表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
糸遊~きみにつながるひかり~  作者: 天水しあ
第一章『外界』
5/143

「処世術」

 やがて開門し、瑛明は比呂の仲間に導かれ、人気の店が並ぶ、悪くない場所に売り場を確保した。

「おっ、瑛明久しぶり」

「元気にしてたか?」

 あちこちから掛かる声に最上級の笑顔をくれてやりながら、まったく、どいつもこいつも鼻の下伸ばしやがって。いいかげん気づけ、俺が男だってことに! と内心思っている。 

 ――でも仕方ないか。女もびっくりなこの艶やかで豊かな髪、こちらも母さんゆずりの白い肌、ロクなモン食ってないから太らないうえ肩も張ってない。おまけに顔が綺麗で、声変わりもまだと来た。

「どうかしたか?」

 気づいたら隣で店開きをしている髭男が顔を覗き込んでいた。おい、近すぎ!

 慌てて後ずさると男はカカと笑い、

「顔が赤ぇぞ。おまえは本当に初心だなあ。悪い男にひっかからないか心配だわ」

 もう笑うしかない。


 「おっ、お姉ちゃん綺麗だねえ。ちょっと品を見せておくれよ」

 掌に載るくらいの小さな竹かごを手渡したら、目の前に立つ初老の男が、不自然に手を握ってきた。まあ少しでも多く稼ぐのに、多少の我慢は必要だ。これくらいは許容範囲。

 母さんが山奥で動けないでいる今のうちに俺がガッチリ稼いで、どうにか母子二人、平穏に暮らすんだ。


 もう二度と、あの世間知らずの小姐に、下賎な真似なんかさせるもんか。


「あれ? ここ割れてるじゃないか」

「えっ! すみません、どこですか!」

 そのためなら必死な面持ちで、ちょっと顔を寄せてやることくらい、どうってことない。

 手ぐらい、好きなように触らせてやる。

 楽しくなくたって笑顔をみせてやることくらい、いくらだってやってやる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