異世界に立つー2
駆けだし冒険者、ルゥ・チェインは戦慄と安堵を行ったり来たりしていた。
それというのも―――――――
「シィッ!」
「ゲジュッ」「アギッ」「ゲべッ」
空から落ちてきた見知らぬ人物がゴブリンたちを凶悪な笑顔を浮かべて殲滅しているからである。
それも剣などを使わず素手で、だ。
「……」
とはいえルゥ自身も冒険者の端くれ、自分に向かってきたゴブリンを手に持った細剣で迎撃していく。
@@@
ゴブリン掃除が終わり、ルゥはゴブリンの死体から換金できる部位をはぎ取っていく。
その横で、鉄心は己の掌を見つめていた。
「………」
同じだ、この体の感覚は若い頃の自分と…。
「あの……」
「!」
「わぁっ!お…落ち着いて!敵対するつもりはありません!」
「何…?」
突然声をかけられ、構える鉄心。
しかし、声の主に敵意はないと伝えられ、『構え』のみを解く。
「えっと…あなたは?」
「二度も言うつもりはない」
「えぇ!?」
「冗談だ」
ルゥがずっこける。その光景を見て、鉄心は家族のことを思い出す。
---------
≪なー、親父≫
≪何だ?≫
≪鳥、拾った≫
≪ほう、今日の晩飯だな≫
≪えぇ!?≫
≪冗談だ≫
---------
「あいつらは大丈夫だろうか…」
「ふぇ?」
「いいや、何でもな────」
不意に、鉄心は自分の意識が遠くなるのを感じ、そしてそのまま鉄心の意識は闇の底へと沈んでいった。