4違和感の秘密
可愛い!すっごい美少年!
ダメっ私!小学生にときめいてどうする!内心あたふたしつつ平静を装い答える。
「そうよ」
「へぇ〜何年前の?」
「八年と2ヶ月くらい?」
目の前の少年が驚いて目を丸くする。嘘だろと顔が言っている。それも仕方ない。涼風は既に大学三年、成人しているが小柄で童顔のせいか幼く見えるらしく常に年齢確認を求められる。ほとんど化粧っけはなく、実際この少年とたいして身長は変わらない。涼風のほうがほんの数センチ大きいだけだ。すぐに数ヶ月もしないうちに追い抜かれるのは間違いない。
「信じてないでしょ……」
ふてくされたように呟けば
「信じにくいね。何か身分証明証見せてよ」
相手は小学生だしいつもの慣れたことなので、涼風は警戒することなく学生証と運転免許証を出した。
「おりのすずかぜ?」
「織野涼風と書いて、おのすずか」
「ちょっと待て!あり得ない!何の偽造だ?どうやって作った?よく出来てるけど……」
そう言いながら裏返したり透かしたり斜めにしてはひっくり返す。
「何が?そんな犯罪犯すわけないでしょ。ちゃんと運転免許証センターで発行してもらったわ。学生証だって大学の発行だし…普通の女の子が何のためにそんなことするの?」
「だって生年月日……平成6年9月16日生まれって……現在二歳のはずだ。誕生日がきて三歳だよ」
「どうゆうこと?」
「今現在、今日は平成9年5月2日なんだけど…涼風は……」
「ちょっと待って!今日は平成27年5月2日のはず……どうゆうこと?」
な、何 ?さっきからの違和感ってこのこと?何かが変だわ……涼風の不安がどんどん膨らんでいく。
しっかりして!落ち着いて!確かめるの!自分で自分に言い聞かせる。
「間違いないよ。ほら」
と少年が鞄の中からプリントを出す。保護者宛の配布物、その右上を見ると発行日付が平成9年とはっきり記載されていた。肩から斜め掛けの懐かしい紺色の鞄は涼風の在学中に手持ちや肩掛けやリュックにもなる型に変更されたはず。ということは、涼風の知る現在に涼風の後輩が涼風が使っていたのと同じ型の鞄を持っているはずがなかった。
がっくりとその場に座り込んだ涼風を心配そうに少年が覗き込む。
ぐるぐるぐるぐる言葉にもならない、何か掴みかけてもそのまま霧散するようにもやもやして掴み所がない……
どのくらいそうしていただろう。