黒腕の乙女ー3
「急げー!間に合わなくなっても知らんぞー!」
ギデオンが、必死な顔で呪術師たちに檄を飛ばす。
呪術師たちも鬼気迫る表情で異界化結界を張り続ける。
無理もない、この結界を張り終えなければこの町が良くて更地、最悪クレーターに変わってしまうのだ。
それほどまでに、この町に来た客人たちの持つ暴力は大きい。
「三番結界、張り終えました!」
「五番結界、完了!」
「二番結界、完了!」
「よし、後は一番結界のみだな…そっちはどうなっている?!」
「内部構築を完了…一番結界、完了です!」
「ま、間に合ったか…」
ギデオン含め、その場にいた呪術師たちが皆安心した表情になり、抱き合うものまでいた。
「明日、どうなるか…」
ギデオンは、空を物憂げに見つめる。
その瞳には、ただただ真上に上がった太陽の光が反射するだけだった。
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「少佐もこちらに来ていたのですね」
「まあな…しかし水澄、お前はあの時確かに戦死したはずだ、それに、月雄も終戦後の数年後に病死している」
「ええ、確かに私は沖縄での戦闘で戦死しました…あの時のことは昨日のように覚えていますよ、ですが少佐に合う一か月前、死んだはずの私が見たのは鬱蒼と茂る森と、水面に映る、女になってしまった自分の顔でした…」
「……」
テッシンは思案する、一か月前といえば自分が飛ばされてきたのと同じタイミングだ、だがしかし、ミスミは戦時中から、ツキオは戦後から、テッシンはその数十年後から。
まったく別々の、違う時代から飛ばされてきたのだ。まだ推測の域は出ないが、この分だと、ほかのものもいるのだろう。
そして、何らかの要因でこちらの世界へ来てしまったというわけである。
「やはり、考えるには材料が足りない…」
「ええ、しかし、手掛かりならばありますよ」
「何だって!?それは本当かい!?」
テッシンは、そのまま飛び上がらんとばかりに席を立つ。
「……あ」
「………」
周囲の視線が一斉にこちらに向く。今、カフェに彼らはいるのだが昼時であるが故に人気も多い。
テッシンはそのまま静かに席に座り、それを見てミスミは苦笑した。




