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彼女の残した跡

リリカはテクテクと坂を下る。

気付けば夕方で辺りは曇ったオレンジ色に包まれていた。


自分の影を見つめながらリリカは少し足早に下ってゆく。


駅のホームに着き、掲示板を眺めると次の電車まであと8分もある。

イヤホンを取り出し誰にも聞こえない細い鼻歌を唄う。

正明にぶちまけたお陰で少し気持ちが落ち着いたらしい。


イヤホンから聞こえてくるlovesongも耳障りに思わない。


「あー、帰ったら修羅場だなー」



リリカは爪を鳴らしながら電車に乗り込む。

窓から見えたどこかの2人が幸せそうな顔でサヨナラを言っている。


何故か無性に心が締め付けられた。




駅に着くと尚也が待っていた。


「待ってたよ、ごめんね。」


「うん、とりあえず帰ろうよ」


尚也から差し出された手にわざと気付かない振りをする。


イヤホンから流れてた応援歌は途中で途切れた。

心がザワついてるのと、妙に落ち着いた気持ちを半分抱えて家路に向う。


途中コンビニに寄った。

タバコ1箱とコーヒーを下げてリリカが出てくる。


尚也とリリカの間に会話はない。

尚也は難しい顔をしながらリリカを見つめ笑った。


家に着くと静かな部屋にさっきまで居た彼女の香りがリリカを刺す。

「で、どうなったの?」


自分でもビックリする程冷静に問いかける。

彼女がリリカを泣かせれない程に泣きわめいたのと、正明に吐いたからだろう。

リリカはそんな事を考えていた。


「話、したよ。」


「あたしはどうしたらいい?」


「居て欲しい。」

尚也はリリカを抱き寄せながら呟いた。


「うん。」


リリカは笑う。

リリカの体に尚也の少し痛い位の腕の強さと、彼女の香りがおおった。


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