little sister 虹の向こうへ
『ねぇ、お兄さま。あの向こうにはだれがいるの?』
幼い少女は、髪を柔らかな風に弛たわせながら空を指差す。
「人なんかいない…いたら、今頃天上と地上で全面戦争さ」
露に濡れる草が茂る地面。横たわって見つめる先は、太陽
つまらない光景にしか思えなかった。
『じゃあ、お空のいろはどうやってかえてるの?』
つれない兄にめげる事なく、地面に膝をつき彼の服を引っ張る。
「…雲の中に小人がいる。青い服を着た奴、オレンジ色の服を着た奴。他にもいるかな」
戯言に少し付き合ってやるだけのつもりで、同じ赤の瞳を彼女に向けた。しかし、その無垢な問いに口元を綻ばせ空に思いをはせる。
『クレアはね…ぎんいろがいい。きっとそらからきれいな光がふってくるの』
自分達の髪の色、そしてスープをすくう滑らかなスプーンを思い浮かべ、クスクスと屈託なく笑う。
「空が大きなスプーンなら、雨が降ればそこからスープが降ってくるな」
昼下がりの他愛ない会話。彼女を手招き、隣に寝そべらせて声音を静める。
『やくそく、ね。スープがふってきたら兄さまとクレアと母さまと父さま。みんなでたべましょ』
朗らかな声が耳に響き、優しい時間は続いていく。
緩やかに流れる雲のように