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僕と彼らの異世界譚  作者: 浮魚塩
夏の海に勇者立つ!
51/55

─48─ トーヤ

新章どういった感じで何を出すか漸く決まった!

予め作っとけって話ですが……。

もともと最初以外見切り発進でしたからね。

マイペースに更新更新。

「あの日から三年か……」


 林を抜けてきた乾いた風が顔に吹き付ける。

 ここはこの町の墓地だ。

 目の前にある小さな石の下に、彼女は眠っている。


「もう、あんたより年上になったな……」


 目を瞑れば鮮やかに甦る思い出。

 そして、消し去ることのできない記憶。

 ここでいつも巡ってしまう。

 楽しかった日々と、絶望の狭間を。

 このどっち付かずの気持ちをどうしたらいいか分からない。


「ニアさん……」


 当然、彼女の名前を呼んでも返事なんて……。


「はいはーい、呼んだ? トーヤ君」

「え?」


 そ、そんなばかな!

 聞き覚えのある声、懐かしい声。

 あり得ない希望を抱きつつ、声のした方向を向くと。


「思ったよりうまく真似できたみたいだね」


 花束を活けたバケツを持った少女がそこに立っていた。


「……お前、質が悪いな」


 あからさまに落胆した様子を見せつつ、俺は少女から顔を背ける。


「お姉ちゃんの命日は明日だけど?」

「お前に会いたくなかったんだよ、ニキ」

「酷いなぁ、トーヤ君は」

「それに、お前も墓参りには早いんじゃないか?」


 ニキは苦笑しつつ、墓の前に歩み寄る。


「まぁ、命日の前に掃除くらいしとかないとね」


 そう言ってニキは花を置き、バケツの中に入っていた布で小さな石を撫で始めた。


「……ああ、そうだな」


 暫しの沈黙。


「……しばらくはこっちに居るんだよね?」

「……さあな」

「もう夏休みでしょ? 学校に居たって暇じゃん」

「生憎、寮生活の奴は賑やかなのが多くてな。暇はしないさ」

「あ、交流戦の時の人たち?」

「あいつらもそのうちだ」

「ふーん」


 ニキは掃除の手を止めた。


「どうせまた探しに行くつもりなんでしょ?」

「……誰をだ?」

「“誰を”ね」


 墓穴を掘った。


「見つけてどうするの? 復讐?」

「……だろうな」

「きっと、お姉ちゃんはそんなこと望んでないと思うよ」

「俺もそう思う」


 ニキはため息をつくとまた掃除を始めた。


「……でも正直な話、私も見つけたらそうするだろうから無理に止めはしないけど」


 風がまた吹いた。

 今度は多く湿気を孕んでいる気がする。


「お姉ちゃん、怒ってるだろうね」

「そうだろうな……」


 日が高くなってきた。

 日差しが容赦なく俺たちを照らす。

 俺は近くにある林の影に移動し、掃除するニキをぼーっと眺めていた。


「……」


 だからここでニキとは会いたくなかったんだ。

 空気が湿っぽくなる。

 復讐心で塗り染めた決意の塗装が緩くなる。


 俺は間違ってるか?

 俺はおかしいか?

 俺は狂っているか?


 異世界へ来た。

 力も手に入れた。

 なんでもできた。


 でも結局は元居た世界と同じだった。


 人がいて、人と関わって、関わられて。


 当たり前のこと。

 ここにも生きてる人が居た。

 空想や虚構ではなく、考え、感じ、命をもって生きている人たちが。


 ここは異世界だ。

 俺たちの世界じゃない。

 彼らの世界だ。

 異世界は俺たちがオモチャにしていい世界じゃない。


 そんなあたりまえの事を気付かされた。

 気付かせてくれた。

 そんな人が居た。


「……ニアさん」


 ニキには聞こえないように呟く。


「……」

「トーヤ君」


 ったく、何の気なしに話してもニキの声は似ている。

 お前に会うのにますます怖くなるな。

 幸いなのは、お前の容姿が彼女とは似すぎていないってことか。


「……今、私の体格のこと考えてたでしょ」

「いや、“体格”の事は考えてないさ」


 こいつはそこに関しては異常なくらい鋭いからな。

 ニキはジトッと俺を見ていたが、やがて表情を戻し。


「まぁいいや。……家に寄っていくんだよね?」

「ああ。一応はな」


 家には誰もいない。

 俺がこちらで目覚めるより以前に、俺の両親は亡くなっていた。

 一人になった俺の面倒をみてくれたのは、隣に住むフレースベルクさんだった。

 ニキとの付き合いはその頃からだ。

 そして、ニアさんとも。


「思い出す?」


 俺は頭を左右に振る。


「いや」


 俺の心は復讐心で汚れている。

 けれど、それはこの場所では持ち出したくない。


「うそつき」

「……だな」

「ふぅ、もう行こうよ。違うことすれば気分も紛れるよ」


 ニキが俺の腕を引いて走り出す。


「一人で歩ける。子供か俺は!」

「一つのことに拘ってるガキではあるね」

「……っち」


 来年からはもう少し早めに来よう。

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