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僕と彼らの異世界譚  作者: 浮魚塩
激動!?修学旅行・竜の巫女
12/55

─11─

「今配った用紙に各班のメンバーの振り分けが書いてある。以前引いてもらったくじ引きで決めた公正なものだ。異議は受け付けない。分かったな? 分かったらそれぞれの班に分かれろ。決めてもらうことがいくつかある」


 先生が言っているのは修学旅行の班のことだ。

 普通修学旅行は三年の行事なのだが、親睦を深めるという名目で、この学校では全学年で行われている。

 各学年で目的地は違うが、日程は同じである。

 つまり修学旅行の間、学校に生徒は居なくなることになる。


「えっと……。うーん……」


 僕は配られた用紙に書かれた班分けを見て唸る。

 いや、別にこのことに文句はない。

 でもあまりに都合が良すぎないだろうか?

 まぁ、それなりに親交のあるメンバーが居た方がやりやすいのは確かなのだけど……。


「ユトちゃん! 同じ班だぜ!」

「なんというか、謀ったような組み合わせだな……」

「あー、はは……」


 班は五人一組で分けられている。

 そのうちの三人がトーヤ君とクロードそして僕。

 トーヤ君がああ言いたくなるのもよく分かる。

 先生は公正な結果だと言っていたが、それすら疑いたくなる結果だ。


「ふーん、ま、こんなものじゃないかしらね」

「もう、ロザリーちゃんたら……。そんな刺々しくしてたらお友達増えませんよ?」

「はぁ?! まるでわたくしは友達が少ないみたいな物言いですわねカンナさん?」

「実際ロザリーちゃんが私以外の人とまともに話してるの見たことないですよ? ほら、ちゃんと挨拶しようよ」


 残り二人が彼女たち。

 典型的お嬢様口調なのが、ロザリンド・エルスマスト。愛称はロザリー。

 銀髪のスタイル抜群の女の子で、正直、彼女に学校の制服は酷く不釣り合いに思える。

 エルスマスト家はこの辺りでは言わずと知れたお金持ち。

 リーンスタリアで売られている服のデザインはほとんどエルスマストの経営する会社がやっているらしい。


「クロードさん、トーヤさん、そしてユトさん、よろしくお願いしますわ」

「ロザリーちゃん、笑顔がひきつってますよ。いつもツンツンしてるから顔の筋肉が固まってるんです」

「う、うるさいですわね!」


 そしてもう一人。

 カンナ・ヒノモト。

 黒髪を後ろで纏めてポニーテールにしている。

 体格は僕と同じくらい。

 見た目は僕の知っている日本人に近い。

 常に丁寧語で喋っているが、その言葉にはどこか毒がある。

 思ったことを正直に口にしてしまうのがその原因だと思われる。

 良く言えば正直者、悪く言えば遠慮がない。


「よろしくお願いします。イロモノ揃いの班ですけど私、精一杯頑張ります!」


 う、うーん、悪気はないんだよねぇ……。

 むしろそれは僕が言いたいセリフだよ。


「集まったな? それじゃあ班長を決めろ」


 と、先生。


「班長か……」

「とりあえず聞いてみるが、やりたい奴はいるか?」


 しーん……。


「だろうな……」


 そんなに重大なことは無いけど、多少なり責任がついてくる役職は、みんなやりたくないものだ。

 もちろんそれは、こうやって話を進めてくれているトーヤ君も同じだろう。


「だとしたらあみだくじでもやるか」


 しかしそうはいかない。


「俺はトーヤがいいと思うぜ?」


 決め事の場で仕切ってしまうことは自殺行為だ。


「こうして皆をまとめていますもの。私は賛成ですわ」

「そうですね。まとめ役という損な役柄が体に染み着いてますね」

「わ、私もトーヤ君ならいいよ」


 僕もしっかり便乗する。

 悪いとは思うけどね。


「お前ら……」

「よし決まったな? それならば班長。残り保健係、貴重品係、掃除係、雑用。それぞれお前達の裁量で決めろ」

「なるほど。班長も悪くないな、くっくっく……」


 ああ、トーヤ君が悪人の顔になってる。


「ならば、このトーヤ・サザナギが班長として命ずる!」


 班長の選任により。

 貴重品係、ロザリンド・エルスマスト。

 保健係、カンナ・ヒノモト。

 掃除係、ユト・アルシャマ。

 雑用、クロード・ラインハート。

 と、決まった。


「くそう! 不公平だ! 職権乱用だ!」


 クロードが喚く。


「ふむ、一部から不満の声が挙がっているようだが。お前達が信頼して選んだ班長の選択だ。どうして不満の声が出るのか、私には分かりかねるが? クロード・ラインハート?」


 先生の言葉でクロードは押し黙る。

 確かに、自分たちが選んだ班長だ。

 その班長になら従ってもいいという理屈で選んだことになる。

 選挙のようなものだ。

 その相手を支持したから投票する。

 責任の押しつけとは違う。


「クロード。これにはそれなりの理由がある。まずは貴重品係。ロザリーに任せたのは彼女が一番金品の扱いは慣れているだろうと思ったからだ。次に保健係。カンナは治癒の魔法が得意な上、実家は個人医院を経営していると聞く。これ以上の理由はないだろう? そして掃除係のユトちゃん。ユトちゃんの机はいつも綺麗に片付いている。頑張り屋だし、適任だと思う。最後に雑用。クロード、雑用ができるのは、何でもできる人間なんだ。オールマイティー、常に、どこでも、何にでも対応できる。お前以上の適役は居ないと思うぞ?」

「な、なるほどな。確かに俺以外には考えられないな!」


 チョロいな。

 トーヤ君はそんな顔をしていた。

 けれど実際そうだと思う。

 ……クロードがチョロいという意味でなくて、雑用に関してだ。

 雑用は様々なことを頼まれる。

 オールマイティーでないとできない仕事だ。もしかしたら、下っ端や尖った才能がない奴がやる物だと思われるかもしれないが、逆に言えば何でもそつなくこなせる人間にしかできない仕事でもある。

 これは誇れる事なんじゃないかな?


「そうだね」


 チョロいということと同時に、雑用の価値についても僕は納得していた。


「さて、それぞれの役柄も決まったところで、次は修学旅行のしおりの作成だ。各自席に着け」


 修学旅行。

 それは、僕にとって特別な物になる。

 この時は考えもしなかった。

 転生者と転移者。

 それら、異世界から来たものがこの世界に与えた影響を……。










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