─15─
「滅んだ?」
「およそ1000年周期。ドラゴン達は群をなし、文明を破壊する。それを防ぐため、僕はこの世界に召還された。およそ200年前にね」
「え? 200年?」
「あー、正確には『この僕』じゃない。僕のオリジナルさ。僕の能力は創造。これは召還された際、神様からもらった力。かなりのポテンシャルがある。つまり、自分を作り出すことだって可能なんだ。……まぁ、諸事情含め、5回自分の死体を見る羽目にはなったけどね」
神様から与えられた使命。
グリフは『救世主』としてこの世界に呼ばれた。
でも僕は……、僕の使命は『彼らを滅ぼす』こと。
今ならできるんじゃないか?
この人を……。
「それで、どうかな?」
この世界を救おうとしてる人をなぜ?
「……」
いや……。
アルカ・ラカルトのこともある。
簡単に信用しちゃダメだ。
「なんで私にそんな事頼むんですか?」
「竜の神子を探すにあたって、ドラゴンと遭遇しないとは言い切れない。余計な被害は出したくないんだ」
「私ならどうなってもいいと?」
「君も神様から何らかの能力を授かっているんだろ? よっぽどのことがない限り、ドラゴンにやられる訳がない。転移者……、ああ、君は転生者か。まぁともかく僕らのような人間は簡単には死なない、と、思うんだけど」
いや、僕死ぬし。
10分しか強くなれないし。
普段能力低めの一般人だし。
「頼むよ!」
グリフはパンパンと手を合わせて頭を下げる。
「お、拝まないでください!」
手伝う義理はまったくない。
……でも、万が一彼の話が本当だとしたら。
フリアや皆が危険にさらされるかもしれない。
それは、嫌だ。
「分かりました」
「え?」
「でも、積極的には探しません。これはグリフさんの使命ですから」
「いや! 助かるよ! ありがとう!」
「それで、その竜の神子ってどんな特徴があるんですか?」
「……」
グリフの目が泳ぐ。
「……え? まさか……」
「はは、いやぁ、実はなにも分かってないんだ」
「あなたは200年も何をしていたんですかっ!?」
「こっちでの生活が楽しくていろいろ……」
呆れた……。
「そ、そうだこれを渡さないと!」
グリフが手を握る。
そしてまた開くと携帯電話が現れた。
……とはいっても、折り畳み式ですらない旧式のものだけど。
「携帯電話。どこでも電話できるし、ほら、流行の○モードとかでゲームもできるし」
「グリフさん、タブレットってご存知ですか?」
「ん? 錠剤? 何かの薬かい?」
「いえ、なんでもないです」
90年代を最後にした人に話しても伝わらないか……。
ここ10年で、携帯電話も相当変わっていったしね……。
「ま、余計な機能は省くよ。いつでもどこでもかけ放題。電波だって、電池だって気にする必要はない。連絡先は僕だけだけど……。何かあったらそれで教えてほしい。使い方は……」
「だいたいわかります」
「そうか。それならいいけど。質問とかある?」
「いえ、特……」
言い掛けて僕は考える。
一つ、やっておかなければならないことがあった。
「グリフさん、一つお願いが」
ちょいちょいと手招きをすると、グリフは僕の方に寄ってきた。
「なんだい?」
「とりあえず一発殴らせてください」
満面の笑みをグリフに向けた。
「え、ちょ、なにゅべしっ!?」
グリフの頬を抉り込むようにして殴り飛ばした。
やっぱり身体強化してないとあんまり吹っ飛ばない。
眼鏡が吹っ飛んだくらいだ。
「ど、どぼじで……?」
「自白剤なんか飲ませた罪の精算です」
まぁ、僕の心は晴れたのでいいとしよう。
ーードタドタドタドタ!
部屋の前で何人かの足音がした。
ーーピシャッ!
ふすまが勢いよく開き、班の皆が顔をのぞかせる。
「ユトちゃん! 目が覚めたって聞いたぜ!」
「はぁ、心配をかける……」
「顔色はいいみたいですね」
「連れて帰るの大変だったんですわよ!」
皆が各々口々に喋るものだからほとんど聞き取れなかった。
「みんな」
「なら僕はこれで」
グリフは眼鏡を拾い上げるとケースにしまった。
「ありがとうございました」
僕は一応、グリフに頭を下げる
「睡眠はしっかりとること! いいね?」
「はい」
「うん。さて、僕はレニー先生に一言声をかけてから戻るとしましょうか。君たち、レニー先生はどこかな?」
グリフの問いかけにロザリーさんが「あっちですわ」と指さす。
アバウトな返答にグリフは苦笑いしながらもそちらへ向かって歩いていった。
「さあ! ユトさん! 目が覚めたのなら温泉! 温泉ですわっ!」
「え……、まだ入ってなかったの?」
「班員が倒れたのにのんびり温泉になんて入ってられないですよ」
そう言われるとなんだか責任を感じてしまう。
「おん……せん……ぉうふっ!」
トーヤ君がクロードの横腹をどつく。
「クロード、バカな真似は止せよ? な?」
「いや……、なんも言ってねぇだろ? 俺たちも入ってなかったなと思っただけじゃねぇかよ」
「そう言われたらそうだったな。よし、クロード行くぞ。さっと入ってさっと上がろう」
「ちょ俺はゆっくり……」
クロードがトーヤ君に引きずられていく。
「私たちも行きますわよ!」
「そうですね」
「わ、私は……遠慮して……」
が。
「行きますわ、よっ!」
「です、ねっ!」
二人の言葉の語尾にかなり力が入っており、妙なプレッシャーが僕に降りかかる。
「わ、わかりました……」
「それでいいのですわ!」
「それでいいんです」
るるると涙を流しながら僕は従うしかなかった。




