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僕と彼らの異世界譚  作者: 浮魚塩
激動!?修学旅行・魔法学校交流戦
45/55

─43─

話を区切るタイミングと、一話分の話の長さとのバランスが難しい。

「んー! んー!」


 なんだこれなんだこれなんだこれ?

 あたま?

 あたま?


「んんんんんんん!」

「ユトちゃん落ち着いて!」


 トーヤ君が僕の拘束を解いた。


「なんでこんなことするの!?」


 口が動くようになって最初に出たのは罵倒だった。


「違う! 話を!」

「な、何も殺さなくても!」

「ユトちゃんこいつは!」




「ああ、なんてことするんだい?」




 足元から声が聞こえた。


「え?」

「くっ!」


 トーヤ君がアルバートの頭を蹴飛ばした。

 その頭を胴体がキャッチする。


「酷いじゃないか」

「な、なにこいつ……」

「アルバートだよ、フレースベルクさん」

「黙れ偽物。本物のアルバートなら、保健室の掃除用具入れの中で見つかった。今は保健室で休んでる」


 え、偽物?


「…………フフ。本物を始末して僕が本物になるつもりだったのに。あいつが殺すなって言うから……。ああっ! どん底だ! 最低な絶望だよ! これでは僕の存在する意義が全く無くなる! くそっ! 僕はなんのために! なんのためにぃっ!」


 アルバートの偽物は狂ったように悶えていたが、不意に魂が抜けたように大人しくなり、抱えた頭の口がつり上がった。

 とてもおぞましく、悪魔のような笑顔だった。

 今までアルバートだと勘違いしていたのが嘘のような別人の顔だ。


「もうどうでもいい。あいつとの約束なんてもう意味はないんだ。あとは孤独に朽ちるだけ……。ひひ……」

「気の毒だとは思うけど……」

「いやだあぁぁぁぁぁぁああっ!!」


 偽物は泣きながら叫んだ。


「お前らも道連れだ! 一人消えるのは嫌……、はっ!」


 偽物は口を開いたまま闇の一点を見つめる。


「や、ちが、嘘だ、今の全部嘘だ! だからやめっ!」


 偽物の足元がチリチリと音をたて、ぼんやりとオレンジ色に光を放つ。

 それからはあっという間だった。


「がああああああああっ!!」


 大きな火柱が夜空を焦がし、偽物は一瞬で灰となっていた。


「っく!」


 トーヤ君は偽物が見つめていた方向を睨むとその姿を消した。

 時間を止めて、偽物に制裁を下した何者かを追おうとしたんだろう。

 だけど、それは何となく無駄だと思った。

 なぜならそいつは『能力』を封じることができるからだ。


「ユト、大丈夫?」


 ニキがそっと僕の肩に手をおいた。

 身長差のせいでだいぶ無理をしているのだが、ここでは触れないでおこう。


「ありがとう、ニキ……さん」

「ニキでいいよ」

「あ、うん」

「それにしても、ふわふわマンが偽物だったとは。おまけにユトを拐うなんてどういうつもりだろう?」


 ニキは「うーん」と唸りながら腕を組んだ。

 拐われるようなことをした覚えはないけど……。

 ただ相手は十中八九異世界の人間だ。

 これだけは確実だろう。


「逃げられた」


 唐突にトーヤ君が現れ、悔しそうに呟いた。

 って、トーヤ君! ニキの前で堂々と能力使っていいの?!

 僕の表情から察したのか、トーヤ君が口を開く。


「ああ、ニキは知ってるんだ。俺が転生者であるのともな」

「さらに言うなら、トーヤ君が転生した当初、世話をしてあげたのが私」


 『してあげた』のところがやたらと強調されていた。


「悪いが、ユトちゃんの事も伝えた」

「ええっ?!」

「大丈夫だ、ニキは信頼できる」

「砂舟に乗ったつもりでいてよ!」


 ニキが無い胸を張るが、ものすごく心配だ……。

 ていうか、砂舟なんて泥舟より酷いんじゃ……。


「でもとりあえず、細かい話はあとにしよう。本物のふわふわマンも心配してるだろうしね?」

「ああ、そうだな。飛ばすぞ!」


 トーヤ君が両腕を振り上げると。


「え?」


 下から突風が吹き荒れ、僕らの体がふわりと……、いや、やわらか目に言ってもびゅんと、吹き飛ばされた。


「えええええええええええええっ!!」






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