2御神木
はぁ〜っ………
大きく息を吐き出した。自分の中のぐにゃぐにゃもやもやした気持ちも一緒に吐き出すように。
なんだか最近あまりいいことがなくて、やることなすことうまくいかない。もちろん全てが悪いわけではない。ちゃんとうまくいってることだってある。でも、なんて言うんだろう……
順調にいってるつもりがある日突然どんでん返し!みたいな?
例えばボーイフレンド。それなりに仲のいい友達は多い。遊びに行く時だって男の子もたいてい何人か集まって楽しく過ごす。中にはそれなりにいい雰囲気になってる気がするのに、絶対それ以上進展しない。告白してきた人だっている。でも何故かうやむやになかったことになっているのだ。おかげで生まれてこのかた彼氏なんて出来たことがない。人気がないわけではない。友達止まりなだけだ。
いいなぁ〜って思ってたのに………
大学のサークル交流で知り合った二つ年上の人。今度は本当にうまくいきそうな感じだったのに、ちょっと色々たて込んで忙しくしている間に、ほんのちょっとの間だったというのに彼の腕には可愛い彼女がぶら下がっていた。
私だって………
私だって、彼氏が欲しい!
一人でいい!たった一人……
私の運命の人!その一人に逢わせてっ!!
はぁ〜〜〜
私、何お願いしてるの?御神木様に向かって………
なんか無性に虚しくなってきた………
涼風は大きく首を振る。全てを振り払うように。
そして目の前の巨木を見上げた。天に向かって枝を広げ、隙間から青い空が覗く。葉っぱに反射してキラキラした光がほんのちょっとまぶしい。
踏みしめる大地には大きな根を張り巡らしてどっしり構えている。
涼風はもう一度力を込めてこの巨木に抱きついた。おもいっきり手を伸ばしても幹の半分にも届かない。涼風なんて小さな小さな存在だ。
大きく息を吸い最後にもう一度エネルギーをもらうと、涼風は静かに手を離し下山した。
背後から涼風の大好きな巨木が頑張ってと声援を送ってくれているような気がした。