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異世界拳風伝/STORMBRINGER  作者: 岬式人
燃え尽きて、生まれ変わって
46/81

所有者として

 「はあッ…はあッ…!」

 深い森の奥。さらさらと水の流れる小川のそばで、メルが膝をつく。

「やっぱり…だめか…」

 汗を顔中に浮かべ、忌々しげに歯噛みするメル。


 原因は、彼女の”眼”にあった。

 

 恩人のそばにいた少女は、あの人に教えを乞うて強くなった。

 姉は、あの人に負けて以来、自分を鍛えるようにした。


 最近、彼女の周りの者たちが強さを上げている中、自分一人だけが弱いままなのだ。

 彼女は考えた、なぜ自分だけが弱いのか。それは、この”眼”を制御できていないからなのではと考え、制御できるようにここで修業を始めたのだが――――――――――――――。

 「―――――――――どうして、使えないの…ッ!」


 使えるのは今まで使っていた真贋判定能力のみで、一向に”眼”を使役できず涙ぐむメル。

 彼女は理解していた、この”眼”にはまだ先があると。

 だがしかし、どうしてもその先に行けない。

 「強く…ならないと…!」

 彼の為に強くならねば…。強く――――――――――。

 

 「今のお前では無理だな」

 「え…?」

 突然、木陰から声がかかる。

 そこにいたのは、恩人である、テッシンその人だった。

 

 「フドウ…様…?」

 今まで優しかった恩人の変貌に、メルは戸惑っていた。

 「お前は、何のために強くなりたい?」

 「フドウ様を守るために、です!」

 テッシンは、その言葉にため息をつく。 


 「だったら無理だ、一生かかってもお前は強くなれない」

 「どうして…ですか…?どうしてッ!」

 メルは涙を流して、震える声でテッシンに吼える。

 ここで引けば、大切な人に、自分を否定されたのを認めたような気がして。


 「お前に大切なものを捨てる覚悟があるか?命を捨てる覚悟は?」

 「…ッ!」

 それを問われたとき、メルは言葉に詰まった。

 「答えが出るまで待ってやる」

 

 そう言って、テッシンは近くの切り株に座り込む。

 

 メルの中で、白黒二色の感情が渦を巻いて混ざりあう。

 訳が分からなかった、なぜそんなことを聞くのか。

 いや、頭で理解していても、感情がそれを許さなかったのだ。

 この恩人は、自分を試している。


 何かを捨てれば、力が手に入る。

 しかし、それは喪失を意味する。

 

 --- 


 しばらくうつむいた後、メルは、力強い、まっすぐな瞳でテッシンの方を向く。

 「私は………力を取ります!守るべきものを捨てないままにッ!」

 その答えを聞き、テッシンの顔に笑みが浮かぶ。

 「ならばよしッ!」

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