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第十四話 前編、俺は君を……

お久しぶりです!ろくみっつです

今回はながぁぁぁくなってしまったので、前後編で分けて二本連続投稿します!


といっても少し時間を空けての投稿ですが……

まぁ今回もよろしくお願いします!!!

 俺の視線は、異世界に勇者として召喚され、外見も人格も変わってしまった幼馴染に注がれる。

 思い起こすのは、一年以上前の、まだ日本で一緒にいたころの白木の姿。

 黒くて艶やかな髪を短く切ってにこやかな笑みを浮かべる白木の姿だ。


「俺は、お前を助けるぞ。白木」


 俺は彼女にそう告げる。

 聞いた彼女は眉を顰め、いやそうな顔をする。だけど、その顔は俺にはなんだか別の表情に見えてしまった。


「さっきから聞いてるけど、その助けるってなんなの?私は別に助けてなんてあなたに言った覚えはないわ。

 それに、気安く名前を呼ばないで頂戴。なんだか、イラつくのよ、無性に!

 せっかく見逃してあげるって言ってるのに突っかかってくるし、わけのわかんないことをずっと言ってくるし、気持ち悪いわよ!」


 彼女は叫んだ。叫んだ後にハッとする。

 まるで、なんでこんなにムキになっているのかが理解できないという顔をしながら。


「……。わけわかんないか、そりゃあそうだよな。はたから見たらただの気持ち悪い奴だもんな。いきなり現れて、君を助けるなんて言い出して。

 でもさ、別にそんなの俺は気にしないんだよ。君は今は覚えてないかもしれない、思い出さないかもしれない。もしかしたら一生俺のことを忘れたままかもしれない。

 別に俺はいいよ、それでも。俺は忘れられたままでいい。今はただ、お前の__白木の、その悲しそうな顔を笑顔にしたいだけなんだ。

 お前気づいてないだろ?俺と会った時も今のお前も、ものすごく悲しい顔してるんだぞ」


 彼女とこの世界で再開したときも、今この時も、多分俺が会ってかった間も、ずっとずっと白木は悲しそうな顔をしている。俺はそう思った。

 他人が見ればまた違う表情だったのかもしれない。でも、俺にはそうやって見えるのだ。

 助けてほしそうな顔でも痛そうな顔でもましてや笑顔には程遠い、自分ではなく他人を悲しむ顔をしているのだ。


「なんで、そんな顔してるのか俺には今は分かんないよ。

 でも、それを知りたい。お前をその悲しそうな顔から前みたいな笑顔に戻すための努力をしたい。

 だから、お前をここで助ける。例え、お前が傷付いてしまうことになっても」


 告げる。

 俺の心を、本心を。

 今はまだ、それでいいのだ。彼女の顔をいつもみたいな笑顔にすることから、始めたい。

 そしてそのために、彼女を助けたい。


「わけわかんない……。気持ち悪い。知らないわよ、あなたのことなんて!

 私を助けるって何よ!?どう助けるっていうのよ!?こんな世界に飛ばされて、いきなり監禁されて、その時に助けてって叫んでも誰も助けてくれなかった!そのあとも無理やり魔法なんてものを覚えさせられて、怪物を倒せって言われて!出来ずに泣いたら打たれて!あなたにわかる!?こんな理不尽が!!!

 私はもう嫌よ、戦うのも、魔法を使うのも……。でも、そうしなきゃ私は帰れないの!元の世界に!日本に!!だから、私は戦うわ、誰が何と言おうとも、誰を何人殺そうとも、私は……私は!!!!」


 彼女は叫び続けた。

 まるで今までたまった鬱憤をここで吐き出すように。

 そして俺は、彼女に降りかかった起こった理不尽の片鱗を知った。

 彼女の受けた所業は許せない。許すわけには行かない。

 でも、今はまず彼女の、傷ついた心を癒してあげたい。


「助ける……?助けるって、言うなら!助けてみなさいよ!!!ほら!!

 出来ないでしょ!?無理でしょ!?日本へ帰る方法なんてあなたわかんないでしょ!?無理ならいいわよ!あなたを殺して私は帰るから!!!だから、ここで死になさい!!!!!」


 支離滅裂になっていく言葉を紡ぎながら、彼女は涙する。そしてそのまま襲い掛かってくる。


 展開されるのは数多の魔法。

 四方八方から、まるで機関銃のように俺へと殺到する。

 一つ一つが当たれば致命傷になりえる魔法だ。


「あぁ、助けるよ。そう言ってるだろ?日本に帰りたいなら、俺も方法を探すよ。だから一旦、止まってくれ」


 俺の呟きは彼女には聞こえてないだろう、届かないだろう。

 だから俺が彼女に近づくしかない。近づいてしっかりと耳に、心に届かせてやるのだ。


 俺は、殺到する魔法を避けて殴って蹴って、捌いていく。

 今の俺の状態なら、それが無理なく行える。魔法の速度は先ほどより遅く感じ、しっかりと視認できる。見えなかった風の刃も、音を拾えば大体の方向が分かる。あとは音の接近に合わせてよければいい。

