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僕と彼らの異世界譚  作者: 浮魚塩
夏の海に勇者立つ!
52/55

─49─

 天候は快晴。

 白く輝く砂浜。

 飲み込まれそうな深い青の海。


「わぁっ! すごく綺麗!」


 思わず声に出していた。


「ふふっ、気に入っていただけたのなら幸いですわ」


 ロザリーさんがそんな僕の様子を見てにこりと笑った。


「すっげぇ! 俺も海は初めてなんだよ!」

「ですねぇ。こんな機会でもないと海には来ないですよ!」


 クロードとカンナちゃんも満足しているようだ。


「おー!」


 波打ち際で足だけ海につけてみた。

 スカート便利!


「海冷たい! 水透き通ってる!」


 なんだこれ、それだけなのにすっごいテンション上がる!


「でゅふふ、子供っぽいユトいただきましたー!」


 フリアが変なこと言ってるけど今はそんなことどうでもいい!


「もう、子供じゃないんだからそんなにはしゃがなくてもいいじゃない。みっともない。海なんて大きな水溜まりよ」

「…………!」

「……なんか、オウマの様子がいつもと違うわね」


 リリシャもあんな風に言ってるけど、足は今にも動き出しそうだ。


「みなさん! とりあえず荷物を置いてからですわ! 一旦別荘の中へ!」


 ロザリーさんがみんなを集める。

 今回のメンバーは、ロザリーさん、クロード、カンナちゃん、フリア、リリシャとオウマにそして僕。

 集まったメンバーは何だかんだで知ってる顔ぶればかりだった。

 ま、当然と言えば当然か。

 誘いやすい人が集まるんだから。

 ロザリーさんの友達増やそう作戦も、リリシャとオウマとフリアが居れば、ある意味達成になるだろう。


「ここですわ!」


 ロザリーさんが案内してくれたのは、ついさっき騒いた浜辺から徒歩10秒のところにあった。

 ログハウス風の綺麗な建物だ。

 内装は特別豪華というわけではないけど、広くて涼しくてとても快適だった。

 たぶん、豪華すぎないように作ってあるんだと思う。


「ちなみにこの辺りはプライベートビーチですから、周囲をあまり気にしなくても大丈夫ですわ!」

「へえ、エスルマストのお家ってやっぱりすごいのね」

「こうやってみると、ロザリーちゃんはお金持ちなんだと改めて感じてしまいますね」

「お金持ちとか、そういうことはここでは無しにしてほしいですわ。私はただみなさんと楽しく遊びたいだけですので」

「と言ってもね。私はロザリンドさんとは初対面だし、少し引け目を感じるわ」

「…………(こくん)」

「あ、私もちょっと」


 一応面識はあるはずだけど、この三人はほぼ初対面だ。勝手が分からないところはあるだろう。


「自己紹介は一応済ませましたし、あとは時間が解決してくれると思うですよ」

「だな。というか、俺としては男子の比率が少なくて肩身がせめぇ……」

「…………」


 オウマがクロードの後に隠れた。

 あ、一応僕も中身は……、何て言えないし、二人の気持ちはどことなくわかるのでできる範囲でフォローはしてあげよう。


「それにしても、年長者は私だけ、ね。やっぱりそれなりの威厳を見せた方がいいのかしら?」

「威厳はさっきの“でゅふふ”の一件でほぼ無いですから、今更気にしなくてもいいと思いますよ?」


 年上にも毒出していくスタイルなんだね、カンナちゃん。


「あら。それなら安心してユト可愛がりができるわね!」


 フリアが後ろから抱きついてくる。


「フリア、暑いし恥ずかしい……」

「許可も降りたんだしいいのいいの!」


 まぁ、僕らはこんな具合だろう……。


「そういやトーヤはどうする? 家の住所、先生に聞いてきたんだろ? 海に入りたいのは山々だけどよ、少ない男子要員を補充してぇんだが?」

「そうですわね。……ですが、全員で行っても向こうを驚かすだけかも知れませんし……」

「あ、それなら私行くよ」


 僕は挙手する。


「本当は私も行きたいのですが、客人をほったらかして行くなどエスルマストの恥……! 申し訳ありませんが、ユトさんお願いしますわ!」

「えー、ユト行っちゃうのー? それなら私も行こうかなー」

「フリアは年長者だから皆のことちゃんと見ててほしいんだけど」

「む、威厳がなくなったとはいえ、それは確かにそうね……。分かったわ」


 フリアはぐっと拳を握った。

 若干の威厳復活である。


「これが住所ですわ」


 ロザリーさんから紙切れを受けとる。


「それじゃあ行ってくるね」











「紙にある住所だと……」


 この辺りのはずだけど。

 辺りをキョロキョロ見回してみる。

 やっぱり地元民でもないかぎり細かい場所までは見当がつかないな。

 とりあえず誰かに訪ねてみよう。

 日本みたいに家に表札なんてないし、このままだと永遠にたどり着けない。みんなも待たせてるしね。


「あ」


 庭で水やりをしてる子供がいる。

 夏休みの小学生かな。

 とにかくあの子に……。


──ぞわっ!


