江東常盤の独白
初めまして。江東常盤です。
僕は医者の父と専業主婦の母、七歳上の長男紫苑、三歳上の次男浅葱、二歳下の妹咲希と四人兄妹の三番目三男という何とも中途半端な立ち位置にいる。
またこの兄達がどちらも優秀で目立つし、妹は末っ子だからかちゃきちゃきのおしゃまさんで物凄くしっかりちゃっかりしている。末っ子一人娘だがお姫様要素はない。全員が常に自己主張している感じ…と言えば解ってもらえるだろうか?うっかりすると埋もれて忘れられた存在となってしまう。実の親からでさえだ。
僕は張り合うのを止めた。無駄なことはしない。大人しく気配を消して好きなことに没頭する。
幸いなことに父は医者だが後継ぎに拘らず子供達に将来の進路を強制することはなかった。好きな方向に進めば良いと好きなことをさせてくれた。
なので僕は趣味の機械いじりをいつもやっていたと思う。幼稚園の頃から壊れた電化製品をもらっては分解していた。最初の頃は元に戻せなくてよく泣いていたが、そのうちちゃんと組み立てられるようになったし修理も出来るようになった。
そうそう、もう一人紹介しておく。長男の親友朱鳥絢汰だ。近所に住んでいて、僕が生まれる前からわが家に頻繁に出入りしている。だからか、非常に不本意だが兄がもう一人いると思ってくれたら良いような存在だろうか。
この男、非常に複雑な性格をしている。一言で言ってわからない!長い付き合いになるが全く読めない。傍目にはハンサムで良い男だ。頭も良いし、爽やかな雰囲気を醸し出している。が、見た目に騙されちゃいけない典型的な例だ。
何と説明していいかわからないが、説明出来ないが、恐い!
後で大蛇がどくろを巻いているというか、黒いオーラが漂っているというか………
見えないよ。見えないけど、そんな感じっていうか雰囲気なんだよ〜〜〜(涙)
もう逆らえない!従うしかない。理不尽でも何でも、僕は下僕に成り下がった。非常に不本意ながら。
そして今日、帰宅したらリビングで母と絢汰がにこやかにお茶を飲んでいた。ローテーブルの上には、これまた近所の織野ファミリーとバーベキューをした時の写真が広げてある。
「もう本当に涼風ちゃんが可愛くて可愛くて、家に三人もいるんだから誰かのお嫁さんになってくれないかしら〜」
い、ま、今すぐ母の口を塞ぐもの!ひきつる僕には頓着せず死刑宣告にも等しい言葉が下された。
「ねぇ、常盤、あなたはどう?年齢的にもぴったりだと思うの〜ちょっと頑張ってみない?」
家一軒、一瞬で凍った。吹き荒ぶブリザードに気付かないか母よ!!!!!
お、終わった。詰んだ。
最後の抵抗と全否定して自室へと逃げ込んだが、それはほんの一瞬束の間の猶予に過ぎない。
ほどなくやって来た絢汰に恐ろしい指令を下された。
そして一言。
「大丈夫だ」
だ、大丈夫だ〜?何がだ?何が大丈夫だと言うんだ?
「お前は非常に優秀だ。俺が保証しよう。それにもし万が一へまをしたとしても安心しろ。お前には非常に優秀な弁護士が二人ついている」
それの、それの一体何処に安心要素があるというんだ〜〜〜〜!!!!
何をさせられたかはご想像にお任せいたします。
ふりがな追加いたしました。