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僕と彼らの異世界譚  作者: 浮魚塩
激動!?修学旅行・竜の巫女
23/55

─22─ アルカ

アルカ視点つづき。

グロ注意。


彼女の性質上すみません……。

ルールに引っかかっても嫌なので、残酷描写ありの注意を追加しました。

 中央都市に着く頃には昼になっていた。

 私を運んでくれた青銅竜は近くの森で休ませてある。

 何かあったときは、呼べばすぐに来るだろう。


「とりあえずは食料品ね」


 勿論代金を払って買う。奪ったり盗んだりはしない。

 まぁ、払うお金は『拾った』ものだが。

 買い物を済ませたらすぐに戻る。

 目立ちたくはない。

 そのつもりだったが……。


「……あの子」


 本屋の前を通りかかったとき、見覚えのあるクソガキの姿が見えた。

 誰かに手を引かれて歩いていくようだけど。


「ふーん……」


 一瞬考えたけど興味の方が勝った。

 どういう理由であのガキがここにいるのかは知らない。

 ちょっかいを出してやろうかとも思ったが、流石に中央都市で暴れると面倒くさい。

 だから後をつけることにした。











 二人は喫茶店に入っていった。

 私は喫茶店の前、二人の座った席の前でそれとなく時間をつぶす。


「……」


 断片的だが、話の内容は何となく理解できる程度には聞くことができた。

 どうやらあのもう一人の女も元は異世界の住人らしい。

 よく見れば有名な作家じゃない。

 それが異世界の人間ねぇ。

 ふぅん……。

 しかし、よくもまぁこんな喫茶店で堂々と異世界なんて話ができたもんね。

 まぁ、他の人間からすれば異世界の話なんて空想の話だし、何より話しているのがかの有名な異世界ものの小説の作者だ。皆ネタの話だと思うのだろう。

 だが、話が進むに連れて次第に内容がシフトしていった。

 竜の神子。

 どうやら竜の神子を探してる奴が居るらしい。


「お察しの通り。犯罪者、アルカ・ラカルトだよ」


 それが私だとも。

 竜の神子。

 竜の神子。

 竜の神子……!

 くそっ!

 くそっ!

 反吐が出る!

 私が?

 ざっけんな!

 そんなクソッタレな『使命』知ったこっちゃない!

 自分の腕を掻き毟る。

 皮が剥がれて血が滲んできたが気にはならない。

 どうせすぐ治る。


「クソが……」


 余計なこと思い出させやがって。

 私は、私は。

 クソ苛つく。

 今すぐ潰したい。

 消し去ってやりたい。

 ああ、やだやだ。


「あー、誰か殺そう……」


 まだ腕を掻き毟る。

 腕が酷いことになってるがそんな事関係ない。

 場所を移そう。

 こんなところで殺ったら後が面倒くさい。

 本当はあのクソガキを殺ってやりたいが、あっちにはもう一人いる。

 流石に分が悪い。

 とにかく、とにかく、誰か。


「……」


 私はくるりと振り返る。

 喫茶店の中に二人の姿がまだある。


「いや……」


 やっぱりあのクソガキにしよう。

 卑怯ではないわよね。

 だって、次会ったら殺すって宣言してあるんだから。


「っひ!」


 魔法はあんまり得意ではないけど、あの子を炙り出すには十分よね。

 うまくいけばこれで終わりだし。

 右手の拳を握り、上に掲げる。

 すると、炎の槍が形成されていった。

 『フレイムランス』

 火の中級魔法。

 あとは見た目通り、槍投げの要領で投げつけてやればいい。


「っひっひっひ、どぉなるのかしらねぇ?」


 槍を思いっきり投げつけた。

 が。


──バシュ!


 槍は一瞬で消えてしまう。


「あら?」


 消えたと言うよりは消されたという感じだが。


「ユトちゃんに何をする」


 後ろから怒りのこもった声がした。


「はぁ?」


 振り返ると、そこには少年が一人、殺意のこもった視線を私に向けていた。

 制服。

 学生か。

 確か最近この制服も見た。

 ランバート魔法学校の生徒か。


「前回は邪魔が入ったから、今回はばっちり殺してあげようと思っただけよ。あんたも邪魔するの?」

「前回? ……お前、もしかしてユトちゃんとクロードを襲った、犯罪者」


 知り合いか。


「アルカ・ラカルトか!」

「せいかーい!」


 相手の懐に飛び込み腹に一撃をぶち込む。

 『この世界の人間』なら、まずこれに耐えられるはずがない。

 相手は軽く吹っ飛び、建物にぶつかって止まった。

 本来なら弾け飛ぶような一撃だ。


「……く」


 つまりこいつも。


「っひっひっひ、あんたも転生者ね!」

「そういうことか……」


 でも何かしら、この違和感。

 これだけ騒ぎを起こしても誰も来ない。

 いや、静かすぎるわね。

 いつから音が消えたのかしら。

 風も吹いてない。


「お互い騒ぎになると面倒だろ?」

「ふぅん、あんたの能力ってわけ?」


 それはこちらにとっても好都合ではあるが。

 相手の能力は、要はこの空間全体に干渉できるもの。

 かなり強大な力を持っているはず。

 でも、それだけの力を持っていながら、それを人除けだけに使うかしら?


