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僕と彼らの異世界譚  作者: 浮魚塩
激動!?修学旅行・竜の巫女
27/55

─26─ アルカ(ミコ)

 どんな怪我も治すことができた。

 どんな怪我でも治った。

 たちまち私は崇められるようになった。

 たちまち私は一人になった。


「つまんない……」


 折角友達ができて遊べるようになったのに、また逆戻りだ。


「ミコ、またすぐに遊べるようになるわよ」


 お母さんはそう言う。


「そうだといいけど……」


 私はぶすっと顔を背けた。

 竜の力を持っていて、どんな怪我でも治せて、竜の神子。

 特別に特別、その上に特別が重なった。

 こんなに特別なんていらない。

 普通がよかった……。


「ミコ」

「なに?」

「決して恨んだりしないで」

「なにを?」

「あなたの運命を」

「……うん」


 恨んではない。

 けど、大嫌いだ。

 できることなら、私はこの町を出て行きたい。

 この町にいる限り、運命なんて変わらない、微動だにしない。

 おもしろくない。

 つまらない。


「……」


 でもきっと外に出たら私は生きていけない。

 だから、もう少し我慢して、大きくなったら、この町を……


──バンッ!


「フレイアルマ様!」


 一人の男が社へ駆け込んでくる。


「なにごとです?」

「どうか非礼をお許しください。ですが緊急事態で……」

「何が起きたのですか?」

「崖崩れで民家が押しつぶされてしまったんです! 中にはまだ……」


 お母さんがむくりと起きあがった。


「行きましょう、ミコ。きっと貴方の力も役に立つはずです」

「うん」


 社から外に出る。

 今日は雨が降っていた。

 豪雨と言ってもいい。

 視界は悪く夜でもないのに薄暗い。雨音で近くの声も遠く聞こえ、足下も悪かった。


「ここです!」


 町の中でも山際。

 そこには土に埋もれ、若干家の部品であろう木材が見えている程度の家があった。

 この辺り一帯の家はほとんど崩壊していた。

 町の人たちが土砂をどかしているものの、周囲では小さな土砂崩れが頻繁に起こり、作業はなかなか進んでいないようだった。


「ミコ様! 怪我人をお願いできますか!?」

「……はい」


 ミコ様だって。

 笑える。

 私なんかただの小娘なのに。

 怪我人の元へ私は行く。

 泣く人。

 喚く人。

 苦しむ人。

 動かない人。

 みんなが私に縋ってくる。


「……」


 離れていったくせにこんな時だけ寄ってくる。

 怪我人を治す。

 みんな喜んだ。

 どんな大怪我だって治した。

 みんな元気になった。


「お母さん」


 怪我人を治し終えてお母さんの所へ戻る。


「ミコ、皆はもういいの?」

「治した」

「そう。でも、こちらはもう少しかかりそうだわ」

「私も手伝う」


 竜並の力を持ってるのだ、土砂や瓦礫なんかをどかすのも簡単だ。


「そうね、お願い」


 お母さんと私は土砂と瓦礫をどんどん退かしていく。


「おお!」


 周りから声が挙がる。


「これなら!」


 瓦礫の下に埋もれた人はすぐに助け出せた。

 私がその人の怪我を治すと、これで終わり。

 救助活動は終了した。


「終わった……」

「ありがとうございます! 皆助かりました!」

「フレイアルマ様とミコ様がいれば怖いものはありません!」

「いえ、みなさんの協力があってこそです。私たちだけではこの救出はできませんでした。ね、ミコ」

「うん」


 そう思う。


「それでは戻り……」


──ゴゴゴゴゴゴゴゴ


 地響きのような轟音。


「逃げて!」


 大きな土砂崩れが再び襲ってきた。

 視界が黒で塗りつぶされる前、見えたのは流れてくる土砂と、それに立ちふさがったお母さんの姿だった。











 目が覚めた。

 目を開けても暗い。

 夜、なんだろうか?

 体が動かない。

 何かで押し固められたように。

 息が苦しい。


「!」


 そうだ土砂崩れ!

