理由と信念
「フッ!!ェイヤァア!」
「しッ!」
テッシンが拳を放ち、それを避けてルゥが細剣を振るう。
現在、彼らは組み手を行っていた。
何故かと言えば、テッシンいわく『違和感の正体を探るため』との事である。
「……やはりな」
「え?」
「ルゥ、組み手はここまでだ」
突然にテッシンは構えを解き、ルゥに近づく。それを見て、ルゥはきょとんとした顔になった。
「でも私はまだ…」
「違う、俺が言いたいのはお前の動きの事だ、ルゥ、お前はその剣を使いこなして無いんじゃあないのか?」
「ッ!………」
沈黙、しかし、その沈黙が答えだった。
「自分でも気づいていた、か…………教えてくれ、その剣を無理やりでも使っている理由を」
「………」
「あー…嫌ならいいんだが…「分かりました」……すまんな」
ルゥはとつとつと話し始めた、何故慣れない細剣を使うのかを、それは冒険者になった理由と関係していた…。
@@@
ルゥ・チェインはとある王家の八人の子供の内、一番下の妹に当たる存在であった。
しかも、妾の子ということもあり、使用人たちには家族のいないところでは軽んじられ、雑用などを押し付けられることもあった。
しかし、兄弟姉妹たちや親達からはそういった扱いを受けた訳ではなく、いろいろ助けてもらい、様々な事を教えてもらった。
ルゥは子供の頃、冒険者であった自分の母から様々な冒険譚を聞いて育った。
火を吐息のように吐き出す竜。
如何なるものも斬り裂く剣に変わる精霊。
忘れられた墓を独りきりで守る死神。
それを聞く度に、その場所へ行きたいという思いが募っていった。
ある日、それを家族に話した。最初は笑われたが、彼女の真剣な眼差しを見て笑うのを止めて問いただした────『ロマンと同じ位に危険も有る』と。
彼女は答えた────『それを覚悟の上である』と。
その数日後、彼女は勘当された。しかし、彼女にはこの意味が分かっていた。
『達者でやれよ』
家族たちは何も言わなかった。だがその笑顔は、その瞳は、信じて送り出す色だった。
@@@
「そうだったのか……」
「まあ、今はへっぽこ冒険者なんて呼ばれてますけどね」
「ふむ……ならば、俺の下で剣を学んでみないか?」
「え…?」
「なあに、多少は剣の覚えがある、お前はそこから技術を盗めばいい、それじゃあ早速明日から────」
「あ…」
「──────ん?」
「ありがとうございます!」
「あいよ」