 なんだ、今妙な悪寒が……。


「あの、すみません」


 その子に話しかけてみる。


「……なんですか」


 少女が不機嫌そうに振り返る。


「って、ユト?」


 それは見覚えのある三つあみの女の子だった。


「あ、あれ? ニキ……さん?」

「ニキ! だよ?」

「あ、うん。ニキがどうしてこんなところに?」

「ここは私の実家」

「へぇ。……あ、そっか。トーヤ君とは古い付き合いだって言ってたね。出身が同じなんだ?」

「うん、幼馴染みってやつ」


 異性の幼馴染みとか都市伝説か何かかと思ってたけど本当にあるんだ。


「それよりなんでユトがここに?」

「学校の友達と海に来たんだ。ロザリーさん……、は覚えてるかな? 銀髪の、お嬢様口調の」

「……あのおっぱい! ナイスチチーズの天敵!」

「いや、ははは……」


 また妙な覚え方してるね……。

 てかナイスチチーズは継続してたんだね。


「そのロザリーさんの別荘がここにあるから、皆で遊びにね」

「楽しそうだね!」

「うん。それで、トーヤ君が実家に帰ってるって聞いて。先生に住所聞いてここまで来たんだ。幼馴染みのニキがいるってことは、トーヤ君の家もこの辺り?」

「うん、そこだよ」


 ニキが隣の家を指差した。

 そこは、あまり生活感のない、だけど綺麗に保たれた家だった。


「なあ、ニキ。ちょっと晩御飯の……ん?」


 ちょうどその時、財布だけ持ったトーヤ君が家から出てきた。


「トーヤ君!」


 僕はトーヤ君に駆け寄る。


「ユトちゃん?! なんでここに?!」

「それは──」


 ニキと同じ説明をトーヤ君にもした。


「なるほど。クロード達も来てるのか」

「ねえトーヤ君。私達も行かない?」

「うーん……」


 トーヤ君は腕組みする。


「だが、その別荘ってのにも容量があるだろ?」


 あ、なんだそんなことか。お金持ちを舐めてもらっちゃ困る。僕は関係ないけど。


「それはたぶん大丈夫だと思うよ。部屋もまだ余ってるみたいだし。ロザリーさんはもともとトーヤ君も含めて考えてるみたいだしね」

「ん、まぁ、もしあぶれたらうちを解放すればいいだけか。誰も居ないしな」


 僕はトーヤ君の家を見上げた。

 生活感の無い理由はそれか。

 トーヤ君は何も言わないけど……、恐らくそういうことなんだろう。


「それじゃあ決まり! 準備しなきゃね!」

「おじさんとおばさんにも許可もらっとかないとな」

「遠出する訳じゃないし、一発オーケーだとは思うけどね」

「じゃあ準備出来たら言ってね」


 予定外だったけどニキの参加も決まった。

 思ったより大所帯になってきたんじゃないかな。

 でも楽しくなりそう!











「……何してるの?」

「しーっ!」


 ロザリーさんの別荘に戻ってきた僕たち。

 トーヤ君やニキもやって来たというのに、皆そっちのけで窓の外を見ていた。


「なんか、俺たち歓迎されてないのか?」

「そうなのかなぁ……」

「ち、違うと思うよ!」


 皆窓の外を凝視してるけどいったい何があるんだろう?


「ここはやっぱり年長者の私が……!」

「やめましょう。単純に危ないっすよ。フリアさん」

「放っておくのが一番だと思うけど、あんなのが居たんじゃ遊べないじゃない!」

「なんなんです、あれは。本当に迷惑ですよ!」

「…………」


 オウマがぐっと拳を握る。


「オウマさん、魔法はやめておいた方がいいですわ。ここのすぐそばに魔法禁止区域がありますの」

「…………」


 オウマは腕を下ろした。


「ねぇ、何があるの?」

「変なのがいるのよ」

「変なの?」


 僕とトーヤ君とニキは顔を見合わせて首を傾げると、それぞれ窓に向かった。

 そこからはプライベートビーチが見え、青い空と海が広がっている。


「ん?」


 そして砂浜に影が二つ。

 ここからだと後ろ姿だしよく見えないけど、あのボサボサの頭はなんとなく見覚えがある気がする。

 それから、もう一つの影。

 あの鮮やかな赤い髪の毛は……。

 どちらともあまりいいイメージは残ってない。

 でも、もしこの予想が正しければ、今出ていくべきは僕をおいて他にいないだろう。


「私、ちょっと行ってくる!」

「え?」

「あっ、ユトちゃん!」


 関係性を考えれば、あの二人は一緒に行動していてもおかしくない。

 おそらく、ルミリアが二人を引き合わせたはずだ。

 二人の後に立ち、声をかける。


「あのっ!」


 だが、そこで僕は絶句してしまいそれ以上声が出せなかった。


「おや? 君はもしかしてユトちゃんじゃないかい?」

「へ……」




 ボサボサの茶髪の男が振り返る。




 フンドシ一丁で……。




「変態だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああっ!!」


 思わず叫んでいた。






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