10原因究明
浴室から出ると、風呂上がりの絢汰が待ってくれていた。どうやら別の浴室を使ってきたようだ。顔を見ただけでホッとして笑顔になる。
「ありがとう」
って言ったら、お返しとばかりに笑顔を返し涼風の手を引いて部屋に戻る。飲み物もちゃんと用意されていて至れり尽くせりで良いのかしら……という気になる。
絢汰は涼風の手を離す気はないようでずっと握ったままだ。涼風も心細かったから握った手が心まで繋がってるような温かい心地がしてそのままにした。
「さて、問題は二つだよね。どうして涼風が過去に来たか?と、どうしたら戻れるか?だよね」
その通りなのでただ頷く。
「俺に言われるまで過去にいることに気付いてなかったよね?だったら、確実に未来にいたと確信できた最後はいつ?小学校に来るまでに何か変に思ったことはなかった?」
言われて考える。今日一日を思い出す。
「朝は家にいたわ。両親も弟もいたから間違いなくあの時代にいたはずよ」
「それから?一日の行動を教えて」
午前中は自分の部屋でレポートを書いて、お昼も自宅で食べた。家族は皆出かけていて涼風一人だったが、今日見た更地を考えればあの家にいたってことは未来にいたと考え差し支えないと思う。
午後から家を出て電車に乗って御神木まで行って、また電車に乗って小学校に行った。そこで絢汰に会った。
簡単に言うとそんな感じ?
「何か変だなぁとか、おかしなことはなかった?」
そう言われて考える。
「そういえば…電車から見えたあの朱雀門…工事してたから補修か修復中かな?って、覆い掛けられてたし、そんなのしてたかなって思った気がする。駅でも………そういえばなんか変だった」
「あれは来年完成予定だっけ。そっち向いてたから遊園地に気付かなかったのか……」
「そうかも……」
「てことは、電車乗る前かな……」
あの……本当に小学生?って聞きたくなるくらい絢汰はしっかりしていて、涼風は自分のほうが大学生で年上のはずなのにおろおろしっぱなしでお手上げ状態でお任せするしかない状況下にまたもや置かれた。
「その御神木ってのが、物凄く怪しい気がするんだけど、どこの御神木?」
「原始林……」
「…………………」
「だって……好きなの。幼稚園の親子遠足で初めて行って、すごく気持ち良くって……それから何かの度にちょくちょく行ってて………でも今までこんなことなかった。ちゃんと帰れてたもの……」
いつもいっぱい元気もらって、嫌なことがあってもどうでもよくなって前向きになれるの。今日だって、最近色々あって元気もらいに行ったのに……
止まったはずの涙がまたぽろぽろとこぼれて仕方ない。
「とにかく、その御神木が一番怪しいみたいな気がする。明日同じ時間に行ってみよう」
多分皆様ご存じの街、今から18年前の街並みを思い出しながら書いております。
当時は某イベントに向けて街中がどんどん変化していたので、それぞれの変化がいつだったかあやふやなところもありまして……
何しろ建物が消えて「あれ?ここ何あったっけ?」ってことありません?
というわけで、ちょっと違ってたらごめんなさい。
ラストまでもう少しお付き合いくださいませ。
只今番外編を構想中で楽しく妄想しております。