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僕と彼らの異世界譚  作者: 浮魚塩
激動!?修学旅行・竜の巫女
14/55

─13─

今後の更新はこんなペースかと

「ふむ……。聞いてない奴ばかりか……。歴史がつまらないのか、はたまた私の授業がつまらないのか……」


 先生は肩を落とす。


「先生」

「お? アルシャマ、どうした?」

「二人三ヶ月戦争を起こしたのは誰なんですか?」

「アルシャマ……、普段はぼーっとしているお前が質問するとは珍しいこともあるものだな。ふむ、誰? か……」


 先生は腕を組む。


「実はな、分からないのだよ」

「なぜですか? 歴史に残るような事件なのに……」

「外を見ろ」


 先生が再び外を見るように促す。


「これほどの土地を荒野にしてしまうほど大きな戦いだったのだよ。果たして誰がそれに近づけようか……」


 その通りだ。

 そんな戦いに誰も巻き込まれたくはないだろうし、僕なら近付かない。


「それに、その二人が争いを始めた理由もなにも分かっていない。ただ二人の争いがあり、草原が荒野になったという事実だけが残っているだけなのだよ」

「いったいどんな戦いをしたらこんな事に……」

「それについては説がある」

「説ですか?」

「魔法とは似ても似つかぬ不思議な力を使った争いだったと、な。事実かどうかは分からないが」


 もしその説が本当なら、やっぱりその二人は異世界の人間の可能性が高い。


「まぁ、そもそも今から200年ほど前の出来事だからな。事実など今更確かめる術は限られている」


 200年……。

 だとしたら彼らは既にこの世には居ないのだろうか。

 いくら神様から能力を授かったと言っても、寿命はあるはず。

 うん……、やっぱりこの二人は除外すべきだろうな。


「ユトさん、ありがとうございましたわ。勉強になりましたの」

「ロザリーさんは勉強熱心だね」

「ええ、エルスマストの名を継ぐものとしては当然ですわ」

「そうなんだ。私は家とかないからあんまりわかんないけど」

「あ……」


 ロザリーが「しまった」といった表情で口に手を当てる。


「あ、そういうのはナシだよ。こっちも変なこと言っちゃった。ごめんなさい」

「い、いえ、ユトさんが気にしていないのでしたら……」

「よし! 私もババ抜きやるよ! 言っとくけど強いから!」

「へぇ、すごい自信だな」

「お手並み拝見だぜ!」

「これで負けでもしたら大変なことになりますね!」

「受けて立ちますわっ!」




ーー3分後……




「あがりっ!」

「マジかっ!?」

「ストレートで……」

「的確にカードを引いていきましたの……」

「有言実行。やりますね、ユトちゃん」




ーー二回戦目




「クロード君、分かりやすすぎだよ。こっちでしょ?」

「ぬわぁぁぁぁ! なんでだ! 俺のポーカーフェイスは完璧だったはず!」

「どこがだよ……」

「目が泳いでましたし、冷や汗かきすぎですし。当然の結果ですね」

「クロードさんは表情豊かなのですわね」

「っく!」




ーー三回戦目




「ユトちゃん、本当にババ引かないな」

「ユトちゃんに引かれる俺は、ババ引いた時点で負けが濃厚に……」

「さすが雑用ですわ」

「さすが雑用です」

「さすが雑用」

「トーヤーみんながいぢめるよー」

「擦り寄るな」











「中央都市までって距離があるんだな」


 トランプにも飽き、ぼんやりと外を見ていたトーヤ君が呟いた。


「列車でも丸一日かかりますわ」

「列車は夜間は走らないから、途中の駅で降りて駅前の旅館で夕食と一泊です」

「お前ら、降りる準備をしろ。今日はここまでだ」


 列車がブレーキをかけ止まる。

 ここは山間にある小さな町、ロッズ。

 元々は長距離を走る列車を、夜の間休ませたり、補給をしたりするための場所だったが、乗客のための施設を作るうちに、人が集まり、町となった。


「思ったより綺麗ですわね。庶民のための施設と聞いたいたので少々不安でしたが」

「ロザリーちゃんはいつも奥の高級ホテルだもんね」

「いいなぁ」


