3出逢い
登る時に比べたら降りるのは難なく、ほどなく麓の神社横まで降りて来た。神社前には市内循環バスが通っているが、涼風は気分も良かったので、このまま公園を突っ切って駅まで歩くことにした。
小学校の頃、何かといえばよくこの公園に来た。
遠足、校外学習、写生大会、三年生の頃には毎週お弁当持参でやって来た。ひたすらだだっ広く周辺には色々あるので学習教材には事欠かない。おもいっきり走り回れる。小学生には最高の環境と言いたいところだが、ひとつだけ難点がある。
鹿。鹿、鹿、鹿、鹿鹿鹿鹿鹿鹿鹿鹿鹿鹿鹿鹿鹿……………
そして、糞。
兎に角そこいらじゅうに落ちている。迂闊に転ぶことも出来ない。ま、転ぶヤツもいるが……
自分よりも大きな存在に囲まれ追いかけられ、中には弁当を盗られなすすべもなく呆然と友と共に眺めることもあった。成長と共に経験を積み、膝に弁当・右手に箸・左手に蓋を持ち一口ごとに塞ぎながら全方向に神経を向け身体の向きを変える。友との連携も大事だ。
全く言葉も何も通じない自分達よりも大きな存在、しかも複数!集団には集団だ。こんなことを色々乗り越えているうちに皆仲良くなり絆も深まったような気がする。
気付けば鹿は風景のひとつに溶け込んで、さして気にする存在でもなくなっている。もちろんこの付近に暮らす友人宅に行けば、門の開閉は厳重にチェックするが……
近頃は鹿に遭遇しても被害にあうこともないし颯爽と歩く。
駅に着き地下への階段を降りたがリュックの中に入れたはずのICカードが見つからない。仕方なく小銭入れを出して切符を買いそのまま改札を通る。あれっ?と何かが引っかかったが出発時間が迫っていたので急いで電車に乗った。
最初の違和感はだだっ広い遺跡にさしかかった時
あれ、補修工事なんかしてたっけ?
ま、いいか…
細かいことにあまり拘らないのは良いのか悪いのかよくわからないが……すぐに涼風の小学校の最寄り駅に着いた。
あれ?
また、なんか違和感…なんだろう?
何かが変とは思いつつ小学校への道を歩く。こんなところに銀行あったっけ?こんな名前知らないなぁ〜
それでも学校までの道のりはそんなに変わらない。見慣れた住宅街だし、フェンスから覗く運動場や校舎はそのままだった。
懐かしいなぁ〜
「お姉さん、卒業生?」
すぐ横から声をかけられ振り向くと、小学生にしてはなんともませた感じの異常に整った顔立ちの少年が立っていた。