 だとしたらここは土砂の下?!

 早く出ないと窒息しちゃう!


「っく!」


 どっちが上か下かも分からない。

 けど掘った。

 ひたすら掘った。


「ぷはっ!」


 幸いすぐ外には出られた。

 あまり深い場所ではなかったようだ。

 あたりを見渡してみる。

 土砂ばかり。

 それ以外は何もない。

 東の空がうっすらと明るくなっていた。

 朝。

 救助が終わってから随分経ったらしい。

 私は土の下で一夜を過ごしてしまったようだ。

 最後の土砂で……。


「お母さん?」


 そうだ、あの時お母さんが土砂の前に!


「お母さん!」


 お母さんが居たであろう方向には誰も居ない。


「おか……」


 土を掘る。

 下に向かって、ひたすら。

 無事だけを祈って。


「はあっ、はあっ……」


 どれだけ掘ったかは覚えてない。


「これじゃない!」


 もっと土を退かす。


「これも違う!」


 掘り起こしたものを放り投げる。


「違う!」


 登りかけていた日がまた沈むくらいになっていた。


「お母さん……」


 あちこち掘った。

 動かなくなった人間もいくつか掘り起こした。

 そして見つけた。

 剥がれた紅い鱗。

 そしてその下に、その鱗の持ち主。


「お母さん」


 さらに時間をかけて土を退かし、竜の姿が全て見てるようになった。


「……お母さん」


 動かない。

 怪我を治しても動かない。


「おか……ん……」


 動かない。

 いくら呼んでも動かない。


「……」


 この力は、怪我は治せても、無くなった命は戻らない。


「役立たず……、不良品……、出来損ない……」


 もっと早く教えろよ。

 くそっ!

 くそっ!











 一応見つかる分の死体は全部掘り起こした。

 見た目は綺麗にしておいた。

 中には見られないのもあったから。

 でもそれ以上どうしようもなかった。

 だから帰った。

 夜中だったけど、誰かにこの事を報告しないと。

 私じゃ処理しきれない。


「あ……」


 町を歩いているとまだ明るい建物があった。

 私はそこへ駆けより、窓から中を覗いた。


「まさかあそこで土砂崩れが起きるとはな……」


 中にいたのは私たちを呼びに来た町長、そして幾人かの人間。


「あそこは昔から地盤が緩かったですからね……」

「巻き込まれた人達には、申し訳がない……」


 ……そういえば。


「しかし、あそこに居たのは殆どが取り巻きでした」


 ……なんで。


「当然と言えば当然だよ」


 ……今日。


「一網打尽ですね!」


 ……誰も来なかったの?


「あの蜥蜴が死んでくれてよかった。町長はワシだと言うのに、あの蜥蜴がのさばっていたせいで……、クソが!」

「まぁ、都合よく事故が起きてくれましたよ」

「ああ、あの蜥蜴の娘も帰ってこない。本当に不幸な事故だったよ! はっはっは!」


 なんで笑ってる。

 おまえ等のためにお母さんは。


──ガタッ!


 沸き上がる感情を抑えられず、私は物音をたててしまった。

 中の視線が一斉に私に向けられた。


「み、ミコ…………様……」


 逃げた。

 こいつらは私のこともよく思ってない。


「追え! 捕まえろ!」


 大丈夫。

 逃げきれる。

 竜の力がある。

 あんなやつらに追いつかれない。


「逃げるな!」


 あれ?

 私は取り押さえられていた。

 逃げようともがくが、それでもどうにもならなかった。


「いつもの馬鹿力はどうしたんだ?」


 私を取り押さえた男がにたりと笑う。

 疲れた?

 ずっと土を掘り起こしてたから?


「まあいい。こっちにとっちゃ好都合だ」

「監禁しろ! 絶対外に出すな!」


 なんで……。






















やっぱりどうしても書けなくなるときはありますよね。

そんなとき皆はどうしてるんだろ?

多分間が空くと書かなくなってしまうと思うから、無理にでも書いた方がいいのかなぁ。

リハビリリハビリ。

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