第十一話 別視、相対するは拳と拳
連続投稿です!
というか、昨日のは誤投なんですけどね……w
てことで、今回は大将対決でございます!楽しんでください!!!
時間を少しだけ遡ろう。
黒鉄が率いる魔王軍第三部隊とガリスとメドラトが率いる飢狼騎士団の四大隊がぶつかるその前に。
南西方へ陣取るのは魔王軍第一・第二部隊。そして禁断を冠する魔なる王。メノス=アピゴレム。
それに相対するは、飢狼騎士団一個大隊と、人の身でありながら己を磨き上げ、龍族すらもその拳で貫く恐怖の権化。ガラード・エドワード・カーライル。
開戦の合図は既に鳴り、それぞれの部隊は戦闘を始めている。戦場に響き渡るのは、剣と剣がぶつかり合う音、それぞれの怒号と馬の嘶き。魔法を唱える詠唱の声。
それらを背景に、BGMに、二つの軍の大将格が己が身一つでぶつかり合っていた。
メノスは片腕と両足を駆使しあらゆる角度から攻撃し、離れ、また攻撃するヒットエンドアウェイ。方やガラードはその巨躯と耐久力を活かし、重い一撃を的確に入れていくインファイト。
攻撃の手数はメノスの方が圧倒的に多いが、ガラードの尋常ではない耐久力の前には、未だ効果は期待できていない。メノスは軽やかな身のこなしにより攻撃に掠ることもないが、もしガラードの拳が当たればただでは済まないだろう。
ブゥンと空気が震える音がする。それは、人の一撃とは思えないほどの速さで放たれた拳が、空を切る音だ。
「フハッ!流石だな、禁なる王!一撃も当たりはせん!!!単なる魔物や、凡なる魔族ならば、既に四散しているはずだというのに!!!」
「流石にっ!お前の一撃をっ!受けるわけにはっ、今の身ではっ!!!厳しいのでのぅ!!!」
ガラードの放つ一撃を紙一重とも思えるギリギリの状態で躱していくメノス。その間にも、何度も攻撃を当て、しかしそれがほぼ意味のないことに感心しながら返事を返す。
「今の身……でね。ならば!貴様の本領を発揮すればよかろうに!」
「いやいや、無理を言うな。ここでそれをやってのけるなど、お前の後ろに控える勇者が恐ろしくて堪らんわ!!」
「ハハハハ!言うな。どうせ、あやつは来んよ。元々我らの尻拭いなどを命じられ、まったくやる気がなかったからな」
「そうか。だが、アレを今使うわけにはいかんよ。それに、今回は、おぬしも本気ではないのであろう?」
「なぜ、そう思う?」
「簡単じゃろ。武器がない。貴様の主武装たる『千戦恐狂・ヴォルガンテ』を持ってきていないだろうに」
「正解だなぁ。まぁ、私も今回の戦争は全くもってやる気は無かったからな。そもそも、私の拳はヒトではなく魔なる物を滅するための武器だ。やる気なぞ湧くわけがない。
ガリスやメドラトはほかに思うところがあるようだがな」
「なるほどのぅ。それを言うのならこちらの勇者もやる気満々とまではいかんが、色々思うところがあるらしくてのぅ。
ほれ、あっちを見てみぃ。面白いのが見れるぞ?」
そう言ってメノスは黒鉄とガリスが戦っている方向を示す。
二人が視線を向けた先では、黒鉄とガリスが何やら話している様子だった。
そして、ガリスの言葉がドンドンと吐き出されていくにつれ、黒鉄の周囲の空間が揺らいで見える。まるで季節外れの陽炎のように。
「なんだぁ……。あれは……魔力?にしては、多すぎる!?どういうことだ!?」
「ハハハ。クロガネめ、渡しておいた腕輪すらも上回る魔力ではないか!目を少し離した途端にこれか!
そちらの騎士はクロガネに何を吹いたのやら」
ガラードは驚き、メノスは感心し、二人ともが興奮したように口を開いた。
「勇者の実力がこれほどとは……っ!魔界の王は一体何を召喚したんだ!?」
「さぁなぁ。私が呼んだのは貴様らが使った『召喚の儀陣』なのだがな。あの魔法陣はよくわからない力を持ったものでも召喚するものなのかのぅ」
「はぁ……。我々は何を呼び出し何のためにそれを使役しようとしているのか……。呆れるものだ」
そして、二人が見守る先で、黒鉄がガリスを赤子の手を捻るように倒してしまった。
「今回はこちらの負けだな」
「ん?もう良いのか?」
「あぁ、正直あまり貴様たちと戦いたくはないというのが私の意志でな。今回はそちらの召喚した勇者の力量を見極めれば撤収する手筈になっているからな。今日のところはここで終了だ」
「そうかそうか。それはこちらとしては願ったり叶ったりじゃな」
「だろ?てぇことで……てめぇら!今回は俺たちの負けだ!!!さっさと引くぞ!!!」
ガラードは声を張り上げる。
その言葉を聞き寸刻前まで魔族と闘っていた者たちが一斉に後退し始める。
魔族の兵たちは少しだけ戸惑いを見せるが、王たるメノスが何もせずにその場にいるため一応の警戒をしながらも剣を収めるのだった。
「ふむ……。やはり、飢狼どもは魔族と戦うことは好ましく思っておらんか。ならば、やはり我らが抜くべきはかの国の頭脳といったところかの……。
さて、頭脳の主力たる勇者をこちらの勇者が上手く無力化できるのであれば、無益な争いをする必要もなくなってくるのだが……。
期待してもいいのだろうか、クロガネよ……」
メノスのつぶやきは静まった戦場に小さく空しく吐き出された。
答える者は、誰もいない。
チラリと視線をやるのは、先を進んだクロガネの方。そして、その先には退屈そうに欠伸をする人間に召喚された勇者__シラキ サキだった。
いかがだったでしょうか?
まぁ、大将対決なんですけど、正直あまり二人とも闘うことに対して乗り気ではないので、結構あっさりです。
次回はやっと白木vs黒鉄になりますので、よろしくどうぞです!
ではノシ
ガラードさん、一人称が私なんですけど、これ団員に号令をかける時は“俺”になるっていう設定でいいですかね???私たちの負けだ!って大声で叫ぶと優男感があふれちゃうので……。
ていうか、自分の事とか私的な会話では私、で公的な会話は俺って感じで分けていいです?