─17─ ロザリー
視点がロザリーになります。
口調に特徴を持たすんじゃなかったと後悔。
もう絶対彼女の視点では書きたくない……
おかしな点、読みにくい点、多々あると思いますが、ご了承ください。
あの日はとても天気がよかったんですの。
だから私は少し散歩でもしようかと思い、外へ繰り出しましたの。
いつもなら、付き人が居るのですが、私はどうもあれが苦手ですので、秘密でこっそり家を抜け出したんですの。
無難なことしか話さない話し相手なんてつまらないですわよね?
その点、カンナさんのようにずけずけと話してくれる方は、私にとっては嬉しい存在ですわね。
まぁ、それは置いておきまして。
私は一流のものばかり与えられて育ってきました。
ええ、自慢ではありませんわ。
ですから、庶民的なものに憧れがありますの。
その日もいろんな所を回ってみるつもりでしたのよ。
そうしたら、あるわあるわ庶民の嗜み! 私、思わずテンションが上がってしまって、普段なら……、いえ、普通なら行かないところにまで足を踏み入れてしまいましたの。
そこで見ましたわ。
庶民とはかけ離れた低俗なものを。
「おら! 出せよ!」
女性が数人の男に囲まれていましたの。所謂カツアゲというものですわ。
女性はとても怯えた様子でしたわ。
「やめなさい!」
私も魔法学校の生徒。
魔法にはそれなりの自信を持っていましたの。
「んだてめぇは? ん? なんだてめぇ、金持ちそうな面だな?」
「ひひひ、いい体してんじゃねぇか! こんな女より楽しめそうだぜ?」
相手は二人。
やってやれないことはありませんわ。
男二人は私に飛びかかってきましたわ。
いくら魔法が強力でも、捕まってしまえばそれまでですわ。
でも、私が得意なのは水の魔法。
指二本を揃えて立てて、水の初級魔法『アクアブレード』を発動させましたわ。
これは、発動さえさせてしまえばしばらく効果は持続しますから、捕まったとき、近接時にも有効ですわ。
「なんだ……。もしかしてお前、魔法学校の生徒か?」
「ひひひ、それならそれ相応の対応をしないとなぁ?」
一人の男が片手を上にかざしましたわ。
あの詠唱動作は『ファイアボール』。
私のアクアブレードならいとも簡単に消し去ることができます。
「食らえ!」
炎の玉が私めがけて飛んできました。
それをアクアブレードで払いのけた瞬間、もう一人が魔法を放つのが見えましたわ。
罠でしたの。
一人が囮になって、もう一人が隙をつく。
しかも放たれたのは土の中級魔法。
アクアブレードでは、できてせいぜい威力の軽減程度でしたわ。
「くふっ!」
私の体は飛ばされて、地面を少し転がりましたの。
まぁ、さっきの女性は逃げられたようですので、ここまでは良しとしますわ。
「威勢の割にようぇーなぁ?」
「俺らが強すぎんだよ。ひひひ」
ただ、私が逃げられるかどうかは、まだ分かりませんけど。
「さあて? 着てるもんも金になりそうだな。身ぐるみ剥いで、金目のもん取ったら、後はお前の好きにしろよ。俺はガキに興味はねぇからな」
「ひひひ」
体を起こそうとしましたが、思った以上に先ほどのダメージが効いていましたの。
体が思うように動きませんでしたわ。
「おい」
そんなときでしたわ。
彼が来たのは。
「なんだてめぇはよぉ?」
「この女を助け──」
一陣の風。
次の瞬間、男たち二人は吹っ飛んでいましたわ。
「状況はだいたい理解してる。話し合いをするつもりもないね」
私はポカンとれを眺めてるしかありませんでしたわ。
だって、あまりにも呆気なさすぎたんですもの。
「あんた、立てるか?」
「え、ええ……あ……、そうですわ! ありがとうございました」
「いや、気にしなくていいんだ」
見慣れない服装で、どこか知らない感じの雰囲気の男の子でしたわ。
「ランバート魔法学校というところを探してるんだが、知らないか?」
「そ、それなら私の通う学校ですわ」
「ほんとうか?! そりゃ助かった! 大きな町だからどこをどう行けばいいか分からなかったんだ!」
「案内しましょうか?」
「おう頼む! おっと、そうだ。俺はトーヤ。トーヤ・サザナギ。あんたは?」
「私はロザリンド・エルスマスト。ロザリーと呼んでください」
「そうかロザリー。よろしくな!」
「ええ、分かりましたわ」
そして二人で歩き始めたのですが。
「ロザリー、一つ聞きたいことが」
トーヤさんは不意に足を止めたんですの。
「なんですの?」
「その、魔法学校にユウトって奴はいるか?」
「少なくとも同学年には居ませんわね。ありふれた名前ですし、学校に一人は居ると思いますけど……。知り合いなんですの?」
「うーん、そんなところだな。訳あって一度会わなきゃいけないんだ」
「そうですの? それなら私も探してみますわ」
「いや、そこまではいいよ。急ぐ用事でもないし」
「そ、そうですの……」
「じゃあ学校まで頼むよ」
「ええ」
◇
「べたですねぇー」
カンナさんは相変わらずですわね。
「う、うるさいですわよカンナさん!」
「一目惚れってやつなんだね」
「そ、そうとも言いますわね」
ユトさんはああ言ってましたが、本当にそうなのでしょうか?
「……ロザリーさん」
ユトさんが私の顔を伺いながら言いました。
「ど、どうかされましたか?」
「……あ……、ごめんなさい。なんでもないよ」
そんな顔されると余計気になりますわ!
「ユトちゃん、やっぱり諦めきれないんですか?」
「ちがっ! 諦めるとかそれ以前の話だよ! 私にそんな感情はないよ!」
もう、カンナさんが煽るから話がややこしくなるんですわ!
「はいはい。それではこの話はお終いですわ! そろそろ寝る時間ですわ!」
「っと、ユトちゃん、しっかり睡眠をとるんですよ? 明日倒れても踏んでいきますから!」
「わ、わかった……」
これで修学旅行一日目が終わりましたの。