偶然って怖いよね byテッシン
「シャァッ!」
顔面に刃を突き立てんと、超低空姿勢からギデオンがダガーを振り下ろす。
「フッ!」
それをさばき、小手調べに、3、4発の拳を放つ。ギデオンはひらり、ひらりとそれを避け、後方へ下がった。
「チッ!」
「雌雄駆鑼馬!」
それを追いかけ、テッシンが、暴風と見まごうほどの蹴りの嵐を放つ。避けられないと思ったのか、ギデオンは、四肢で頭と胴体をガードする。
直後、強烈な衝撃がギデオンを襲う。
「クソが…」
体勢を立て直したギデオンは悪態をつき、忌々しそうにテッシンを睨めつける。
「どうした?ヤる気がないのか?」
「言ってくれるじゃねェの!」
ギデオンは、テッシンの煽りに反応して、マントを翻して突撃する。
「嗚駿卷峩通!」
テッシンは、爆速の前蹴りを顔面に叩き込もうとする。
「バーカ」
しかし、それを避け、テッシンの首を刈らんとダガーをふるう。
「ハッ!」
テッシンはそれに合わせて、前蹴りの軌道から、踵落としに移行する。
ダガーと鋼鉄の義肢がぶつかり合い、火花を散らす。
「ダッ!」
「シェイッ!」
鍔迫り合いの状態から、両者が距離を置く。
「……こんなものか?」
「ア?」
「こんなものか?と、聞いたんだ、二度言わなきゃあわからんのか?」
「…ブッコロス!」
テッシンの落胆した声に、ギデオンは青筋を浮かべ、姿勢を深く落とす。まるで、獣が飛びかかる寸前のように。
そして、観客たちの視界からギデオンが消える。そして、訓練所内に響き渡る何かの跳ねまわる音。
その正体は、本気の速度を出したギデオンである。
ギデオンには、『新人潰し』という異名の他に、もう一つの異名があった。
『消失』のギデオン。
その異名には、二つの意味があるのだが、ここでは表の意味を説明しよう。
超速度によって、その名の通り視界から『消え失せる』というもので、これをとらえられるのは3人のみ『であった』。
「死ねやゴミカスがァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
「遅い」
テッシンは、後ろから飛びかかるギデオンの顔面を掴み上げる。
「なっ…!」
(ねえねえ、今どんな気持ち?本気でやったらそれ以上で叩き潰されてどんな気持ち?)
驚愕に顔をゆがめるギデオンと、内心でNDKするテッシン。
「戦法・七十八番、緋弥帰波蝕ッ!」
捻りを加えたゲンコツが振り下ろされる。
ドラム缶と、その中に、いっぱいに詰め込まれたニトログリセリン。
それにスレッジハンマーを叩き込んだような爆音が訓練所内に響いた。
@@@
「大丈夫か?」
「ああ、クソッ、何とかな…それにしても、ここどこだよ」
「俺に聞かんでくれ」
テッシンとギデオンがいるのは、水道の流れる謎の場所。
そして、その上は、訓練所だった。
「何じゃこりゃあ…」
アベルの胃が、静かに痛み出した。




