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主を無くした黒犬
「ご苦労様、それじゃあ今回の報酬ね」
「…ええ」
心ここに在らずといった表情でカウンターに置かれた千ルド銀貨三枚と、一万ルド金貨五枚を受け取る少女がいた。
見事な褐色の肌と黒い髪、引き締まった四肢にどこか忍者装束を思わせる服をまとわせている。
しかし、ひときわ目を引くのがその頭についた犬を思わせる耳だった。
少女はふらふらと受付を後にする。
少女の名はマクシミリアン・マーズ。
大戦時の通称は、『雷鳴公』マックス。
戦死した筈の英国軍に所属していた兵士であり、“元”男であり、黒雷犬と呼ばれる種族の一人である。
少女は夜の街をふらふらと歩いていく。まるで無念のまま死んでいった幽霊ように、燃え尽きても、未だにくすぶり続ける火のように……。