「人除け……」


 喫茶店を見てみる。


「なぁるほど、あんたの能力、時間を操る能力ね!」


 喫茶店のあの二人、完全に止まっていた。


「ご明察。だが、それを知ったところでどうなる?」

「それだけじゃないわよ。時間を止められるなら、なぜ私の時間を止めないの? 何をするにしても、それだけであんたの勝利は揺るぎない物になるわ。それをしないということは」


 何らかの制約がある。

 さっき奴を吹っ飛ばしたとき、建物にぶつかったのに壁は無傷。


「時間を止めた物には干渉できないのね?」

「察しがいいな……」


 不意に相手の姿が消えた。

 次の瞬間背後から鋭利な何かが突き刺さる。

 いや、突き抜けたと言った方がいいのかしら……。

 私の体には大きな風穴が空いていた。

 文字通り風に貫かれたのだ。

 風の中級魔法『ウィンドレーザー』……。

 体のど真ん中を打ち抜かれ、背骨をなくした体はべちゃりと崩れ落ちた。


「終わりだ」


 そのガキはカッコつけて私に背を向けた。


「っひ! 終わり?」


 ガキがぴたりと止まる。

 そして振り返り驚いた表情で私を見ていた。


「な……、に?」


 あー、たまんなくうざったいわ。

 その表情、めちゃかちゃにぶっ潰してやりたい。


「お前……、ゾンビか?」

「ゾンビ? っひっひっひ! あーはっはっ! ぞぉんびぃいいい? 臭い臭い! あんなクセェ連中と一緒にすんじゃねぇ!」

「なら……」

「あんたと同じよ。転生の時、神様から能力をもらってるのよ?」


 私の腹の穴が塞がる。


「再生か!」

「そうよ。だからあんたの攻撃は無駄。誰も私を殺せはしないのよ」

「それなら!」


 またガキが消えた。

 何をするつもりかは分かってる。

 さっきと同じ。

 時間を止めてノータイムで魔法を撃つつもりだ。

 しかも乱射。

 文字通り塵も残さないレベルで私を消すつもり。

 でも……。


「むぅだぁっ!」


 再生のレベルが違う。 


「消えろ!」


 魔法が私に向かってくる。

 いくつも。

 いくつも。

 何回も。

 何回も。

 何度も。

 何度も。

 でもねでもね?


「那由多の攻撃も無駄なんだからぁっ!」


 魔法を全部受けても私は壊れない。


「化け物!」

「化け物とは心外ね。あんたも同類なのよ? 同族」

「お前なんかと一緒にするな!」

「一緒よ。このゴミ屑が! わかんねぇのかよ! てめぇがしてることは何だ? 私を殺そうとしてる。人殺しだろーが! きゃーころさないでー! っひっひっひ!」

「っく!」

「返す言葉もないでしょう? あんたは正義じゃない。悪よ? 殺人鬼さん?」

「黙れ!」

「あーっ! いいこと思いついた!」


 あいつの能力は時間を操るものだ。

 対して私の能力は再生。

 確証はないけど試してみる価値はありそうね。


「できるかしら? 能力の応用」


 掌を喫茶店に向ける。


「な、何を!?」

「っひっひっひ」


 後は少し待てば。


──カチャリ……


「な!」


 喫茶店のドアが開き一人の少女が顔を出す。


「トーヤ君? これは……」


 うまくいった!

 時間停止なんてカッコつけて言ったって、所詮は『一時停止』。映像が止まってまた動くように、『再生』してやれば時間は動き出す。


「また会ったわねお嬢ちゃん?」

「あ……、アルカ・ラカルト!?」

「あのときの約束通りまた会ったから殺すわね!」

「ユトちゃん逃げろ!」


 またガキが消える。

 けどぉ。


「そこね?」

「くっ!」


 時間を再生してガキの姿を捉えられるようにした。


「気にすること無いわよ? 私知ってるんだから」

「何を……?」


 喫茶店から出てきたガキを指さす。


「この子も」

「やめっ!」


 いい顔ね。


「転生者だもの!」

「やめてっ!」









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