土曜日
A-6 慣れてしまえば
へその緒がついた赤ん坊をあの場所で見ても、もうおぞましいとか、理由があるとは考えなかった。これが、今の日常で、地鎮祭の結界に死体は日々増える。住めば都、とはよく言ったもので、慣れてしまえばいつもの日常があるだけなのだ。バスは定時に必ず来るし、スーパーは近くて特売も多い。
それでいい。
だってこれからも、何があっても慣れればいいもの。
B-6 そっか、慣れたのか「そっか、君、この状況に慣れたんだね。死という日常をなんとも感じなくなってしまったんだね。そっかぁ、もう君も手遅れか。死をおぞましいとも、悲しいとも、怖いとも思えなくなったんだね。人の心を失ったんだね。
…………ああ、そうか、そうしよう。
次は、君の番だよ。
…………やっぱり、血って温かいや。さよなら。」
C-6 着工の日
久々の朝練に行こうとしたら、地鎮祭をしていた空き地にフェンスができていた。最後の犠牲はこの辺りに近頃引っ越して来た二十歳そこそこのOL。今回もまた、「贄柱」にならなくて済んだことを天に感謝する。「贄柱」のおかげで、この町の人々は安心して家に住めるのだから。
「あっ、バス、待って!!」まだ朝日が朱色の光を放つなか、少女は走り去り、神に捧げられた供物だけが眩しく照らされ、そこにあった。
初ホラー、完結です。感想をいただけると嬉しいです。