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僕と彼らの異世界譚  作者: 浮魚塩
激動!?修学旅行・竜の巫女
32/55

─31─

 心地よく体が揺れていた。

 暖かで不思議な浮遊感に包まれている。


「ん……ん……」


 ぼんやりした頭で目を開けると。


「目が覚めたか?」


 すぐ近くでトーヤ君の声がした。


「わひゃ!?」


 頬がくっつきそうな程、顔が近くにあった。

 思わずのけぞってその場から離れようとするが、僕はおんぶされた状態だったので。


「わ! 暴れたら! あぶな!」


 二人ともずでんと倒れてしまった。


「いてて……、大丈夫か? ユトちゃん」

「う、うん……。トーヤ君が前に倒れてくれたから……」


 おかげで僕はトーヤ君に馬乗りになってるわけだけど。

 ただ、人の往来が多いこの場所でその体勢をとり続けるのはよろしくない。

 僕はすぐに立ち上がってトーヤ君に手を差し伸べた。


「ありがとう」


 トーヤ君は僕の手を取り立ち上がる。


「うん、どうやらいつものユトちゃんに戻ったみたいだな。体調も大丈夫なのか?」

「あ……、うん……」


 トーヤ君から顔を背け視線を落とす。


「その……、ごめんなさい……」


 トーヤ君はふっと小さくため息をつくと、苦笑しながら。


「気にしなくていい」


 と、言う。

 でもそんなこと言われても気にしないわけにはいかない。


「私、最後、トーヤ君にまで……」

「だからいいんだって」

「よくないよ! 私は!」

「俺もそんなときがあった」

「……」

「力に溺れて他の人を傷つけたことがな」

「でも……」

「俺はその時に多くの人を殺した」

「え?」

「今更きれいごとを言うつもりはないが、人殺しはよくない。たとえここが異世界でも、命の重さは変わらないはずだ。俺はユトちゃんに人殺しにはなってほしくない」


 そんなこと言われても……。


「この先、能力を使わないといけない場面は絶対あると思うの。でも、能力を使ったら私はまたあんな風に──」

「止める」

「へ?」

「俺が止めてやる! だから大丈夫だ!」

「…………な、なな!」


 な、な、なななにそれ!

 顔が熱い。

 たぶん顔も赤くなってるんだと思う。

 そう言ってくれるのは嬉しいよ。

 嬉しいけど……。

 って、違う違う!

 どうしてそんな歯の浮くような台詞を軽々と口に出来るのか。

 異世界に転生した人は何かしら異性にモテるスキルをお持ちの方が多いようだけど、あれなの?

 この人は僕を攻略するつもりなの?

 ロザリーさんからも好意もたれてたよね?


 はっ!


 そ、そうか!

 ハーレム系か!

 そんなスキルもお持ちでしたか!


「どうしたんだ、ユトちゃん?」

「な、なんでもないよ!」

「顔が赤いぞ? 青銅竜に一度氷付けにされてるからな。風邪か?」

「大丈夫! 大丈夫だから!」


 くそっ、女の子の気持ちに気付かない天然、鈍感、焦らしスキルまで備えてるなんて!

 ていうか女の子とか自分で言っちゃったよ!

 僕もうとり返しつかないね!

 というかそういう気はないから!

 たぶん……。


「と、ととと、とにかく! 班長が帰らないと、皆の自由時間が無くなるんだから急いで戻ろう!」

「あ、修学旅行中だったな。そういえば……」


 殺し合いをするような場面から急に修学旅行といっても、落差がありすぎて実感が沸かないのは僕も同じだった。

 トーヤ君が時間停止をしていたおかげで、ほとんど時間は経過していないものの、もう丸一日過酷な仕事をした後のような気分だ。


「あ、そうだユトちゃん。これ、ルミリアから預かったんだけど」


 トーヤ君は一冊の本を取りだした。

 その様子を見てふとある記憶が蘇る。


「ケダモ──」

「違う!」


 僕は本を受け取った。 

 それは僕が買ったルミリア著の本だった。


「それから伝言」

「うん」

「『本は最初のページから最後のページまで、一字一句もらさずしっかり読んで』くれ、ということだ」


 書き物をしている人なら、それは共通の願いなんだろう。

 伝えたいこと、見せたいもの、感じ取って欲しいものを、文字に乗せているんだから。


「わかった」


 僕は頷いた。


「……あ、アルカは?」

「ああ、アルカは……」


 トーヤ君は頭をぽりぽりと掻く。


「アルカと言うより、あれはまるで別人だな。多分あれが青銅竜の言ってた『ミコ』なんだろう」


 神様の話の通りだ。

 アルカという人格は消滅してしまったんだろう。


「しばらくはルミリアと行動するらしい。ルミリアは竜の神子っていうのを探してたみたいだしな」


 ルミリアはアルカ……、いや、ミコをグリフに会わせるつもりなんだろう。本当に竜の神子を探していたのは彼なんだから。


「……そっか」


 多分、アルカの一件は何とか収まりそうだ。


「あ! 居ましたわ!」

「班長が迷子ってのは救いようがねぇじゃねぇか!」

「ユトちゃんとトーヤ君。……ふふ、そういうわけですか」


 話しているうちにちゃんと皆と合流できたみたいだ。

 なにか一人誤解をしてる人が居るみたいだけど、皆と合流できたことで僕はなんだか安心することが出来た。


「さて、トーヤ。班長としての責任をとってもらおうか?」

「方向音痴は相変わらずですのね」

「私たちの自由時間を奪ったんです。償いをしやがってくださいね、班長?」


 あー、これはちょっと後が怖いな。

 トーヤ君の顔がひきつっていた。






シリアスのあとはおふざけ。

と言っても今話は半分真面目ですが。


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