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絢汰の18年

今までにない多数のアクセスをいただきました。

ありがとうございます。

そのお礼の番外編でございます。

 GWが終わって絢汰の通学路が変わった。多少曲がり角が変わっただけで通学時間はたいして変わらない。小学生が通り道をちょっと変更するくらいごく普通の当たり前のことで誰もさして気にも留めなかった。


 ある日曜の朝、駅までの途上空き地だった場所に人が集まって青竹を立てていた。

 その日絢汰は友達と科学館へ行く約束をしていたが、そのまま待ち合わせ場所まで行くと急用が出来たと告げ空き地まで戻った。

 そこでは地鎮祭が行われていた。まだ若い夫婦と赤ちゃん、幼い少女の家族四人が神妙な顔をして立っていた。


 その後もその家族は休みの度にちょくちょく建築状況を見にやって来ていた。絢汰が毎回出くわすわけではなかったが、かなりの高確率で遭遇していたと思う。

 幼い少女は元気いっぱいで好奇心旺盛でちっともじっとしていない。建築現場は危なっかしくて父親が後をついて回っていた。


 工事は順調に進み一家が引っ越して来たが、塀が作られ視界が遮られた。塀の内側からは元気な声が聞こえて、時々近所の公園で遊んでいる姿を見かけた。それだけで絢汰は嬉しかった。


 春になると少女は絢汰が毎日通っていた小学校の隣の幼稚園に通い始めた。が、残念なことに絢汰は小学校を卒業して幼稚園とは反対方向の中学校に通うことになった。

 通う方向は違うし通学時間もずれてしまい姿を見かけることが減ってしまった。

 土日も家族で外出することが多いようだったが、それでも時々近所の公園で遭遇した。

 だがしかし当然園行事は把握していたので、ボランティアはもちろん、運動会等紛れ込める行事は懐かしい先生を訪ねるという大義名分のもと足繁く通った。


 三年経ちそれぞれ高校小学校に進学したが場所はそれぞれ隣にスライドしただけなので状況はたいして変わらない。

 問題はさらにその三年後だった。もちろん問題に思っていたのは絢汰だけだが。

 大学進学だった。

 要領良く何でも効率良く立ち回る絢汰は当然成績も良い。塾にも行かず全国模試でも上位の成績だった。そうなると回りの期待も高まる。国内最高学府への進学を強く薦められどうしたものかと考える。回りから見ればさして物事にこだわりも執着もなく淡々としている。進路についても絶対的なこだわりはないし、いずれ父親の後継となるが、それまでは自由にやりたいことをすれば良いと言われていた。


 絢汰にとって自宅から離れるという選択肢は無い。全然全くこれっぽっちも考えていない。こだわりといえば唯一それくらいだ。

 絢汰が大学で離れてしまったら、その間に少女涼風は小学校高学年から中学生になってしまう。

 あれだけの美少女。ませたクソガキが手を出したらどうしてくれる!ガキだけじゃない。世の中変態ロリコンは山ほどいる。犯罪にでも巻き込まれたら大変だ。

 自分のことは棚上げして色々対策を考えていた。もともと友人知人は多い。が、その上に学校関係は同級生はもちろん、先輩後輩上下の繋がりも強く人脈 だけはしっかり意図的に抜かりなく繋いでいる。涼風の同学年とその上下数学年は特に分厚く念入りに態勢を調えていた。


 そうやって色々考え調えていく中で法律知識の必要性を感じた彼はとりあえず法学部に行くことにした。いちいち弁護士に相談するより自分で調べる方が早いし効率的で、何より情報漏洩を防ぎやすい。たとえ守秘義務があったとしても人を介する分何があるかわからない。自分の手に負えない案件を専門分野で秀でた者に相談すれば良い。いずれ父親の仕事を手伝うとしても継ぐとしても、その資格は無駄にはならない。むしろ役立つだろう。

 というか………そんなぎりぎりの危ないことをやるつもりか?と突っ込みたいくらいだが、幸か不幸かまだ誰も気付いていなかった。


 そんな訳で、絢汰は自宅から通える国立大法学部に合格し進学すると在学中に司法試験に受かり、色々なことを同時進行しつつ友人と会社まで立ち上げた。


 絢汰の才能のひとつは並外れた記憶力かもしれない。一度目にしたものは瞬時に記憶される。本などパラパラめくるだけで一冊丸暗記できた。さすがに六法全書はもう少し時間がかかったが…………


 それが株の売買や投資におおいに役立った。小学生の頃祖父が最初の元本と共に株の売買を教えてくれたので、それを元手に順調どころか………物凄く稼いで投資も行い………かなりの財産を作り上げていた。

 涼風との出合いと未来の情報がかなり関与していることは否定できないが、元々の絢汰の才能と勘の良さも大きい。

 特に涼風に関わることに関しての勘働きといったら尋常ではない。いつの間にか警備会社や調査会社まで立ち上げていた。そちらは本業等他でも色々役立ったが、当初の目的を知る人は極僅かだ。


 幼稚園、学校、塾の送迎サービスも始めた。ごく近くで凶悪犯罪があったことでそれなりの需要があったが、元々たった一人の為のサービスが広がったに過ぎない。

 絢汰は涼風の父親の会社の株も買い足してそこそこの株主になると今度は知人を介して交流を持ち、いつの間にか涼風の防犯契約を結んでいた。実際には契約以上の手厚い警備が敷かれていたのだが両親が知る由もない。


 そうやって、絢汰は18年間かけて準備した。

 ゆっくりゆっくり時間をかけて………………

 あとは、待つだけだ。その日が来るのを……………

いかがでしたでしょうか………?

また、気が向いたら…ということで

ありがとうございました。樹森真椰

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