ダイナマイト領主-1
「領主様!ウチの農場に突然、盗賊がやってきたんでさあ…何とかしてくだせえ…」
身なりの整った男がC言語で土下座をする。
目の前には、『領主様』と呼ばれた妙齢の女性が立っている。
腰まであるプラチナブロンドの髪に、サファイアブルーの誇り高き意志を秘めた瞳。
透き通る白い肌を貴族の服で包み込んでおり。そして、そのバストは豊満であった。
「ふむ、ならばそちらへ行くとしよう、ロータス、留守を任せる」
「はい」
「ありがとうごせえます…」
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「は…早く、さっさと有り金と食料…をぜ、全部よこしやがれェ!」
農民に見える身なりの男が、必死の形相でわめき散らす、まるで何かにおびえているように。
「君か、農場で騒いでいる者というのは」
「だ…だとしたら何だッ!…早くしないとみんなが…」
「何やら訳ありと見るが、私に出来ることはあるか?」
「う…嘘をつくなッ!お前たち貴族はそうやって俺たちをだましてきたくせに!」
「このライズ・マーキュリー!人を陥れることは決してせんッ!」
「…ッ!」
女性────ライズは、男を力強く、しかし、優しい瞳で見つめる。
この男自身もライズ卿の噂は耳にしていた。
曰わく、難病の者を薬も使わず治し、金も取らずに去る。
曰わく、左腕一つで荒れ野を花畑に変える。
曰わく、借金まみれの者に仕事を与え、完済まで根気よく付き合う。
などなど、悪評と言えば、少々酒癖が悪いくらいのものであとはほとんどが好評価である。
この人なら、あるいは──────。
「…家族が…家族が人質にとられているのです!返して欲しければ莫大な食料と金をよこせと言われて…」
「犯人は?」
「『暴食公』の親類、ブッデルです…」
「………」
ブッデル・ムッサ。
この貴族を表すのにいる言葉は──────『無能』、もしくは『屑』である。
道端を歩いていた老婆を、『ムカついたから』という理由で絞首刑に処し。
自分の『人の苦しむ姿が見たい』という楽しみのため、ばらまいた流行病を無償で治す医者を『病気をばらまいた張本人』として殺し。
大量の金と食料を領民に貢がせ、出さない、もしくは逆らえば一族郎党を強制的に殺し合わせ。
自分の支配から逃げ出そうとすれば、即座に処刑。
などなど、やってきた悪行を挙げれば星の数である。
民に圧制を強い、自分は安全圏から高みの見物をする。
こういうヤツらが、ライズの一番嫌いなタイプの人間であった。
今までそれらの悪行は『証拠が無い』で通されてきたが、それも今日限りの話だ。
「君の名前は?」
「ファムラ…と言います」
「では、ファムラ君、ロータス・リーという人物に伝えてくれ…『昼時には戻る』とな」
ライズは、そう言ってブッデルの領土の方を向くと、その場から比喩抜きで『掻き消えた』。
生み出したはずの米国すら恐れた『最も危険な兵士』が、今、動き出す。




