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僕と彼らの異世界譚  作者: 浮魚塩
激動!?修学旅行・竜の巫女
30/55

─29─ トーヤ

 だ、誰?

 って、そんなのはどうでもいい!

 一般人?

 アルカはどうしてこの人を。


「おお、あれは噂のアルカ・ラカルト! それにユトちゃんだね! ……なんだか様子が違うようだけど? そこの少年、何か知らないかい?」


 女性はスタスタと俺に寄ってきた。


「あ、え? や、危ないですよ!」

「ややっ!? あれは青銅竜! これはすごい面子だね!」

「いや、ですからね……」


 俺が女性に説明しようとすると。


「ふむ、なるほど。だいたい状況はのめたよ」

「え?」

「アルカ・ラカルトの襲撃を受け、ユトちゃんが戦っている。それで恐らくこのおかしな空間はアルカ・ラカルト、ユトちゃん、もしくは少年、君の能力かだ」


 能力?!


「もしかしたら青銅竜かな? 転生したらドラゴンでしたというのも面白そうだね」

「……」


 転生!?

 この人、分かって喋ってるのか!


「あ、あなたは……」

「私はルミリア・フェルデイン。しがない作家だよ。でもそれなりに有名なんだけどねぇ。少年、活字は嫌いかな?」

「いや、そういう意味ではなくて……」

「にしても、ユトちゃんはアルカ・ラカルトを殺す勢いだね。彼女は『竜の神子』だというのに。世界が救えなくなってしまうよ」


 ルミリアは少し前に出る。

 そして。


「ユトちゃん! アルカ・ラカルトを殺すのはまずい!」


 ユトちゃんはルミリアに軽く会釈はするものの、その手を止める気は無いようだ。


「聞く耳持たないって感じだね。これは困った。やめて欲しいんだけどなあ」

「俺も彼女を止めたいんです! 何か方法はないですか!?」


 この人はなんとなく信用できる気がする。

 俺はとにかくこれまでの経緯と、分かっていることを、時間がないので俺たちの時間だけを早めて全て話した。


「そこまで分かっているのなら簡単だよ」

「え?!」

「私たちのような能力をいくつも保有しているのは、神様からすればよくない事だよ。分かるかな?」

「はぁ……」

「いや、悪いね。時間がなかったんだね。チート能力をいくつも持つということは、それは神様同然だ。神様がそれを許すはずがない。つまり、彼女の能力には何らかの制限があると見て間違いないだろう」

「制限……」

「君のおかげで強くなれたというユトちゃんの言葉、そして君の保有する能力。このふたつから導き出される答えは……」

「時間制限か!」


 そうか、時間の止まったこの空間では時間制限は意味が無くなる!

 それなら最初、ユトちゃんが能力を使おうとしなかったのも頷ける。

 長期戦は彼女には不利だ。

 使い所を見極めなければならなかったから、躊躇いがあったんだ。


「推測の域は出ないが、試してみるかな?」

「もちろん!」


 今のユトちゃんは手がつけられない。

 けれどおそらく、制限時間過ぎれば、元のユトちゃんに……。


「ごめんよ、ユトちゃん!」


 俺は時間停止を解いた。

 世界に時間が流れ始める。


「ひ……」


 ユトちゃんの動きが止まった。

 そして見る見るうちに顔色が変わっていく。


「ひやあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!」


 奇声をあげ、ユトちゃんはその場で屈み込んだ。


「やだ! やだぁ! ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ!」

「ユ、ユトちゃん……?」

「戻りたくない! 戻りたくないよぉ!」


 泣き喚く子供より酷い。


「げほっ! げほ、げぼっ……」


 ユトちゃんはせき込み始めたかと思うと、血の固まりを吐き出した。


「ユトちゃん! や、やばいんじゃないか?!」

「制限を設けられるような能力だよ? 多用すれば体に負荷が掛かるだろうね」

「やだよ……、やだ……、げほっ……」


 ひとしきり駄々をこねた後、ユトちゃんはむくりと立ち上がった。 


「し……を……」


 ユトちゃんが何か聞き取れない言葉をつぶやくと、そこからは一瞬だった。

 アルカとユトちゃんの間の距離が無くなり、次の瞬間にはアルカはもう倒れていた。


「な……」


 ユトちゃんがゆらりと俺を見る。

 そう思ったらもうユトちゃんが俺の目の前に立っていた。


「ユ……!」


 やられる!


「げほ……」


 が、ユトちゃんは再び血を吐いて力なくその場に崩れ落ちた。


「ミコ!」


 青銅竜が倒れたアルカの元へ向かう。 

 それについてルミリアもアルカの所へいった。


「ミコよ!」

「大丈夫。息はしてる。死んではないようだよ」

「……そうか」


 それを聞いて青銅竜は安心したようだ。


「けれどおかしいな。傷が治ってない……」


 ルミリアは手を顎に当て考える素振りを見せる。


「ミコよ! しっかりするのだ!」

「ん……ん……」


 青銅竜の呼びかけに応じてアルカがゆっくりと体を起こした。

 最初はどこかぼーっとした雰囲気だったが、急に目を見開き周囲を見渡しだす。


「ミコ?」

「青銅竜! アルカは!? アルカがどこにも居ないの!」

「な、何を言っている。アルカはミコが名乗った偽名だろう?」

「違うの! アルカがいたの! 今の今まで! 私と!」


 アルカが訳の分からないことを言い続けている。

 流石にそれには青銅竜もルミリアも困った様子だった。


「ユトちゃん……」


 俺は目の前で倒れているユトちゃんを見下ろす。


「君は一体アルカに何を……」


 そして、俺に何をしようとしたんだ?







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