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僕と彼らの異世界譚  作者: 浮魚塩
最初の異世界人?
5/55

─5─ トーヤ

区切りの関係で今回は短くなっています。

夜にもう一部投稿します。

 ひどい目にあった。

 しかし、一瞬とはいえ見えてしまったユトちゃんの裸体が脳裏に焼き付いている。

 確かに胸は控えめだったけど、肌はスベスベしてそうだったな。

 ペロペロし……。


「いかん……」


 これじゃあ単なる変態じゃないか。

 頭を振って雑念を払う。


「よし」


 それじゃあまずはクロードをボコしに行くとしよう。











「ぎゃああああああああああああ!」


 その晩、男子寮に断末魔がこだました。











 翌日。

 俺は教室のドアを開けようとしたところで立ち止まった。

 そういえばユトちゃんにきちんと謝ってないな。

 変な噂になってなければいいけど……。


 俺は出来るだけ平然を装って教室に入った。


「おっ、トーヤ! おはよう!」


 ボコボコの顔のクロードが爽やかに挨拶をしてくれた。


「おはようクロード。いい顔してるな」

「どんな顔でもイケメンだろ?」

「はいはい」


 クロードと挨拶を交わした後、周囲を見渡してみるが、特に変わった様子はない。


「どうしたんだ? トーヤ」


 クロードがそんな俺の様子を察して尋ねてきた。


「いや、別に」


 クロードにはお風呂場でユトちゃんに遭遇した話はしていない。

 話せば流行病のごとく噂は広まっていくだろう。絶対。


「ふぅ……」


 俺は窓際の自分の席に着いた。

 天気は良く、今日の体育は外で行われるだろう。

 変に気張ってしまった。

 まぁ、変化がないのであればそれに越したことはーー。


ーーカラララ……


 その音に俺はビクリと反応してしまう。

 教室に誰か入ってきただけなのだが。


「「あ……」」


 教室に入ってきたのはユトちゃんだった。

 たまたま目が合ってしまい、気まずそうに顔を背ける。

 そんなユトちゃんを見て、俺は本当に悪いことをしたなと反省した。

 ユトちゃんのあの性格じゃ、誰かに話したりもしてないんだろう。

 ユトちゃんはそんな子だ。

 それを俺は噂が広まってないかと変に疑って……。

 きちんと謝ろう。

 俺はそう思ってユトちゃんのところに向かおうとしたのだが。


「あの……」

「うわっ?!」


 話しかけてきたのはなんとユトちゃんだった。

 俺が驚いたのに驚いてユトちゃんは仰け反っていた。


「お、お邪魔だったかな?」

「ご、ごめんユトちゃん! なんでもないんだ。それはそれとして、きのーー」

「それはいいです。そんなに気にしてないから」

「え?」


 クロードが俺のわき腹を小突く。


(お前、ユトちゃんになんかしたのか?)

(な、なんもしてないって!)


 原因お前なんだが。

 殴りたい衝動に襲われたが、ひとまず俺は拳を納める。


「その代わり、と言ってはなんですが……」


 な、なんだ?

 慰謝料でも請求されるのか?

 確かユトちゃんは学費を自分で払ってるはず。

 金銭面では苦しいだろうけど。


「トーヤ君て、魔法が上手……だよね?」

「え? まぁ……」

「その、魔法の練習に付き合ってもらいたいなぁって」


 そういえばユトちゃんの魔法実技の成績って……。


「私の成績は知ってるよね? 学年最下位」

「……」

「あ、む、無理にはいいよ! 一人で勝手に練習するから! ご、ごめんね!」


 そう慌てて謝り、ユトちゃんは去ろうとする。


「いいよ。そんなことでよければ」

「え?」

「俺でよければ付き合うよ」

「本当?!」

「ユトちゃん! 俺も手伝おうか?!」

「あ、クロード君はいいです」


 ユトちゃんはクロードの申し出をあっさり一蹴した。

 おお、クロードの顔が余計に酷いことになってるぞ。


「それじゃあ、放課後魔育館でいいか?」

「あ、はい! よろしくおねがいします!」


 ユトちゃんはとても嬉しそうな笑顔を見せる。

 とてもかわいらしい笑顔だ。

 一瞬心を奪われそうだった。


「……」


 ああ……。

 落ち着け、そういった感情はナシだ。

 ナシナシナシ。

 決めただろ。

 ダメなんだそれは……。


「トーヤ君?」

「どうかしたのかトーヤ。顔色が悪いぞ?」

「大丈夫だ。気にしなくていい」

「あの……、調子が悪いんだったら別の日でも……」

「ありがとう、ユトちゃん。でも本当に大丈夫だから」

「でも……」


ーーリーン!リーン!


 ユトちゃんは心配そうにしていたが、始業のベルが鳴り、仕方なく自席へ戻っていった。


「お前ら席に着け。出席とるぞ」


 担任が教室に入ってきていつのようにルーチンワークを始める。

 ここに来てから一ヶ月。

 最初は新鮮だったこの生活も、だんだんいつもの日常へと変化してきた。


「……」


 この天気、絶対授業中は眠たくなるな……。

 そんなことを考えていた俺は、案の定一時間目の授業から、うつらうつらと舟を漕いでいたのだった。





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