水月と黒犬
ふと、マックスは酒場に足を運ぶ。
何かがあるわけではない、酒ならば家にもある。だが、何故か立ち寄りたくなった、ただそれだけである。
「いらっしゃい」
酒場に入ると、妖艶な雰囲気の女主人が出迎えた。
さすがに夜遅くの時間帯のためか、人はまばらである。しかし、それでもにぎやかなグループがいたりとそれなりに繁盛しているのが分かった。
「…隣、よろしいですか?」
「ええ、いいですとも」
「おぉ!」
二人組の少女たちがカウンター席にて談笑しつつ、呑んでいるところに座るマックス。
正直、席なんて何処でも良かった。けれどもマックスは、何故か此処に座らなければいけない気がしていた。
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「そういえばさ、こうしてお前と二人で飲みに行ったよなー」
「ええ、たしか、少佐の目を盗んで行ったんでしたよね?」
ミスミとツキオは人のまばらな酒場で昔を懐かしみながら酒を酌み交わす。
「ああ、んでそこで隊長とばったり会ったんだよな…懐かしいねェー」
「少佐、お冷やばっかり飲んでましたね」
「そうそう!そんでそれ聞いたら隊長は『オレは酒が苦手なんだよ、文句あっか!』って言ってたっけ…」
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「なあ」
「なんです?」
ツキオがミスミに問いかける。
「あれ、あいつだよな…ほら、ドイツの時の…」
「……ッ!」
言われてみれば、確かにそうだ。
容姿と性別は全くの別人、しかし、纏う空気は大戦中のイギリス上陸戦の際に交戦したあの男のものである。
「失礼、一つ聞いても?」
「…ええ」
「『ロンドン橋』を知っていますか」
「ッ!」
死んでいたマックスの目に、光が灯るのをミスミは見逃さなかった。
間違い無い、あの男だ。
「やはり…あなたは『雷鳴公』…」
「だとしたら何だ?女王陛下も!国民たちも!この世界にはいない!これ以上なにをしろと言うんだッ!!」
マックスは吼える、己が従うべき人は大戦中に死に、自分は死んでこの世界に来てしまった。
此処には、自分が守るべきものなど一つもない。
「おい、アンタ…何勘違いしていやがる……?」
ツキオが怒りを瞳に込めてマックスに問い返す。
「そりゃあアンタの護るべきヤツらはもういねぇ…けどな!そいつ等から受け継いだモンがアンタにはあるはずだッ!」
「ッ……」
マックスは言葉に詰まる、しかし。
「…忘れたよ、すべてを無くした瞬間から!全部ッ!!」
一万ルド金貨をカウンターに叩きつけるマックス、そして、そのまま入り口までふらふらと歩いていく。
「お釣りは?」
「いらない…」
「そう」
ドアを開け、外へでるマックス。
その背には、知らず知らずの哀愁がこびり付いていた。
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「あ、お帰りなさ───うむっ!?」
まず、僕に来たのは半裸の主様からの濃厚なキス。
そして、あっという間に裸に剥かれ、主様も、キスをしつつ衣服を脱ぎ捨てた。
「う…んん…はぷ……んふ…んむ…」
「ん…んふ…」
きっと、主様は嫌なことがあったのだろう。
そういうとき、主様は決まって僕を抱く。
「ふ…ああ…っ」
「ん…ちゅう…れる…」
でも、それでも構わない。
僕が主様の慰みものになるとしても、主様のためになるならば、この身は惜しくはない。
「はひぃ!」
「ん…ん…こくっ…」
主様は口の中でしばらく脈打っていた僕の分身を口から放し、主様は仰向けになった僕の上に覆い被さる。
「…いいですよ、きてください」
「……」
僕は主様を心配させないために、微笑みかける。
それを見た主様は少し泣きそうな顔をした後、腰を落とした。
やっちまったか…?