 旅館の部屋は畳の八畳間。

 この世界にも和室があることに驚いた。

 まぁ、日本人みたいな名前の人もいるし、どこか地方の文化なんだろうと思う。











「食べすぎた……」


 旅館の料理はとてもおいしくてつい食べ過ぎてしまった。


「食べたら温泉行きませんか?」

「いいですわね!」

「う……」


 温泉か……。

 確かに入りたいけど……。


「私はやめておくよ」

「なぜですの? 旅館と言えば温泉ですわよね?」

「ロザリーちゃんの理屈は分からないですが、折角の温泉ですよ? 入らないのは勿体ないです」

「そ、そうなんだけどね……」


 一応、僕中身が健全な男の子な訳でして。

 そりゃもう自分の体は仕方ないと諦めちゃいましたが、いくら何でも流石に他の女の子の体をじろじろ見るわけにはいかないよ。

 断る理由を何か考えないと……。


「ほ、ほら、今行くとたぶんいっぱいだし、後の方がゆっくり入れるかなって……」

「それは一理ありますわね……」

「ユトちゃんナイスアイデアです!」

「だから先にちょっと町中のお土産屋さんでも見てこようと思うんだ」

「行きましょう! 早く行きましょう!」


 なんか急にロザリーさんのテンションが上がった。


「お土産、イコール、庶民の嗜み! ですわっ!」

「ますます意味不明な理屈ですね」

「はは……」


 僕たちは旅館を出た。

 夜の町に出てみて思う。

 やっぱりこの町はなんだか日本みたいだ。

 昔ながらの和風な建物があるわけじゃないけど、うーん、言うなれば地方都市のような感じだ。

 この中途半端な発展の仕方なんか特に。


「まあ、ご当地QVとはなんですの? キューヴィットが列車を跨いでいたり、温泉につかっていたり、なんの意味がありますの?」

「その地域の名産品をアピールしたりするのが大きな役割かな。リーンスタリアだったらチョウチョのQVがあるよ? その地方にしかないものだから、収集品としても有名だね」

「へぇ、庶民はこんなものにお金をかけるのね」

「一部の人間だけですよ」

「おばさま! このQVくださいな!」

「お金持ちがこんなもの集め始めたらコンプするんでしょうか。ロザリーちゃんならやりかねないですね」

「あちこち行かないとダメだし、大変なんじゃないかな……」


 ロザリーさんは嬉しそうに二つのQVを眺めていた。


「まぁ! あれは!?」

「しばらくロザリーちゃんの買い物に付き合わないといけなさそうですね。買いすぎて荷物が大変なことになりそう」

「はは……、いくらなんでも……」




ーー30分後……




「ロ、ロザリーちゃん……。そろそろ……」

「何か仰いましたか、カンナさん? まぁまぁ! あちらにも!」

「ロザリーさんて後先考えない人じゃないと思ったけど……」

「あれは単に目が眩んでるだけですよ。ロザリーちゃんの家は厳しいんです。こんな時でもなければゆっくり買い物もできないんですよ。……それは分かってますが、いい加減にしないと……」


 カンナちゃんが腕捲りをする。

 ぐんぐんと腕を動かして、準備体操らしき動作。

 そしておもむろにロザリーさんに近づき、むんずと首根っこを掴む。


「カンーー」

「ロザリーちゃん、いい加減にしなさい」

「で、ですがーー」

「ですがもなにもありません! 買い物の時間はあとでいくらでもありますからここまでにしてください」

「いたた! ひ、引きずらないでほしいですわ! 自分で歩けますわよ!」


 カンナちゃんはロザリーさんを離した。


「ロザリーちゃん、ユトちゃん、帰りましょう」


 ロザリーさんはものすごく不満そうだったが、これも彼女のためだ。


「帰ったら温泉です!」


 う……、忘れてた……。

 一緒に入る流れだよなぁ……。

 なんとか理由付けて逃げるしか……。


「あれ……?」


 急に視界が揺らぐ。


「ユトちゃん?」


 町の光がチカチカして……。


「ユトさん!」


 視界が暗くなる瞬間、地面が近くにあるのが分かった。








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