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僕と彼らの異世界譚  作者: 浮魚塩
激動!?修学旅行・竜の巫女
15/55

─14─

「寝不足から来る一時的なものでしょう。一応栄養剤を打っておきました。これで大丈夫でしょう」

「そうですか……。助かりました」


 誰かが話している。

 ぼんやりとした頭で僕は体を起こした。

 どうやらここは旅館の一室のようだ。


「気が付いたか、アルシャマ」

「先生……」

「まったく、心配をかける……」

「すみません……」

「エルスマストとヒノモトがお前を旅館まで運んできてくれたんだ。感謝するんだな」

「……」

「……しかしまぁ、気が付いたなら幸いだ」

「先生、そちらの方は?」


 先生の他にもう一人、白衣を着た男性が座っていた。

 ボサボサの茶髪に眼鏡、そして無精髭。その男性は少し不健康そうな顔をしていた。


「ああ、こちらはグリフさんだ。お前の手当をしてくれた。お医者様だよ」

「ありがとうございました」


 僕は頭を下げる。


「いえ、医師として当然のことをしたまでです」

「さて、アルシャマも気が付いたことだし、生徒達の様子を見てこようか。放っておくと何をしでかすか分からん……」


 本当、先生は苦労が耐えないと思う。


「レニー先生。僕はもう少し彼女の経過を見てからにしようと思いますが、構いませんか?」

「ふむ、グリフ先生も男性ですからね。疑うわけではありませんが、うちの生徒に手を出したりしませんようお願いしますよ」

「当然です。信頼してください。あ、因みにですが、僕はレニー先生のような女性が好みでして」

「やはり……、私も残るとしようか」

「冗談ですよ」

「本当に頼みますよ」


 先生が部屋を出た。

 とっとっと、と、先生の足音が聞こえなくなると、グリフ先生は口を開いた。


「ユトちゃん……、でよかったよね?」

「は、はい」

「緊張しなくていいよ。本当に手を出したりしないから」


 とは言っても、グリフ先生の容姿は、先生の紹介がなければ絶対近付いてはいけない人のように見える。


「昨日は眠れなかったのかな?」

「はい……」

「そうか。なんであれ睡眠はとらなきゃいけないよ」

「すみません……」


 カンナちゃんにも注意されたのに、情けない。


「修学旅行は楽しい?」

「はい」

「そうだね。体調管理には気を付けてね」

「分かりました」


 そうだ。

 折角の修学旅行なんだから楽しまないと。


「ここには、慣れたかな?」

「はい。なんだかここは懐かしい感じがして好きです」

「そうか」


 グリフ先生は少しうつむいた。


「一つ、聞いてもいいかな」

「なんですか?」


 グリフ先生は何かを言い掛け、しかし一瞬躊躇い、言葉を飲み込んだが、一間おいて、意を決したかのような表情で口を開いた。


「この世界には慣れたかな?」


 一瞬思考が止まる。

 グリフ先生の言葉はどういうニュアンスで尋ねてきているんだろう。


「はい」


 え……?

 僕は今……。


「そうか……。やはり君は……」


 待って!

 今、何で僕は返事を?!


「悪いね。君に打ったのは栄養剤じゃなくて、自白剤なんだ」


 僕はグリフから離れる。


「待ってくれ! こちらに敵意はない!」

「叫んで人を呼びますよ」

「信じてくれ!」

「自白剤なんか使う人信じられません!」


 僕は大きく息を吸い込む。


「わかった! 謝る! だが聞いてくれ! こちらもそうせざるを得なかったんだ!」

「理由を教えてください」

「まず言おう。僕は転移者だ。1999年の日本からこの世界に飛ばされた!」


 日本……。

 この世界で他人の口からその単語を聞くことになるとは思わなかった。


「神様から授かった力は『創造』。無から有を作り出すことのできる能力だ。そして作り出した物の使い方も理解できる」


 グリフが手を握る。


「余計なことは!」


 そして手を開くと猫のストラップが現れた。


「マジックなんかじゃない。他に何でも君の望む物を出そう」

「……いえ、わかりました。で? それだから何だって言うんですか?」

「僕は『救世主』としてこの世界に呼ばれた」

「はいそうですか。どうぞ世界を救ってください」

「あー! 違うんだ! 僕は……。いや、その前に君は本当に異世界の人間だよな? もしそうじゃなかったら僕はただの頭のおかしい奴に……」

「はい」


 まだ自白剤が効いてるのか……。

 僕はグリフを睨みつける。


「わかった。分かったからその殺気を収めてくれ!」

「ヤです」


 いつでも力を使えるよう心がけておく。


「とにかく話を聞いてくれ!」

「聞かないつもりはないです。でもその前に、こちらの質問に答えてください」

「な、なんだい?」

「どうやって私に目星をつけたんですか?」

「ああ、そのことか。言ったろ? 僕の能力は創造だ。この眼鏡は異世界の物を感知できる。君の場合、そうだな。魂とでも言うのかな。ユトちゃんは転生者……だよな?」


 うわ、なにそのズルいアイテム……。

 なんとか探りを入れようとしていた自分がバカみたいだ。

 ……ん?

 待てよ。

 僕の能力ならそれを真似ることもできるんじゃないかな。

 でもそうやって作った物は時間切れになるとどうなるんだろう?


「それじゃあ本題に入っていいかな?」


 グリフはおずおずと切り出した。


「どうぞ」

「よし。それじゃあ単刀直入に。実は君に人探しを手伝ってもらいたいんだ」

「人探し?」

「ああ。僕は『竜の神子』と呼ばれる人物を探している。それは僕の救世主としての役割の一つなんだ」

「救世主としての役割……」

「そう。知ってるかい? 今から1000年前、ドラゴンの大群が押し寄せ、この世界は一度滅んでいるんだ」










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