 一つの動作で複数の魔法を無力化するために、殴ったり蹴ったりすることで、軌道をずらし、魔法と魔法をぶつけ合う。


 補助魔法はフル稼働している。全身を全力を異常なほどに高めている。


 一度の歩みで多くの魔法を捌き、白木へと近づく。


 そして、ほどなくして、俺は彼女へと急接近した。


「あぁぁぁ!!!来ないでよぉ!!!!」


 彼女は狂ったように腕を振り上げ、杖で殴り掛かってくる。

 見え透いたその攻撃をゆっくり、柔らかく、つかみ取り、彼女へとさらに近づく。

 彼女の瞳は、赤く血走り、揺れ動いていた。

 彼女の唇は少しだけ切れていた。彼女の表情はありったけの感情がごちゃまぜになった表情だった。

 彼女は今、俺の腕の中にいる。


「はな、しな……さい」


「いやだ、もう離さない。もう離れたくない、忘れてほしくない」


「知らない、わよ……。私は知らない。あなたなんて知らない……。

 なのに、なのに……なんで、こんなにうれしいのよ……。

 なんであなたにこうやってされると、落ち着いちゃうのよ……」


「……」


 俺には答えられなかった。彼女は、俺のことを知らないといった、覚えてないといった。

 でも、彼女は嬉しいといった、落ち着くといった。

 それは、どういうことなのか。

 もしかしたら、彼女の記憶を戻せるかもしれないと思った。


 そのとき、別の場所から、声がする。


「ふぉっふぉっふぉ。初々しいのぅ、えぇ?このグズ人形風情が」


 迸るドス黒い魔力。

 振り返ればそこには、汚いローブを着た爺さんが立っていた。


「ふん、飢えた犬っころでは抑えられんかもと思い、お前も派遣したのじゃが、まさか人形すらも陥落してしまうとは……。勇者のくせに不甲斐ない。

 これでは召喚した儂のメンツが丸潰れじゃ。そうは思わんか?クズ人形!?」


 爺さんはそう語りだす。


 そして俺は思い出した。この爺さんには見覚えがあった。

 この、白木を人形と呼ぶ爺さんは……。


「お前は、城の前に転移してきた!」


「今更思い出したか、異世界人。頭が弱いのぅ。

 そうじゃそうじゃ、儂はそのクズ人形を魔界の城まで送迎してやった爺さんじゃ。

 ふぉっふぉっふぉ。それにしてもまさか異世界人が魔族になるとは、面白いモンが見れたのぅ」


 爺さんは愉快そうに笑う。

 だが、俺の内心はそう愉快ではない。


 この爺さんは自分で言ったのだ。

 白木を召喚した。と。そして、この爺さんは白木を人形扱いしているのだ。


 とても、見逃せるものでは、ない。


「爺さん。あんたが、どういう人間かは俺にはよくわかんないし、どうでもいいけど。

 白木を貶すってんなら、容赦しねぇぞ。それにな、今あんた、白木を召喚したって言ったよな?

 てことは、白木がこんな風になったのは、あんたのせいってことで、良いよな!?」


「何を言っておるのやら。そこの人形は本来ただの器じゃぞ?わしの偉大なる望みのために、儂が召喚した器じゃ、本当は意思すら奪い、喋ることも歩くこともないただの器じゃった。だが、あの国王めが、そ奴を勇者として利用すると抜かしおってなぁ。

 国王の協力がなくては召喚の儀式は成功しなんだ、なればこそ顔を立てて人形として仕上げてやったまで、まだ意識があり動き、喋れることに感謝してほしいぐらいじゃって」


 爺さんはそう言う。

 その言いぶりは、白木を人として見ていないものだった。

 なんだそれは。という言葉しか出てこない。白木を人形にすることに感謝だと?意識も動きも封じてただの器にするつもりだっただと!?

 俺は頭に血が上るのを認識できた。体温が上がり、体に力が入っていくのが自覚できた。


 俺の頭にあるのは、ただ一つ。

 この爺さんを許せない。

 それだけだった。


「てめぇ……。絶対に許さねぇ……!白木に手ぇ出しただけじゃなく、自分勝手な野望に利用しようとするだと!?上等だ!てめぇのその野望とやら、この俺がぶっ壊してやる!てめぇのその気に入らねぇ顔面と一緒にな!!!」


 俺がそう叫んでも爺さんは肩をすくめるだけだった。

 まるで、聞く価値もないとでも言うようなその行動は、俺の神経を逆撫でするだけだった。

 そして、爺さんはため息をつきこういった。


「はぁ……。小僧はなぁんにも分かっておらんのぅ。

 良いか?そこの人形は既に儂の支配下にある。それをどう扱おうと儂の勝手じゃ。

 儂の偉大なる望みをぶち壊すじゃと?笑わせるな小僧。貴様には無理じゃよ。貴様はせいぜいそうやって腕に抱いている人形に殺されるのが落ちじゃ」


 と。

 そして爺さんは手に持った杖の先で地面をたたく。


 俺にはその行動が理解できなかった。だが、その行動の意味は、俺の体が身をもって知った。


 ドス。という音が俺のわき腹から聞こえる。

 音が聞こえるほうへ手をやると、ぬるりとした感触がある。


「え?」


 視線をそちらへ向けると、一本のナイフがわき腹に刺さっている。

 そのナイフは誰かの手に握られていた。その手を辿ればとある人物の顔が見える。


「しら、き?」


 それは茫然とする、白木の顔だった。

いかがだったでしょうか?

午後にもう一本上げるので、よろしくです!


では、今回は、このへんでノシ

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