小さな部屋探し
あぁ、またこの1日が始まる。
彼と出会ったのは15の時で。
気付けば何十年も居たのに。
優しい彼と出会ったのは地元の飲み屋でした。
いつかの誰かに振られた腹いせに、飲んで持ち帰られた彼と恋に落ちる。
「東京帰っちゃうの?」
「俺は仕事もあるからね、そろそろ出張だけじゃ延ばせないよ」
ズンっと心が泣き喚く。
また、この人にも捨てられる。
何も言い出せずに居たら優しい彼がいつもの定位置で頬埋め、こすりつけながら笑う
「一緒に来ちゃえばいいのに」
嬉しくて抱きついた、夏の蒸暑い中クーラーのキンキンきいたあの部屋が幸せであったかくなった。
リリカは昔から恋に恋する女の子でしたから、今までの彼も安心してリリカが重くのしかかり振られる事を繰り返す。
あの、クーラーのきいた幸せな部屋は今はもう取り戻せないのだろう。
1.
「元気だった?」
何年ぶりに会った正明はあの頃と変わらず元気な様子だった。
「どうせやな事でもあったんだろう?」
正明が屈託なく笑いながらリリカの隣に座る
正明の部屋は狭く独特の香水の匂いが微かにする。
パソコンを打ち始めながら横目にリリカを見た。
正明はどちらかと言うと気分の起伏が激しく楽しそうな時と不機嫌な時の差がハッキリしている。
整った中性的な顔立ちをして寄ってくるもの来るもの拒まずなサイテーな野郎だ。
リリカとはなんの気なしに話してくる事が男と女の壁を少し超えて楽しいのだろう。
リリカも自分の事をぶちまけれる感じが正明とは気があったのかもしれない。
今日はリリカがふくれてきたものだから、面白可笑しく思ったのだろう。
「今日、女が来たの。」
リリカがそっと耳に髪をかけながら話し出した。
「へぇ~」
正明が笑いを抑えるようにパソコンのキーを叩く音が部屋に流れる。
「その女がね泣くの、尚也と幸せになってって。けど、合鍵開けて入って来たのよ。
私と尚也と住み始めた初日に!
尚也は仕事で居なかったけどさ」
正明は大笑いしながら一旦キーを止めた。
優しくリリカの髪を指先であてがう
その日リリカは尚也と住む為に大きなキャリーケースいっぱいの荷物1つで彼の家に向かった。
尚也は仕事が忙しくリリカを迎えた後仕事に向かったのだという。
「なんでかなー
私に彼女、私が来たことは秘密にしてなんていうのよ?
絶対私が怒って別れると思ってるんだわ
合鍵は持って帰ったし!」
正明は笑いながら髪に指を巻き付けてはクルクルと遊びながらリリカの話を聞いている。
鼻をすすりながら、リリカの鼻先に正明の家の香水がつん、とさす。
ゆっくりと窓からさす明かりが暖かくてその光の先を見つめながらリリカは親指て人差し指をこすり合わせる。
「尚也くんには、話したの?」
「話したわ。初めて人が青くなるのを見たのよ。彼女とちゃんとお話してきてって私、冷静に伝えたわ」
正明もまた、クルクルと髪をまわす。
リリカはこすり合わせてた指先が爪と爪を弾いて小さな音を鳴らす。
リリカが不安になるとすぐ出る癖だ。
「ふーん、それでお前はどうするの?」
正明は鳴る爪の音を聞きながら笑う
「どうもしないわよ。あたしは彼の彼女だからお家で待ってるわ、今日はお話聞いてくれてありがとう」
正明が含み笑いをしながら立ち上がりインスタントコーヒーの袋を開け始める。
「いいよ、もう帰るから。」
リリカは事あるごとに尚也との出来事を正明に話していた。
リリカと正明に体の関係が過去にあったかといえばあったが、お互い気にしてないし、
むしろあったからこそそれ以降関係はなく、友情が勝っているという不思議な関係だった。
正明はインスタントコーヒーを一杯分だけ用意しながらまた、含み笑いをする。
リリカは吐き出して少しスッキリした顔をしながらムッと、笑う正明を睨みつけ、二人で見つめながら笑った。
「ありがとう、帰るわ」
カバンを右手にかけ、リリカが立ち上がる。
「また、連絡しておいで」
笑う正明に指先で目の下を下げ舌を少し出してリリカが、言葉ないありがとうを伝え正明の家を出た。




