手合わせ
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「た、大変ですうゥゥゥ!」
息せききって執務室に飛びこんできた受付嬢に驚いて若きギルド長、アベルがひっくり返りそうになる。
「おい、どうしたフェイ!落ち着け…またヤツがやらかしたのか!?」
アベルはギルドにいる問題児の一人がまた問題を起こしたのかと焦る。
「いえ、テッシンさんの事で報告が…」
「ああ、何だ……あいつがどうかしたか?」
とりあえず、問題児ではなくてほっとしたアベルは机に置いてあったカップの中身を口に含む。
「えと…引き取った元奴隷の一人と立ち会いをすると…」
「ブふゥゥゥゥゥゥゥ---------!」
アベルは、口に含んだ紅茶を思い切りスプラッシュさせた。
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「はあ………」
「何ため息ついて─────…ッ!」
テッシンはため息をついたかと思えばディーフォとの距離を一瞬で詰め、右ストレートを振るうが、どうにか反応したディーフォはそれを避けてその勢いで距離を離す。
「正面じゃ勝てねーからって不意打ちか?」
「試しただけだが…杞憂だったようだ」
ディーフォの言葉にも耳を貸さずテッシンは構えをとる。
『流河山水の構え』。
その構えは河を流れ、やがて山へと帰る水の如く、どんな状況にも対応可能な応火式戦術の構えが一つ。
構えをとるテッシンに対して、ディーフォはニヤリと笑う。
「イイねぇ…アツくなってきやがったッ!」
そういって、ディーフォの右腕が荒々しい竜、もしくは鍛え上げられた剣を思わせる異形と化す。
「ほら、きなよ?ヘタレ君」
「レディーファーストだ、譲ってやる」
「…言ってくれるじゃねぇかッ!」
ディーフォは異形化した腕をテッシンに振り下ろす。当たればただでは済まない一撃、しかし───────。
「戦法・八十八番、夜行幽星」
テッシンは、その一撃をまるで幽霊のように避け、ディーフォの後ろへ回り込んだ。
「なッ……!」
「ほれ」
後ろへ回り込んだテッシンは、ディーフォのたわわな胸をわしづかむ。
「ぴいいいいいいいいいいッ!?」
突然の感覚に奇声をあげるディーフォ。顔を真っ赤にしながらも振りほどこうとするあたりはさすがだが、またしても幽霊のように避けられてしまった。
「な、な、な、何しやがる!」
「何のことかな?」
「クソがアアアアアアアアアアア!」
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「ぜー…はー…」
「もう終わりか?」
ディーフォは全身を傷だらけにし、肩で息をする。対して、テッシンは無傷で、退屈そうにあくびをしていた。
「この野郎…──────────」
ボディへの一撃。
一瞬、そして、一撃で勝負が決まった。
「しょ、勝者!テッシン・フドウ!」
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(それにしても、何で今まで使えなかった技が使えるようになったんだ?)
テッシンは疑問に思いギルドカードを見て得心する。
レベルが1から6へ上がっていたのだ。
(なるほど、技には習得…いや、使えるようになるレベルというのがあって、そこまでくるとその技が使えるようになるというワケか…)
『流河山水の構え』…全ステータスを10%アップ




