。
なので、ダンジョンには俺だけで行くことになってしまうのだった。
それでも俺は早く強くならなければならないからこそ一人で人間の領地へと出立したのである。
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さて、それで魔界と人間の領地を隔てる大きく長い門みたいな砦みたいな場所を北側のちょっとした過疎地から侵入し、無事人間の領地へと足を踏み入れた俺は、近くの森から公道のような多少整備された道へと進んでいる。
服装はそこら辺の冒険者として通るように魔物の皮(なんの皮かはよく聞いてない)を基本にした上下と、間接と胸部、それから額を金属で作ってあるプロテクターを装備し、腰には一本の長剣を帯びていたりする。
通行人は俺以外居ないので、補助魔法で速度を上げて馬より遅いかどうかで駆けているのだが、そんな俺の目にめんどくさそうなことになっている集団が入ってきた。
まず見えたのは多数のむさ苦しそうな男ども__たぶん盗賊だろう。服装は上等は言い難いがボロボロではなく年季の入ったような金属のプレートも見える。人数は大体十数人と言ったところか。
次に見えるのは、その多数の男どもに囲まれる馬車。こっちはなんかすごい豪華なのが分かる。御者は一人で鎧を付けている。なんというか、お金持ちな奴が中に居そうな雰囲気だが、護衛は一人も見当たりはしない。
「あぁ……これはあれか、テンプレっていうやつか……」
と俺は少し離れたところで立ち止まりつぶやく。
話し声は聞こえないが、言い合っているような雰囲気だ。盗賊はまぁヤる気なんだろう。豪華そうに見える馬車で護衛もついていないのだ、貴族様の坊ちゃんなら金目のモノを掻っ攫って邪魔そうな坊ちゃんは放置か殺すかヤるか。女が中にいるなら金目の物を奪ってヤり捨て御免ってところだろう。
こういうシーンは、今の俺の状況を考えれば無視して迂回が一番だろう。俺にはこんな面倒ごとを抱える時間はないのだ。
だが、見てしまったからにはどうにかしたいと思ってしまうのは仕方のないことだと思う。悪漢や暴漢やアホの相手はこれまで呆れるほどしてきた。理由はほぼ白木に降りかかる火の粉を払うためだが、中には少しだけだが赤の他人を助けたこともある。見捨てるのは心苦しい。
だが、やはり俺の最優先は白木だ。背に腹は代えられぬ、と思いながらもメノスから教わった気配断ちと補助魔法を駆使して気配をできる限り殺して、近くの森へ脇へそれようとしたときに、言い合いの言葉が聞こえてきた。
「貴様ら!この馬車がレシアス家のモノだと知っての狼藉か!!」
「あぁ?知らねぇよんなことはよぉ!さっさと金目のモノを寄越せや!それでてめぇらの身ぃだけは許してやらぁ!!!ハハハハ!!!」
「き、貴様!!!レシアス家は勇者との交友がある家だぞ!さらに、この馬車の中に御座すは、勇者様とご友人であるティシス=レシアス様だ!!!このような狼藉、一度知れれば貴様らは即座に断罪される!!!」
「へぇ!良いこと聞いたなぁ……。おい、てめぇら!この馬車にはあの超絶美少女様が乗り込んでやがんだってよ!今夜は眠れねぇなぁ!!!」
下卑た声とくぐもっているが凛とした声の応酬が聞こえる。
この馬車は美少女が乗っているらしい。盗賊どもはそれを知って下卑た顔を更に想像で快楽にゆがませているようだ。
だが、俺にとってそんなことはどうでもよいかった。聞こえてきたこの言い合いに気になるワードが含まれているからだ。
思わず、頑張って覚えた気配断ちも、補助魔法も切って、公道に乗り出てしまった。
「なぁ、その勇者の友人だってぇのは……本当か?」
まぁ、いわゆるテンプレだ。
ダンジョンに行こうとしたら、途中で盗賊に囲まれた馬車がいて、その中には俺の求めた人の友人がいる。
テンプレだ。なら、行動は決まっているだろう?
「もし、本当なら……。ちょっとばかり話を聞かせてくれや。代わりにこの盗賊ども全員ぶっつぶしてやるからよ」
俺は盗賊を蹴散らし、この世界での白木について聞くために、そう切り出した
次回は若干の戦闘回です
そして新キャラのお披露目!!!……とは言え前作と同じキャラなんですけどね……
では、もう一作もよろしくお願いします!!!