大往生ーさらば男よー
「親父ッ!」
「うるさい、喚くな」
真っ白な天井と薬品のにおい、そして響く無機質な心電図の音と呼吸器の音。
ある病室の一角で、ある一人の男の人生が終わろうとしていた。
「ここは病院だ、静かにしろ」
「あんた…なんでそんなに平然としていられるんだ!」
「だから静かにしろ…」
男は衰弱しきり、もはや指一本動かすことすら叶わなかった。
「兄さん……もう、いいでしょう…」
「けど!」
「お義父さん…」
美月は嫁いだ身ではあったが分かってしまった、もう、時間は残されていないと。
「ああ、そうだ…お前らに伝えとくことがある、一回しか言わねえからよく聞いとけ」
男は自分の寝ているベッドを取り囲む家族たち一人ひとりに目を向ける。
これが、本当に最後となるだろう。
「銀士郎、お前は長男坊だ、下の奴らが困ってたら助けてやれ…鬨乃、怖がらず前を向け…戒、応火式戦術はお前に任せる…美月さん、銀士郎のアホを支えてやってくれ…」
「親父!」
「お父様!」
「父さん!」
「お義父さん…」
「じーちゃん…」
「仁か…妹を頼んだ」
「じーちゃん!」
「は、はは…こんなに心配されていたんだなァ…俺は…幸せ者だ―――――――――――」
鉄面皮に笑みが浮かぶ、そのとたんに心電図がフラットになる。医師が駆け付け蘇生を試みる。が、しかし、その甲斐も虚しく。
「親父イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」
不動鉄心、百四十五歳。ここに眠る